2017年01月31日
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2017年01月31日
ジョン・ライドンは最初、ジョニー・ロットンという名前でミュージック・シーンに登場してきた。一般的には76年11月にセックス・ピストルズのリード・ヴォーカリストとしてイギリスのEMIからシングル「アナーキー・イン・ザ・UK」(英・第38位)でレコード・デビューを果たした時だ。それまでのロック・アーティストと異なるショート・ヘアで、頬のこけた華奢な体の青年だったが、挑発的なメッセージを持った歌を過激に表現したジョニー・ロットンとセックス・ピストルは、経済的に沈滞していたイギリスに暮らす若者の支持をすぐに取り付けた。「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」(77年/英・第2位)、「プリティ・ヴェイカント」(77年/英・第6位)などが話題になった頃はすでにパンク・ムーヴメントの頂点にいた。
ひるがえって、大西洋をはさんだアメリカになると、ビー・ジーズやフリートウッド・マック、イーグルスなどに熱中していた時代だったせいか、パンク・ロックをめぐる状況は異なる。特に78年の全米ツアー中のセックス・ピストルがコンサートで本国のような反響を得られぬことで、ジョニー・ロットンがステージ上で当惑、焦り、苛立ち、怒り、おののきといった感情が入り混ざった、何とも言えぬ表情をしていたのが忘れられない。結局、アメリカでは1曲のシングル・ヒットも生まれず、グループ唯一のオリジナル・アルバム『勝手にしやがれ!!』(77年)は本国では第1位だったのに対し、アメリカでは第106位に留まってしまう。ジョニーはこのツアーを最後にグループから離れ、半年後の78年7月にパブリック・イメージ・リミテッド(PIL)を結成してシーンに戻ってくる。
ジョニー・ロットンは1956年1月31日、ロンドンのフィンズベリー・パーク生まれで、本名をジョン・ライドンという。したがって、ここからはジョン・ライドンと表記するが、スティーヴ・ジョーンズ(ギター)とポール・クック(ドラムス)、グレン・マトロック(ベース)が組んでいたスワンカーズにオーディションを受けて加入。グループはセックス・ピストルズに改名するが、ジョンもS・ジョーンズから「お前は腐ってる(rotten)」と言われたことから、芸名をジョニー・ロットンに変えたわけである。ただし、セックス・ピストルズの時とは違って、自分が中心になって元クラッシュのキース・レヴィン(ギター)や元フューリーズのジム・ウォーカー(ドラムス)、それにジャー・ウーブル(ベース)とPILを結成したのを機に本名での活動を決意している。
ポップかつ多角的なPIL時代のジョン・ライドンは、最初のリハーサルを始めて1時間足らずでできたという「パブリック・イメージ」(英・第9位)で再出発。その後も「ラヴ・ソング」(83年/英・第5位)や、ネルソン・マンデラに触発された「ライズ」(86年/英・第11位)といった印象深い作品を残すが、PILとしてもアメリカにおける商業的な高い評価を得られていない。代表作のひとつ『フラワーズ・オブ・ロマンス』(81年/英・第11位、米・第114位)や、元クリームのジンジャー・ベイカーや坂本龍一らが参加した『アルバム』(86年/英・第14位、米・第115位)はもちろんのこと、『ライヴ・イン・トーキョー』(83年/英・第28位)に至っては当時、発表さえされていない。PILは彼以外のメンバーが流動的なので、実際のソロ名義やタイム・ゾーンも含め、ジョン・ライドンになってからはずっと単独行動を取ってきたとも言えるが、還暦を過ぎると、その外見も音楽も貫禄が付いてきた印象を受ける。
≪著者略歴≫
東ひさゆき(あずま・ひさゆき):1953年4月14日、神奈川県鎌倉市生まれ。法政大学経済学部卒。音楽雑誌「ミュージック・ライフ」、「ジャム」などの編集記者を経て、81年よりフリーランスのライターに。おもな著書に「グラミー賞」(共同通信)など。
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