2017年09月10日

[recommend]今年はマーク・ボラン生誕70周年、没後40年。さまざまな企画盤が登場

執筆者:市川清師

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今年も9月16日がやってくる。同日はかの英国グラム・ロックの伝説のスター、T.レックスのマーク・ボランの命日。1947年9月30日に生まれた彼は、1977年9月16日、ロンドン郊外のバーンズにおいて自動車事故で、帰らぬ人となる。自動車を運転していたのはグロリア・ジョーンズ、マーク・ボランは助手席に乗車していた。事故は車が大破するほどのものだったという。享年29歳。早過ぎる死だった。


日本では毎年、元マルコシアス・バンプ、現Rama Amoebaのアキマツネオ(秋間経夫)により、マーク・ボランの命日である9月16日に『GLAM ROCK EASTER』が開催されている。本2017年で31周年を迎え、世界屈指のマーク・ボラン追悼イベントとなっている。アキマは1997年9月30日、イギリス・ケンブリッジで行われたマーク・ボラン生誕50周年ライブに参加、元T.レックスのミッキー・フィンやマークの息子、ローラン・ボランとも共演。その模様は英国でもTVなどで報道されている。


今年はマーク・ボラン生誕70周年、没後40年という記念すべき年でもある。9月13日には、アキマツネオ(Rama Amoeba)の総合プロデュースにより、彼をリスペクトする日本人アーティストが参加したトリビュート・アルバム『T. Rex Tribute ~Sitting Next To You~ presented by Rama Amoeba』がビクターエンタテインメントからリリースされる。


同作はアキマの他、ROY(THE BAWDIES)、オカモトショウ(OKAMOTO'S)、広瀬“HEESEY”洋一(THE YELLOW MONKEY)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、シシド・カフカ、村越“HARRY”弘明、志磨遼平(ドレスコーズ)、越川和磨(THE STARBEMS)、加藤ひさし(THE COLLECTORS)、橋本愛奈(チャオ ベッラ チンクエッティ)、日高央(THE STARBEMS)、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)といった新旧の“ボランズ・チルドレン”が参加。魅力的で強力なラインナップだ。


アキマが監修したT.レックスのベスト・アルバム『BEST OF T.REXXXXXXX』も同時発売。あわせて1970年代にリリースされたアルバム『ザ・スライダー(The Slider)』、『タンクス(Tanx)』、『マーク・ボラン★または★ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー(Zinc Alloy & The Hidden Riders of Tomorrow)』、『ブギーのアイドル(Bolan's Zip Gun)』、『銀河系よりの使者(Futuristic Dragon)』、『地下世界のダンディ(Dandy in the Underworld)』、『グレート・ヒッツ(GREAT HITS)』の7作品もK2HD PROマスタリングが施され、同じくビクターエンタテインメントからリイシューされる。


そして、20年前の1997年11月、生誕50周年、没後20年を記念してリリースされた、T.レックス世界初のオフィシャル・トリビュート・アルバム『BOOGIE WITH THE WIZARD』もテイチクエンタテインメントから9月13日に再発売される。当時、トリビュート・アルバムとしては異例の売り上げを記録し、現在では生産中止となっていて、入手困難なコレクターズ・アイテムとなっていた。まさに「幻の名盤」の復活である。


このアルバムの参加アーティストは、アキマ&ネオス、THE YELLOW MONKEY、ザ・ウィラード、 頭脳警察、高木完、ちわきまゆみ sing with PEALOUT、デミセミクエーバー、野宮真貴+サエキけんぞう、広石武彦、暴力温泉芸者、本田恭章、マルコシアス・バンプ、山本精一、ROLLY…と、多士済々、豪華絢爛のアーティスト陣が名を連ね、ラストには同アルバム参加メンバーによるオールスター・セッションを収録。“ボランズ・チルドレン”として、ヴォーカルには吉井和哉、ROLLY、本田恭章、PANTA、秋間経夫、広石武彦をフィーチャーしている。


