2015年10月31日

[不定期連載]僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう!第8回 『元気です。』その3 みうらじゅんによる勝手に全曲解説 B面-1

執筆者:みうらじゅん

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みうらじゅんが勝手によしだたくろうを語る不定期連載「ぼくの髪が肩まで伸びて よしだたくろう!」、アルバム『元気です。』の曲目解説もいよいよB面に入ります。みうらさんがこの曲を聴き、上京したら最初に住むと決めていたという「高円寺」から。



SIDE B

1 高円寺  作詞:吉田拓郎/作曲:吉田拓郎

レコードをB面にひっくり返して、針置いていきなりこのギターの心臓えぐるような音からはじまる「高円寺」に圧倒されます。当時はよく分かりませんでしたが、ギブソンのギターの音でしょうか、たまりませんね、カッコ良過ぎます。これ聴いて以来、この音が出るギターが欲しくて。それに、この曲がかっこ良かったから高円寺という街自体が若い人に人気になったわけです。もう今、それを知っている人、いますか? でもこの歌には高円寺自体の情景は全く入っていなくて、だから普通の歌謡曲のように歌詞から街自体の情景を想像し、住みたいとか、行ってみたいとか思ったのではなく、曲の圧倒的かっこ良さイコール高円寺に憧れてしまったわけです。「第1期高円寺憧れ派」としてはね。有名な寺としては「法隆寺」だけどやっぱりだめ。「♪法隆寺じゃないよね!」ではちょっと違うでしょ(笑)。

当時、中央線沿線は高円寺~阿佐ヶ谷~吉祥寺ってミュージシャンもたくさん住んでいたし、フォークロアな雰囲気を醸し出してる街がたくさんありました。高田渡さんは吉祥寺だったし、友部正人さんは阿佐ヶ谷。そして、たくろうさんは高円寺。ぼくが京都から上京してきたころは高円寺はたいして何もなかったけど、中3の夏に聴いたこの歌だけをたよりに高円寺生活を始めたものでした。この歌を聴いてると、たくろうさんてやっぱモテる人なんだと改めて分かりました。だって声かけて来たのは女の子のほうなんですから(笑)。


2 こっちを向いてくれ  作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎

これって、結婚を伸ばそうって魂胆みえみえの歌じゃないですかね(笑)。全編を通して「言い訳」っぽい歌だけど、もし福山雅治さんとかがこの歌うたったら、全国の女子に総スカンくらうでしょ(笑)。昭和40年代後半の当時新しい結婚観とか、恋愛観を岡本おさみさんが、たくろう流に書き上げ、そこに実は歌詞の内容とは真逆の優しく慈愛に満ちたメロディをたくろうさん本人が付けたって感じがしますね。しかし岡本おさみさんって、泉谷しげるさんの「黒いカバン」も作詞したって聞いた時は驚きました。いやぁ、天才的な職業作詞家だったんですね。


3 まにあうかもしれない  作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎

いきなり出だしがいいですね。どう考えてもたくろうさんの作詞だと思ってた。「♪まにあうかもしれない、今なら♪」のギターコードが(キーがCだと)FからFmに移るところが何とも脳裏に焼き付いて、このコードワークはよく自分の曲に使わせていただきました。この歌では「自由」が多用されているけど、「自由」っ何だろうね。今でもよく考えます。前の曲の「こっちを向いてくれ」のアンサーソングにも聴こえます。「自由」って本当は不安になることなんだけど、あの当時の「自由」って勇気を持つ言葉だったのかも知れないですね。これも作詞は岡本おさみさんだけど、たくろうさんより吉田拓郎的作詞ですよね。かぐや姫の大ヒット曲「神田川」の作詞は北条忠さんという放送作家だった人が作られたものって知ったけど、当時、歌詞は別という、いわゆるシンガー・ソング・ライターから少し逸れた図式がたくろうさんをきっかけに出来始めたんじゃないのかなぁ。


4 リンゴ  作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎

これもギターかっこいいよねぇ。女の子と喫茶店に入っている光景が目に浮かびます。高円寺辺りの喫茶店かな? でも喫茶店でリンゴ食べないか? 名古屋の喫茶店だったら、コーヒーにリンゴなんてミスマッチなもの出るかも知れないけど(笑)。いや、あれっ? この歌は何が言いたいか分からなくなって来た。写実に見せつつ二つの光景がクロスしてる印象派の歌詞なんだ。リンゴをここまでカッコいい曲にしてしまうのは、岡本おさみさんとたくろうさんの完璧な融合があったんだろうね。「リンゴの唄」とは違うし(笑)。とにかく最高のタッグを確信した曲です。

(この項つづく)

写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト

よしだたくろう

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