2016年07月03日
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2016年07月03日
今年も“フェス”の季節がやってきた。イベントに政治を持ち込むな――と、喧しいが、いろいろあるのがフェスだろう。様々な趣旨や形態があっていい。そんな中、“大人のミニフェス”と銘打って開催されるのが、毎年恒例となった東京・池上本門寺で行われる「Slow LIVE」だ。
「Slow LIVE」は食文化“Slow Food”の考え方を音楽にも当てはめ、音楽もゆっくり楽しもうという願いから2004年に始まる。毎年、数多くの音楽フェスティバルが開催される中で、主催者は“Slow LIVEらしさ”を大切にしているという。
野外の音楽フェスティバルでは、いくつものステージがあるスタンディング形式が多い中、「Slow LIVE」ではちゃんと座席があり、ゆったりとライブを見ることができるワンステージ型。大型フェスのように移動だけで、疲れ果ててしまうことはない。すべての出演者のライブを最初から最後まで観ていただきたいという思いからだそうだ。また、ロック・アーティストがアコースティックな編成で出演するなど、新たな表現に挑戦する事ができる場にもなっている。
野外イベントでは「食」も楽しみの一つ。「Slow LIVE」では、ライブの合間に食事やドリンクを購入できる、余裕のある時間に設定、他のフェスとは一味違った大人向けのメニューにもこだわる。
「伝統と文化」も大事な要素だという。会場となる池上本門寺は700年以上の歴史がある由緒正しい寺院。イベントは3日間、本門寺の上人の挨拶からスタートする。また、本門寺の名物、五重塔はイベントのロゴにも使われており、当日は手ぬぐいや団扇など、日本の伝統的なグッズも販売。浴衣で参加される方も多く、まるで夏祭りの様な情景となるという。
古き良き伝統を持ち、都会ながら自然に囲まれる池上本門寺で、音楽をゆっくり楽しむ。それが主催者の考える “大人のミニフェス”、「Slow LIVE」である。
私も昨2015年、9月5日(土)に同フェスに参加したが、夏の終わり、秋の気配を感じさせる会場で、その音楽に耳を傾け、身体を委ねた。当日の出演者はCharを始め、佐野元春 & THE COYOTE BAND、LOVE PSYCHEDELICO(プレミアム・アコースティックセット)、安藤裕子、THE BOCOS、Predawn、藤原さくら(かの『ラブソング』の主演女優。見ていたとは知らなかった!)、Rei(Opening Act)というラインナップ。
基本的に会場は境内、周辺は住宅地ということもあり、アコースティックセットなどの演奏が多い。その中、佐野はフルバンド仕様、コヨーテバンドと作り上げた “問題作”『BLOOD MOON』リリース直後の夏のツアーのテンションを維持したまま、同フェスに挑む。昨年の夏は暑かったが、政治の季節といっていい。危険な法案を巡り、それに対して、多くのものが声を上げた。佐野はそんな時代の空気をそのまま、自らの音楽へ表出させる。同ツアーでは「国のための準備」などを敢えて演奏している。夏のツアーには8月に開催された「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO」も組み込まれ、その時の模様は、ツイッターなどで“同時中継”され、世代や性別を超え、多くの共感と賛辞を得た。
夏のツアーの縮小版だが、歴史に残る佐野元春の“2015サマー・ツアー”の何たるかは確認できる。そういう意味でも同フェスで、佐野元春とコヨーテバンドの夏のツアーを体験できたことは貴重だろう。形式や思惑を超え、アーティストの自然な発露として、その時代やその場所でなければ生まれないマジックを見せてくれたのだ。
「Slow LIVE」を主催するHOT STUFF PROMOTIONは1980年代、「HEADZ」という伝説的なイベントを開催していた。今は亡き、渋谷の東横劇場で1984年4月から1985年7月まで、計14回、当時はまだ新進気鋭、有望株と言われるバンドが多数出演、対バンし、その覇を競う。熱と思いが迸る。かのBOØWYや バービーボーイズ、 ザ・ルースターズ、エコーズ、パーソンズ、アナーキー、アクシデンツ、シェイクス、MELON、TM NETWORKなどが出演している。登竜門的なコンサートで、まさに生きのいい、これからの活躍を期待させるバンドの揃い踏み。同イベントから巣立ったバンドは数多い。
現在、「HEADZ」のコンセプトは「Ruby Tuesday」や「TUMBLING DICE」などのイベントに引き継がれ、彼らが推薦するバンドやアーティストを紹介しているが、「Slow LIVE」にもその遺伝子が宿る。大人向けのリラックスしたものといえども、バンドに化学反応を起こす。そんな意味でも和みつつも襟元を正し、バンドと向き合う瞬間も生まれる。
今年も「Slow LIVE’16in 池上本門寺」が東京・池上本門寺で、9月2日(金)、3日(土)、4日(日)の3日間に渡って行われる。現在、発表されている出演者は以下の通り。
2日(金)出演:ORIGINAL LOVE(アコースティックセット)/トータス松本/オープニングアクト:あり
3日(土)出演:Char/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND/ましまろ/GLIM SPANKY(アコースティック2人編成)/土岐麻子/and more!
4日(日)出演:ハナレグミ/奇妙礼太郎/堀込泰行/野宮真貴/チャラン・ポ・ランタン/NakamuraEmi/and more!
ORIGINAL LOVEの田島貴男とウルフルズのトータス松本という東西を代表するソウルの巨頭の競演、“ザ・ソウルナイト”である。どんな火花を散らすか、興味が尽きない。
Charは昨年、地元話(CHARは池上本門寺近くの戸越出身。同寺は遊び場だったそうだ)で盛り上がり、アコースティックな響きで、終わりゆく夏の名残を締めくくった。今年はどんな締めを見せてくれるのだろう。
また、ヒックスヴィルの中森泰弘と真城めぐみ、そして、ザ・クロマニヨンズの真島昌利のHIPでCOOLなFOLK&ROLLのましまろや土岐麻子、GLIMSPANKEYのアコ―ステックバージョン、どんなものになるか、楽しみである。
さらに清志郎との共演でお馴染みのハナレグミや彼と同じく魅力的なボーカリスト、奇妙礼太郎、そしてハナレグミにも楽曲提供している元KIRINJIの堀込泰行がどんな都市の音楽を奏でるか。ともにけだるくも甘い歌声、そして、たゆとうような音に身を預ける心地よさがある。これは聴き逃せない。彼らの共演があるのかわからないが、三大ボーカリストの競演は必聴だろう。野宮真貴の甘い囁きも夏の終わりに相応しい。
歴史にもしもはないが、フェスはその場だけでしか起こり得ない、再現不可能な瞬間がある。このフェスを体験したことが数年後の自慢話になるかもしれない。池上本門寺でレイドバックしながら夏の終わり、秋の始まりを過ごすのも悪くない。大人ならきっと、楽しめるはずだ。
写真提供:HOT STUFF PROMOTION
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