2018年10月14日
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2018年10月14日
とにかくいろんな人がいる。植木職人、少女漫画家、料理人、絵描き、家具職人、障がい者支援施設職員、そして音楽家。楽器を専門的にやっていない人もいれば、音楽の熟練工みたいな人もいる。
パスカルズは、1995年に結成された14人編成のアコースティックオーケストラ。楽器編成は、トイピアノ、ウクレレ、ピアニカからトランペット、エレクトロニクスを使用するチェロ、風呂の桶など、音量も音色も様々な楽器が集まる。
今から23年前のとある深夜イベントのことだった。リーダーのロケット•マツは、敬愛するフランスの音楽家パスカル・コムラード(現代のサティとも呼ばれ、フランスの若者たちにカリスマ的な人気を持つアーティスト)のカバー曲を演奏するためにメンバーを集めた。これがパスカルズの始まりである。
1997年、1stアルバム『こりすちゃんでお~る』をリリース。タイトルは「子リスのようなちいさな生き物が大海にでた」という意だそう(「クリスチャン・ディオール」をもじったのか、とも揶揄される。また、この後のフランスとの関わりを予兆したかのようなタイトルでもある)。
2001年、この1stアルバムを、来日したパスカル・コムラードにそっと手渡す。数日後、なんとパスカル・コムラードからFAXが届き、そこには「FANTASTIC!」のひとことが書かれていた。彼のレコメンドによって、CD『Pascals』がヨーロッパ、アメリカ、アジアの各地で発売される。CD『Pascals』は、ル・モンド紙をはじめフランスの各音楽誌で高い評価を受け、ル・モンド紙 “CHOC of The Month”、テレラマ誌 “ffff”、レス・インロックプティブル誌の推薦シール(いずれも各紙の推薦盤に与えられる)を獲得。フランスでも珍しいトリプル受賞となった。
現在までに、6回の欧州ツアーと豪州ツアーに招聘される。「こりす=いろんな人」の音楽は海を渡ったのだ。
これまで、数々の映画や演劇の音楽も作り、出演もした。その中、大林宣彦監督作品・映画『この空の花――長岡花火物語』挿入曲(「花火」)、『野のなななのか』主題曲(「野のなななのか」)と挿入曲(「ガタタンロード」)、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作•演出・舞台『祈りと怪物』挿入曲(「蝶」)、水江未来監督作品・短編アニメーション『WONDER』表題曲(「WONDER」)を、今回の新譜『日々、としつき』に収録。
『日々、としつき』について、ロケット・マツに訊く。
タイトル命名は?
――「長い時間が堆積したことと、音を聴いた思いつきで付けたんです。あまり意味はなく。やっぱり、ジジ臭いとか、老人ホームの文集タイトルみたいだって、メンバーに反対されました(笑)」
パスカルズのバンド形態や表現は他とは違い、独自の歩み方をしてきた。目指す先は、どこなのだろう。
――「音楽というのはとても大きくて高い山のよう。その裾野は広くて、音楽的エリートばかりでなく僕たちのような特殊なグループも遊ばせてくれる場所、聴いてくれる人たちが楽しめるということを含めた場所があるのではないかと思う。僕たちは演奏の技術が問題になる場面は多々あるけれど、ある志をもっていればそこを目指して行けると思う。乱暴に言ってしまえば “うまいもへたもないところ” なのだけど・・・」
パスカルズは、「おそらくそういう場所があるはずだ」と、23年間かけて確かめてきた。
――「まだもう少し音楽の裾野で遊ばせてもらいたいと思っている。その理由のひとつは、『全員が健康でいるから』。だからあたらしいアルバムも作れたんです」
なんだか、タイトル『日々、としつき』の意味がいっそう増した気がする。
ロケット・マツは加えて言う。
――「ここまで読んで頂いて、パスカルズについてどんどん興味を失われたかもしれませんが、新譜『日々、としつき』が出ましたので、よかったらぜひ聴いてみて下さい」
*パスカルズ『日々、としつき』
•PASK-0008
•2,800円(税別)
•JANコード 4580197860084
•監修: 関島岳郎
•発売元: オフィスロケッタ
•販売元: 株式会社メタカンパニー(03-5273-2821)
*2018年11月1日 配信スタート
amazon、Apple
Music、Spotify、AWA、LINE
MUSIC、他各サイトにてストリーミング配信、ダウンロード販売を開始。
≪著者略歴≫
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