実は、このアルバムには私も関わっていた。本『大人のMusicCalendar』でもお馴染みのライター&プロデューサーで、当時はテイチク(現テイチクエンタテインメント)でA&Rとして、ティラノザウルス・レックスのデビュー・アルバムから、一連のT.レックス・オリジナル・アルバム、さらにマーク・ボランの死後発表された未発表作品集まで、すべてのアルバムの発売に関わっていた中村俊夫さん、『GRAM ROCK EASTER』の制作やマネージメントのバックアップをしていたフライングパブリッシャーズの石井康則さんとともに制作を担当。1997年は、マーク・ボランの生誕50周年と没後20年というダブルのメモリアル・イヤーを記念して、テイチクでは大々的なキャンペーンを展開、その最大の目玉となったのが、日本人アーティストによるトリビュート・アルバムだった。


その成立過程などは新たに書き下ろされた最新ライナーに中村さんが書いているので、ご覧いただきたいが、アーティストの選択、依頼に当たり、私達が腐心したのはグラム・ロックという表面的な様式を再現するのではなく、そこにある多様性や汎用性を表現するということ。それゆえ、様々な音楽性を持つアーティストが参加し、そこで表現される音楽もバラバラ、よくいえばバラエティーに富んでいる。マルコシアス・バンプやイエモンと暴力温泉芸者や山本精一が同じアルバムに収まるなんていうことは、そうないだろう。


また、野宮真貴やちわきまゆみ、デミセミクエーバーなど、女性ヴォーカルを意図的にフィーチャーもしている。グラム・ロックのユニセックス、ジェンダーレス的なところを意識している。あとになると、こじつけ臭くなるが、奇跡のような極彩色の組み合わせが実現した。


私も何曲かは実際に現場に立ち会ったが、なかでも印象深いのは“ボランズ・チルドレン”のメドレー。アキマ、吉井和哉、本田泰章、広石武彦、ROLLY、PANTAというオールスター・キャストで、T.レックスの名曲を歌い継ぐ。元サディスティック・ミカバンド、サディスティックス、イミテーションの今井裕をプロデューサーに迎え、スカパラやTOSHI(頭脳警察)、古市コータロー(THE COLLECTORS)が演奏に参加、冴島奈緒、AKKO(ルルーズ・マーブル)、佐藤公彦(メンズ5)、和気優(JACKKNIFE)、ギュウゾウ(電撃ネットワーク)、加藤賢崇、平間希和子(ロージー)など、賑やかなメンバーがコーラスとして“友情出演”して、メドレーを盛り上げる。同曲のレコーディングの模様を収録したプロモーション・ビデオも制作された。Youtubeに「ボランズ・チルドレン」で検索すれば、出てくるという。是非、ご覧いただきたい。各アーティストのマークへの思いがつまり、彼への気持ちがこもる同アルバム。「幻の名盤」から“幻”が消えた今、改めて聴いていただきたい。自信作である。


命日である9月16日に向けて、マーク・ボランの生誕70周年、没後40年というメモリアル・イヤーを彩るべくリリースされる2枚のトリビュート・アルバム。時代と世代を超える“T.レックス愛”、“マーク・ボラン愛”を再確認いただきたい。勿論、今年も『GRAM ROCK EASTER』は開催される。既にソールド・アウトだという。マーク・ボランを最も愛しているのは日本の音楽ファンかもしれない。

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◆V.A.『T. Rex Tribute ~Sitting Next To You~ presented by Rama Amoeba』

収録曲 / 参加アーティスト

01. Get It On / ROY(THE BAWDIES)

02. Celebrate Summer / オカモトショウ(OKAMOTO'S)

03. Light Of Love / アキマツネオ feat. 廣瀬“HEESEY”洋一(THE YELLOW MONKEY)

04. 20th Century Boy / 菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)

