2015年11月01日

栄光のジャイアンツ・ソング ~歌にも闘魂こめて…王選手 「白いボール」、原選手には加山雄三の書き下ろし曲、その他には…

執筆者:鈴木啓之

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本日は1973年に読売ジャイアンツがV9を達成した日となる。

セ・パ12球団の中で最も長い歴史を誇る読売ジャイアンツ(=東京読売巨人軍)は日本のプロ野球の代名詞といっても過言ではない。もちろんファンばかりではなくアンチも存在するわけだが、それは常勝球団であるが故の宿命。そのことを象徴するのが、現役時代に“打撃の神様”と呼ばれた川上哲治が監督を務めていた時代の1965年から73年までに9年連続日本一となった、いわゆる不滅の“V9”である。今後もきっと破られることがないであろう輝かしい大記録が達成されたのは今から42年前、73年11月1日のことであった。


川上監督が就任して3年目にあたる63年、読売巨人軍創立30周年記念の選定歌「巨人軍の歌」が誕生する。守屋浩らコロムビア専属の歌手達が歌ってレコードが出され、PR用に配布されたフォノシート(ソノシート)には、川上、長島、王の挨拶も収録されていた。後に「闘魂こめて」のタイトルで定着することになるこの歌の作曲はベテラン・古関裕而で、氏は巨人のよきライバルである阪神タイガースの球団歌「六甲おろし」(誕生時は『大阪タイガースの歌』)も作っているところが面白い。この年のペナントレースを舞台として撮影され、翌64年に東宝で公開された『ミスタージャイアンツ 勝利の旗』という映画がある。主演はなんと長島茂雄。フランキー堺や伴淳三郎ら俳優陣と共に堂々の演技を見せる。さらには、川上、広岡、藤田、王、そして西鉄の中西太らが本人役で出演している凄い映画なのだ。東芝レコードから出された主題歌「勝利の旗」は坂本九が歌っているが、シングル盤のカップリング曲「ブブン ブン ブン ジャイアンツ」は、当時まだ入団3年目でレギュラーポジションを獲得したばかりの柴田勲が歌った。これぞスター選手の証し。劇中のバーティー・シーンには、柴田とのロマンスが囁かれた伊東ゆかりが出演していたり、音楽を担当した服部良一が登場して指揮をしたりと、見どころいっぱいの映画である。


王貞治が長島とのコンビで“ON砲”と呼ばれるようになるのもこの頃からで、一本足打法に転向して62年に初めてホームラン王を獲得した王選手は、64年には55本塁打の記録を達成した。翌65年、つまりいよいよV9が始まる年の春には、その偉業を讃えるかの如く、「白いボール」で歌手デビューも果たす。コロムビアの歌手・本間千代子との共唱となったこの歌の作曲は、後にシンセサイザーで一世を風靡する冨田勲。氏の証言によれば、当初この歌は長島が歌う予定だったそうで、急遽王にお鉢がまわったらしい。結果的には王の朴訥な歌声に純朴なメロディが映える傑作と相成った。技巧一切なしの歌いっぷりには、スポーツ選手の歌は斯くあるべしと思わせられる。ちなみに王は69年のシーズンオフに、コロムビアの歌手・鏡五郎に「でっかくいこうぜ」という歌の詞を提供している。また、76年にレコード化されたセントラル・リーグの連盟歌「六つの星」では、細川たかしのバックとして、広島の山本浩二、阪神の田淵幸一、中日の星野仙一らと共にレコーディングに臨んだ。そこにも参加したヤクルトの松岡弘は「とびだせヤクルト・スワローズ」をソロで出しており、オリジナルの歌謡曲も含めて、この頃からプロ野球選手がレコードを吹き込む機会は俄然増えていった。元・中日の板東英二が歌った「燃えよドラゴンズ」は最も有名な一曲。


80年代以降のジャイアンツ選手の歌で特筆すべきは、やはり原辰徳のレコードであろう。決して上手くはないが、かつての王同様、素直な唱法に好感が持てる。82年に出されたシングル「どこまでも愛」は山上路夫作詞・平尾昌晃作曲による甘いラヴソングだった。アルバム『サムシング』では、「ぼくの妹に」を愛唱していたジャイアンツの若大将に、加山雄三(=弾厚作)が「恋人は一人」を書き下ろし、そのニュースは当時の報知新聞の一面を飾ったほど。他にも、沢田研二、吉田拓郎、長渕剛といった豪華な作家陣が目を惹く。原のレコードはアイドル的なものであったが、同じ年、かつて巨人軍最強の5番打者と呼ばれた柳田真宏が現役を引退しており、翌年には演歌歌手デビュー。後にピッチャーの藤城と共に敏いとうとハッピー&ブルーに在籍したのには驚かされた。そういえば矢野顕子が「行け柳田」という応援歌を歌っていたことを思い出した。


ところで、ミスターは結局レコードを出さなかったのか? 答えはイエスともノーともいえる。ソロのレコーディングはないものの、93年の日本テレビ『劇空間プロ野球』のイメージソングとして、ビーイング系のZYYG、REV、ZARD&WANDS名義によるシングルCD「果てしない夢を」の一節を歌っているのだ。“featuring長嶋茂雄”とクレジットされ、短いながらもソロ・パートがしっかりと確認出来る。我らのミスターが最も歌手に近づいた貴重な作品といえよう。しかし出来ることなら今後、「闘魂こめて」をONで録音してもらいたいと願うのだが・・・。先述の「勝利の旗」をはじめ、長嶋がジャケットに写ったレコードは数多く、そのひとつに監督就任一年目の75年に湯原昌幸が歌った「がんばれ長嶋ジャイアンツ」がある。作曲は小林亜星、作詞は意外なことに寺山修司が手がけた傑作なのだ。

写真提供 芽瑠璃堂
巨人軍の歌 闘魂こめて

ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗

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