2015年09月06日
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2015年09月06日
街を疾走する若者が家のドアを開けるなり、「母さん、辞令だ! 刑事になったよ!」と叫んで始まるドラマを覚えているだろうか。そう、桜木健一主演のテレビドラマ『刑事くん』だ。この番組が始まったのが1971年9月6日。つまり、44年前の今日である。TBS系月曜19時半のいわゆる「ブラザー劇場」枠にて、1976年までに第1シリーズから第4シリーズまで、全167話が放送されている(第4シリーズのみ星正人が主演)。放映期間の長さもさることながら、萩原健一、沢田研二、小柳ルミ子、天地真理、南沙織、郷ひろみ、森昌子、山口百恵、麻丘めぐみ、西城秀樹、岡崎友紀等の豪華なゲスト出演者が物語るように、70年代前半のテレビ文化を集約したような大ヒット番組であった。
青春スター:桜木健一の主演作として、新米刑事:三神鉄男の奮闘ぶりをライトなコメディタッチで描いていた作品……という印象が強いが、その裏には、刑事として殉職した父親の無念を晴らすため、犯人を自らの手で逮捕すべく刑事になった、という硬派なドラマとしての筋が一本通っていた。だからこそ、毎回繰り返される「母さん、刑事になったよ!」の一言が重要な意味を持っていたのである。
この印象的なアヴァンタイトルに続いて流れるのが、主題歌「コンクリート・ジャングル」(作詞:佐々木守、作曲:鈴木邦彦、編曲:高田弘)だ。歌っているのはもちろん桜木健一。この当時、ドラマの主題歌を主演俳優自らが歌う……となると、歌唱力的にはなかなか厳しい例も多々あったわけだが、桜木健一だけは折り紙付きの上手さ。「若年層向けの刑事もの×明るい青春もの」という難しいバランスの番組内容を見事に描いたほのぼのとしたメロディに、細かいコブシを効かせた桜木の演歌風の歌い方が不思議なミスマッチの妙を呼んでいる。『刑事くん』シリーズでは、その他にも、第2シリーズで「刑事くん」、「花をあげよう」、第3シリーズで「星を追う」、「さまよい」等の主題歌・挿入歌を担当するなど、「歌手」としても盤石の信頼度を誇っていた。
そして、桜木健一主演ドラマとして、絶対に忘れてはならない番組がもう一つ。時代を遡って1969年~1971年に放送されていた『柔道一直線』である。あの大スポコンブームの起爆剤となり、このドラマで培われたアクションを基軸に、後に一部のスタッフが『仮面ライダー』(1971)を立ち上げるなど、東映ヒーロー特撮番組の礎ともなるなど、70年代のテレビ界に計り知れない影響を与えた伝説的番組である。
『柔道一直線』は、児童劇団からコツコツと俳優への道を築いてきた桜木が掴んだテレビドラマ主演デビュー作なのだが、そこで既に主題歌「柔道一直線」(作詞:梶原一騎、作曲・編曲:林一)を歌っていたのはご存知のとおり。加えてコミカルな音頭調の「柔道小唄」、フォーク風の「一人ぼっちの海辺」「友情の星」という3曲の挿入歌も任せられていたのが彼の歌の実力のすごいところ。テレビドラマ主演デビュー=主題歌歌手デビューでもあったのだ。その他にも、『太陽の恋人』(1971/NET)主題歌「太陽の恋人」、『熱血猿飛佐助』(1972/TBS)主題歌「熱血猿飛佐助」などの主演ドラマでも、主題歌を担当し、自慢の喉を披露している。
彼に憧れて柔道や刑事を志した方、吉沢京子の視点から彼を応援し続けた方には、ぜひ今一度、あの真っ直ぐにコチラを見つめているかのように伸びてくる熱い歌声に、あの軽やかにコロコロと回るコブシに耳を傾け、「歌手:桜木健一」の腕前を再確認していただきたいものである。
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