2018年05月03日
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2018年05月03日
規律。
今日、5月3日はジェームス・ブラウンの誕生日。1933年生まれとされているので、もし存命なら85歳になる。だが、2006年12月25日73歳で死去した。
ジェームス・ブラウンのことをスタッフ、ミュージシャンたちはみな「ミスター・ブラウン」と呼ぶ。それはジェームス・ブラウン・ファミリーで最初に教わる規律だ。ファミリーのルールはいくつもある。
曰く常に相手に敬意を払え。だから相手が男性の場合は、必ず「ミスター」をつけて話す。ミスター・ブラウン、ミスター・パーカー、ミスター・ウェスリーだ。ブラウン本人も年下のミュージシャンに対しても必ず「ミスター」、女性だったら、「ミス」をつける。マーサ・ハイの場合は、「ミス・マーサ・ハイ」といった具合だ。
移動中も必ずきちんとした身なりでいろ。ステージ上はステージ衣装で決めるのはもちろんのこと、オフの移動中などもスーツを着て、きちんとした身なりをしなければならない。エンタテインメントの世界は人々に夢を与える仕事だ。人々からリスペクトされ、あこがれてもらわなければならない。だからステージ上だけでなく、人前にでるときは、いつでも、たとえば男性ならスーツを着ていなければならない。ルーズな服装をしていたら、罰金だ。
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人心掌握術。
ジェームス・ブラウン・ファミリーの規律の中に、罰金制度がある。一番有名なのが、ステージ上で演奏を間違えたりした場合、1回間違えると、5ドルだ。ミスター・ブラウンは観客に背を向け、間違いを犯したミュージシャンを指さし、手を広げ、数字の5を示す。つまり、「お前、今、間違えたな。罰金5ドルだ」というわけだ。もし同じステージで2度間違えたら、2度手を広げられて、10ドルになる。その罰金の合計は彼らのウィークリーのサラリー(週給)からしっかり引かれるのだ。
そして、驚くべきことに、ジェームス・ブラウンはたくさんある楽器の中で、どの楽器が間違いを犯したかを瞬時に気づくという。
もちろん、だからミュージシャンたちは常にミスター・ブラウンの一挙手一投足を凝視して、決して間違えないように最大限の注意を払う。この罰金制度が、ジェームス・ブラウンのバンドのライヴにおけるパフォーマンスの緊張性を高める大きな要因だ。
こうした罰金制度は、いわばムチだが、ミスター・ブラウンはファミリーを大変大事にする。機嫌がよかったり、ファミリー・メンバーの誰かが何かいいことをすると、気前よく、自分のたくさんの車の中から一台をぽーんとあげたりしてしまう。長年、ミスター・ブラウンのMC(司会)を担当してきたダニー・レイもかつてミスター・ブラウンから車をもらったことがあった。これは、言ってみればアメだ。
ミスター・ブラウンは恐るべき記憶力を持っていた。全米各地のラジオ局の主なDJの名前はほとんど頭に入っていた。そして、その土地でライヴやコンサートがあるときは、地元のラジオ局のDJに電話をかけ、「今度君の街に行くから、よろしく頼む」というのを直接ミスター・ブラウンがそのDJにするわけだ。ちょっとした電話魔でもあった。ミスター・ブラウンから直接電話をもらえば、どんなDJだってその場でジェームス・ブラウンのレコードをかけるだろう。
ミスター・ブラウンのファミリーの結束が強いのは、こうしたいわばムチと飴をうまく使い、人心掌握術が天才的にうまいことがあったのだ。
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≪著者略歴≫
吉岡正晴(よしおか・まさはる):音楽ジャーナリスト、DJ。ソウル・ミュージックの情報を発信しているウェッブ『ソウル・サーチン』、同名イヴェント運営。1970年代には六本木「エンバシー」などでDJ。ディスコ、ブラック・ミュージック全般に詳しい。ラジオ番組出演、構成選曲、雑誌・新聞などに寄稿。翻訳本に『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』(デイヴィッド・リッツ著)、『マイケル・ジャクソン全記録』など。自著『ソウル・サーチン R&Bの心を求めて』など。、毎月第一木曜夜10時『ナイト・サーチン』(ミュージックバード)を生放送中。最新情報は、ツイッターで 。
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