2015年09月04日

9月4日はクラシックの日・・・ということで、殿さまキングスが1983年に発表した名盤『パロッタ・クラシック』を聴いてみよう。

執筆者:小貫信昭

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今日、9月4日はクラシックの日。クラシック音楽を、より多くの人に親しんで貰おうと、「日本音楽マネージャー協会」が1990年に制定した。なぜこの日かというと、ク(=9)ラシ(=4)ックという(やや苦しげな)語呂合せである。そしてこの日に引っ掛けて、何かないかと探したところ、まっさきに想い出したのがこの名盤だ。殿さまキングスの『パロッタ・クラシック』である(リリ-スは1983年なので、まだ日本に“クラシックの日”は存在していなかったけど…)。


[モ-ツァルトは怒り、ブラ-ムスは悲しんだ。しかしベ-ト-ベンは微笑んだ] 。LPレコ-ドの帯には、こんなキャッチ・コピ-がある(ただし最後の“微笑んだ”のところは、実際にはモナリザの顔が切り貼りされている。便宜上、ここではそう読ませて頂いた)。さらに「ロ-ルオ-バ-・モ-ツァルト!」というロック・ポップ・ファンを意識したコピ-も横に添えられ、さらにさらに「クラシックと演歌の和合」なる文字も…。ここからも、当時の制作陣による力の入れようが伺える。  簡単にアルバムの内容を紹介しよう。いや…、いま、あなたが想像した通りである。「白鳥の湖」や「トルコ行進曲」といったお馴染みの作品に、演歌調の歌詞をつけ、宮路オサムがリ-ド・ボ-カルを務める殿さまキングスの面々が歌う、というもの。


ただ、こういう風にあっさり書くと、うすっぺらい企画モノ、という印象を与えるかもしれないが、それは違う。例えば一曲目の「白鳥の湖」は「たそがれ海峡」と模様替えされ、“♪こ~なゆき風ぇ~に舞う”と、そんな出だしだが、“もしかして最初から「たそがれ海峡」としてこの世に生まれたメロディなのでは…”と思うくらいのハマり具合なのだ。肝心の作詞は多田宗之介ほか、なかなか大変な作業だったのか複数名がクレジットされている。その多田が作詞した「起きてよあなた」は「モ-ツァルトの子守唄」が原曲なのだが、カミさんに浮気がバレたため、子守唄なのに一向に“寝かせてもらえない”(=二つの意味で)状況が綴られていて、実に完成度が高い。編曲は前田俊明、伊戸のりおという、歌謡界で確かな仕事をされている方々が関わっている。


 個人的に想い出すのは、このアルバムのリリ-ス・タイミングで殿さまキングスの取材が実現したことである。場所は新宿。ホテルの1階の喫茶コ-ナ-。宮路さんのみ、という条件で、「クラシックの名曲を、宮路さんらしく歌いこなすコツをひとつ…」、などを訊いていたのだが、話が一段落すると、ひとつとなりのテ-ブルで背中を向けて新聞を読んでいた人が、くるりとこらを向いて、話に加わった。誰あろう、リ-ダ-の長田あつしさんだった。長田さんは、このアルバムを制作するにあたり、みんなが注いだ情熱について、熱く語ってくれたのだった。昨年、亡くなられたが、殿キン以降もガラリと様子が違うオヨネ-ズで「麦畑」のヒットを飛ばすなど、稀代のコンセプト・メ-カ-であった。


さて最後に殿さまキングスのこと。「なみだの操」のヒット以前の、コミック・バンドの頃のこともうっすら覚えている。そんなわけない楽曲なのに、“コブシ、ころっころ回っちゃう”というカリカチュアライズの爽快感を覚えてる。ニュ-ミュ-ジックなどとの交配で演歌がマイルドになってた時、“コブシ、ころっころ回っちゃう”というパロディのようなことが反転し、本陣に届いたのが「なみだの操」だった、なんこてこともいえるかも。


なおこの『パロッタ・クラシック』を含む内容のものが、2007年、『殿キン・カンタービレ~パロッタ・クラシック』のタイトルでCD化されているようであるが、わたしの手元には最初のLPレコ-ドしかない。

殿さまキングス

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