2015年07月08日

ロンドンでレコーディング、現地でレコード発売した日本人アーティスト達

執筆者:中村俊夫

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今からちょうど40年前(1975年)の今日7月8日、フジテレビの人気音楽番組『ミュージックフェア』(現MUSIC FAIR)に、沢田研二(+井上堯之バンド)、サディスティック・ミカ・バンド、成毛滋の3組が出演。何の脈絡も無さそうな組み合わせに見えるが、この3組の共通項は「ロンドンでレコーディング、もしくは現地でレコード発売した日本人アーティスト」ということで、まだ海外レコーディング自体が話題となる時代ならではの特集である。Youtubeにその一部をアーカイヴしたものがアップされているので、まずは下記URLにリンクして御覧いただきたい。残念ながらジュリーの歌唱シーンは欠けているが、当時この放送を観た筆者の記憶では、前年ロンドンで制作したアルバム『THE FUGITIVE 愛の逃亡者』からタイトル曲と「Go Suzy Go」を歌っているはずである。

●オープニング
https://www.youtube.com/watch?v=17oRlUiVz9I

●サディスティック・ミカ・バンド「塀までひとっとび」
https://www.youtube.com/watch?v=CK0MzYAPicg

●成毛滋「Alone In My Room PartⅢ」
https://www.youtube.com/watch?v=ci0SZkSaZ5k

3組の中で最も早くロンドン・レコーディングを体験しているのはジュリーで、タイガース時代の1969年にロンドンのポリドール・スタジオに於いて、ビー・ジーズからプレゼントされた「スマイル・フォー・ミー」を録音したのが最初。その後も、『JULIE Ⅱ』(71年)、『ある青春』(73年)、『THE FUGITIVE 愛の逃亡者』(74年)の3枚のアルバムをロンドンでレコーディングしている。ただ彼の場合、海外録音はあくまでも日本国内マーケットへのプロモーション的意味合い(話題性と箔付け)が強かったこともあり、フランス録音の「Mon Amour, Je Viens Du Bout Du Monde(巴里にひとり)」が現地でヒットしたぐらいで、英国やオーストラりアで発売された『THE FUGITIVE』は惨敗に終わっている。


成毛滋も71年に渡英し3週間ロンドンに滞在。ヴォーカリストのブライアン・キースをはじめ現地のミュージシャンたちとレコーディング・セッションを行なっており、その模様は同年11月にリリースされた彼のアルバム『ロンドン・ノーツ』で聴くことができる。73年初頭に再度渡英した成毛は2年半に亘る滞在期間中にいくつかの現地のバンドで活動していたが、やがてリック・ウェイクマンの影響を受けマルチ・キーボードの魅力に開眼。本格的なソロ・アルバム制作中に旅券法違反で強制送還となってしまった。彼の場合、芸能事務所やレコード会社等に一切頼らない、まさに徒手空拳の海外チャレンジだったと言えるだろう。

前2者に比べると、サディスティック・ミカ・バンドは海外進出の数少ない「成功組」と言って良いかもしれない。73年に英国の音楽新聞『ニュー・ミュージカル・エキスプレス』でデビュー・アルバムが紹介されたことがきっかけとなり、プロコル・ハルムやピンク・フロイドのプロデューサーとしても知られるクリス・トーマスがプロデュースを手がけたアルバム『黒船』(74年)は英米で発売。『ミュージックフェア』出演時はちょうどクリスのプロデュース第二弾となるアルバム『ホット・メニュー』の制作中だった。この後9月からミカ・バンドはロキシー・ミュージックの全英ツアーにサポーティング・アクトとして同行。各地で注目を浴び、メディアにも大量露出された。しかし、ツアー終了後に加藤和彦・ミカ夫妻は離婚。英国の関係者たちにも惜しまれながらバンドは解散となってしまった。


なお、当時ミカ・バンドは『ミュージックフェア』出演のひと月前にベースの小原礼が脱退。後任として加入したのがジャック松村で、この番組が新生ミカ・バンドの初お披露目となった。ジャックは7月いっぱいで脱退してしまう (後任は後藤次利) ので、この『ミュージックフェア』での演奏シーンこそが、あまりにも短期間だったジャック在籍時のミカ・バンドを捉えた唯一の貴重な映像なのである。ジャック松村こと松村克己はその後ミュージシャン生活から足を洗いCBSソニー~BMGジャパンに勤務。2001年、日本コロムビアの社長兼CEOに就任したが翌2002年8月20日に心不全のため亡くなった。享年49歳。
沢田研二

サディスティック・ミカ・バンド

成毛滋

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