2015年10月19日
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2015年10月19日
1964年の東京オリンピックで初めて正式種目となった競技というと、まず柔道が思い浮かぶが、バレーボールもその一つだったことをご記憶だろうか。この時、女子日本代表チーム「東洋の魔女」が巻き起こした大旋風とは、オリンピック初登場の新種目であったこと、かつ、初の女子団体種目であったこと、さらにそこで金メダルを獲得したこと……という三重の喜びの中から生まれたものだった。この勢いはその後の大会にも引き継がれ、続くメキシコシティ(1968)では男女ともに銀、ミュンヘン(1972)では男子が金、女子が銀、モントリオール(1976)では、女子が再び金メダルを獲得している。
バレーボールがこのように日本の「お家芸」としての定着していく十数年の間、私たちの身近には常にバレーボールをテーマにしたテレビ番組があり、その人気を下支えしていたことを忘れてはならないだろう。その筆頭ともいえるのが、1969年から放送が開始されたドラマ『サインはV』(TBS系)ではないだろうか。今日、10月19日は、その主演を務めた女優:岡田可愛の誕生日である。
『サインはV』は、望月あきら・神保史郎によって「週刊少女フレンド」(講談社刊)で1969年に連載がスタートし、同年10月にはテレビドラマの放送が開始されている(1970年8月まで放送)。主人公:朝丘ユミは岡田可愛が、コーチの牧圭介は中山仁が演じており、ジュン・サンダース役の范文雀や岸ユキなどの配役も忘れがたい……と、ここまで来て「坂口良子はどうした!?」と心の中で叫んでいる向きも多いかと思うが、坂口良子が主演したのは、岡田可愛版の4年後を描いた続編となる第2シリーズで、こちらは1973年10月から1974年3月にかけて放送されている。3年ものブランクがある2つのシリーズだが、いずれも番組タイトルが『サインはV』のため、混同されて語られることも少なくない。
この2番組が混同されやすいもう一つの要因が、主題歌も同じという点だ。岡田可愛版のオープニングテーマ「サインはV」は、作詞:岩谷時子、作・編曲:三沢郷、歌:麻里圭子、横田年昭とリオ・アルマによるもの。坂口良子版は、詞・曲は同じだが、編曲は青木望の担当となり、主演の坂口良子が自ら歌っている。この稀代の名主題歌の大ヒットにより、作曲の三沢郷は、ドラマ『アテンションプリーズ』(1970)、『赤い靴』(1972)、アニメ『デビルマン』(1972)、『エースをねらえ!』(1973)などの主題歌・BGMを次々と担当する売れっ子となっていく。1973年というタイミングでの『サインはV』新シリーズの開始に際して、三沢による旧主題歌を再使用する判断に至ったのもうなずける。
そしてもう一つ、忘れてはならないバレーボール作品がある。『サインはV』に先んじて1968年から『週刊マーガレット』(集英社刊)で浦野千賀子による原作漫画の連載が始まった『アタックNo.1』である。テレビアニメ(フジテレビ系)は、逆に『サインはV』放送開始に2ケ月ほど遅れ、1969年12月から始まっている。
「アタックNo.1」(作詞:東京ムービー企画部、作曲:渡辺岳夫、編曲:松山茂、歌:大杉久美子)は、中盤でのセリフが印象的なオープニングテーマ。2005年に上戸彩主演でテレビドラマ化(テレビ朝日系)されたときにもこの主題歌が使用されるなど、もはやニッポンのスタンダード・ナンバーと言っても過言ではない名主題歌だ。作曲の渡辺岳夫は、既に『新選組血風録』(1965)、『大奥』(1968)などの時代劇音楽で実績を積んでいたが、『巨人の星』(1968)や、この『アタックNo.1』を足場にアニメ音楽にも進出。『アルプスの少女ハイジ』(1974)、『キャンディ・キャンディ』(1976)、『機動戦士ガンダム』(1979)など、今なお聴き継がれている名作音楽を多く生み出す、アニメ音楽の大家となっていく。
そもそも『サインはV』とは、漫画『アタックNo.1』と競り合うために講談社が練った企画から始まっているという。スポ根の常道である、荒唐無稽な「魔球」「必殺技」はアニメのほうがよほど表現しやすいはず。しかし、この2作においては、実写ドラマである『サインはV』の方がそうした表現がより過激になっている。これは漫画としては後発だったため、より派手な演出をぶつけた「対抗策」だったのではないだろうか。『サインはV』対『アタックNo.1』の構図とは、TBS対フジテレビでもあり、講談社 対 集英社でもあったのだ。
今でもバレーボールの熱戦を見るたびに、この2作の主題歌が頭をよぎる方も少なくないのではないだろうか。こうした強い「刷り込み」も、世の中の動きとテレビ作品、そしてその「主題歌」が、今よりもずっと強固に結びついて、私たちの生活の中心にあった時代だったからこそ…… なのかもしれない。
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