05. Metal Guru / シシド・カフカ

06. The Slider / 村越 “HARRY” 弘明

07. Dreamy Lady / 志磨遼平(ドレスコーズ) feat. 越川和磨(THE STARBEMS)

08. Midsummer Night's Scene / 加藤ひさし(The Collectors)

09. Life's A Gas / アキマツネオ&橋本愛奈(Ciao Bella Cinquetti)

10. The Soul Of My Suit / 日高央(THE STARBEMS)

11. The Prettiest Star / 吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)

12. Sitting Next To You / アキマツネオ&吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)

◆V.A『BOOGIE WITH THE WIZARD A TRIBUTE TO MARC BOLAN&T.REX』

収録曲/収録アーティスト

01. ゲット・イット・オン/アキマ&ネオス

02. ティル・ドーン/ザ・イエロー・モンキー

03. 20センチュリー・ボーイ/ザ・ウィラード

04. リップ・オフ~ガール/頭脳警察

05. イージー・アクション/高木完

06. ザ・スライダー/ちわきまゆみ sing with PEALOUT

07. ジープスター/デミセミクエーバー

08. マジカル・ムーン/野宮真貴+サエキけんぞう

09. ティーンエイジ・ドリーム/広石武彦

10. 悪魔のしもべはのろまが嫌い/暴力温泉芸者

11. ジュウェル/本田恭章

12. ウイザード’97/マルコシアス・バンプ

13. メタル・グルー/山本精一

14. ザ・グルーヴァー/ROLLY

15. T.レックス・トリビュート・メドレー/ボランズ・チルドレン

a) 20センチュリー・ボーイ/吉井和哉(ザ・イエロー・モンキー)

b) メタル・グルー/ROLLY

c) ホット・ラブ/本田恭章

b) チルドレン・オブ・ザ・リヴォリューション/PANTA

e) 地下世界のダンディ/秋間経夫(マルコシアス バンプ)

f) テレグラム・サム/広石武彦

g) ゲット・イット・オン/本田恭章、ROLLY、広石武彦、PANTA

T.RexTributeMedley――BOLAN’S CHILDREN

https://www.youtube.com/watch?v=8Eq54tmiir8

◆『~マーク・ボラン追悼~ GLAM ROCK EASTER Vol.31』

会場=東京・鶯谷 東京キネマ倶楽部

出演=Rama Amoeba(featuring Mitsuhiro Ishida)

ゲスト=廣瀬“HEESEY”洋一<THE YELLOW MONKEY> / 日高央<THE STARBEMS> / 宮田和弥<JUN SKY WALKER(S)>

サポートメンバー=三国義貴 / 原田千栄 / 高仲尚子

OPEN 17:00 START 18:00

料金=1F指定席\5,000- 2F指定席\5,500-(+ドリンク代)

チケット=THANK YOU SOLD OUT!!

≪著者略歴≫

市川清師(いちかわ・きよし):『MUSIC STEADY』元編集長。日本のロック・ポップスに30年以上関わる。同編集長を退任後は、音楽のみならず、社会、政治、芸能、風俗、グラビアなど、幅広く活躍。共著、編集に音楽系では『日本ロック大系』(白夜書房)、『エンゼル・ウィズ・スカーフェイス 森山達也 from THE MODS』(JICC)、『MOSTLY MOTOHARU』(ストレンジデイズ)、『風のようにうたが流れていた 小田和正私的音楽史』(宝島社)、『佐野元春 SOUND&VISION 1980-2010』(ユーキャン)など。近年、ブログ「Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !」で、『MUSIC STEADY』を再現している。 
『T.Rex Tribute ~Sitting Next To You~ presented by Rama Amoeba』…ROY (THE BAWDIES) 、 オカモトショウ(OKAMOTO'S) 、 廣瀬"HEESEY"洋一(THE YELLOW MONKEY) 、 菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) 、 シシド・カフカ 、 村越"HARRY"弘明 、 志磨遼平(ドレスコーズ)、越川和磨(THE STARBEMS)、加藤ひさし(The Collectors)、橋本愛奈(Ciao Bella Cinquetti)、日高央(THE SARBEMS)、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)

BEST OF T. REXXXXXXX【マーク・ボラン生誕70周年記念ベスト/K2HD PROマスタリング】 T・レックス

T.レックス・トリビュート・アルバム『BOOGIE WITH THE WIZARD』…アキマ&ネオス、THE YELLOW MONKEY、ザ・ウィラード、 頭脳警察、高木完、ちわきまゆみ sing with PEALOUT、デミセミクエーバー、野宮真貴+サエキけんぞう、広石武彦、暴力温泉芸者、本田恭章、マルコシアス・バンプ、山本精一、ROLLY ボランズ・チルドレン。

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