2018年02月12日

2月12日はドアーズのキーボード奏者レイ・マンザレクの誕生日

執筆者:行川和彦

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ドアーズのキーボード奏者として知られるレイ・マンザレクは1939年の2月12日に米国のシカゴで生まれる。地元の大学で経済学を学んだ後に映画を専攻したLAの大学UCLAでジム・モリスン(vo)と出会い、1965年にドアーズを結成する。ロビー・クリーガー(g)とジョン・デンズモア(ds)が加わり、1966年に入ると精力的にライヴ活動を展開してエレクトラ・レコードと契約。1967年の1月にリリースしたファーストアルバム『ハートに火をつけて』は全米チャートの2位にランクインし、以降のアルバムも全米トップ10入りが続く。


圧倒的な存在感やスピリチュアルな歌唱、スキャンダラスな行動でモリスンがクローズアップされるバンドだが、サイケデリックな味わいを増幅させたマンザレクのキーボードはドアーズの音のイメージを決定づけた。ベースレス・バンドだったからスタジオ・レコーディングではゲストがベースを演奏することも多かったとはいえ、ライヴではベースの音域をマンザレクが左手でミニマルに弾いていた。


子どもの頃にピアノのレッスンを受けて十代の前半にラジオでブルースに馴染み、ビル・エヴァンスなどのモード・ジャズに入れ込んでからはジャズ・バンドをやっていた人である。大ヒット・シングル「ハートに火をつけて」でジョン・コルトレーンとバッハとファッツ・ドミノの要素をブレンドするなど、マンザレクの懐の深いミュージシャンシップがドアーズのサウンドをふくらませていた。


他の3人のメンバーより5才前後年上で色々と経験を積んでいたがゆえにマンザレクはバンドをリードし、ワイルドすぎるフロントマンの良き理解者になっていい感じでコントロールもしていたが、そのモリスンが6作目の『L.A.ウーマン』を残して1971年に急逝。ドラッグのオーヴァードーズが死因とされるモリソンの他界以降もドアーズは、以前からバッキング・ヴォーカルを担当していたマンザレクが歌うアルバムも2作出している。


バンドの解散後にリラックスしたソロ作も発表していったが、マンザレクはドアーズが影響を与えたパンクに元メンバーの中で最もリンクしていた。後にブロンディでベースを弾くナイジェル・ハリソンらとナイト・シティを結成し、1977~1978年に2作発表。さらにLAパンクを代表するXの最初の4作をプロデュースし、ドアーズの「ソウル・キッチン」をカヴァーした80年のファースト『ロス・アンジェルス』ではオルガンも弾いている。


マンザレクは常に挑戦的だった。ドイツの作曲家カール・オルフの曲をプログレ風に解釈したソロ作『カルミナ・ブラーナ』を1983年に出し、90年代以降は活動の幅を広げ、詩人マイケル・マクルーアとのコラボレーション・アルバムもリリース。自伝や小説も発表し、それらと前後して2000年には監督を担当した映画『Love Her Madly』が公開される。



2002年にはクリーガーとドアーズを再編し、2003年の8月にサマーソニックでドアーズとしての初来日公演を敢行。ザ・カルトのイアン・アストベリーがリード・ヴォーカルを務めたが、時代に流されないあのキーボードの響きで新旧のファンを酔わせたのである。まもなく法的にドアーズの名前が使えなくなるが、ヴォーカリストとドラマーを入れ替えながら“マンザレク-クリーガー”等の名義でライヴを続けた。


2012年には奇天烈なマリリン・マンソンのステージでドアーズの曲を演奏して元気な姿を見せていたが、その翌年の5月に肝外胆管癌でマンザレクは永眠。享年74才だった。


進取の精神とインテリジェンスに富み、細フレーム眼鏡のクールなヴィジュアルが60年代デビューのロック・ミュージシャンの中で異彩を放っていたことも付け加えておく。


≪著者略歴≫

行川和彦(なめかわ・かずひこ):Hard as a Rockを座右の銘とする1963年生まれの音楽文士&パンクの弁護人。『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)を発表。

ハートに火をつけて(50thアニヴァーサリー・デラックス・ジャパニーズ・エディション) Original recording remasteredザ・ドアーズ

CARMINA BURANA CD, Import レイ・マンザレク

Love Her Madly Import レイ・マンザレク

Doors: Myth & Reality Import レイ・マンザレク

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