2017年05月03日
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2017年05月03日
フォー・シーズンズのリード・シンガーとして活躍したフランキー・ヴァリが1967年に放った全米第2位の大ヒット「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」は、ヴァリにとって一世一代の大名唱ともいえる、ドラマティックな傑作バラードだった。
ところが、非常に残念なことに、我が国ではつい最近まで、これがフランキー・ヴァリのヒット曲であることは、一般にあまり知られていなかった。というのも、「君の瞳に恋してる」という曲は、日本ではボーイズ・タウン・ギャングによるディスコ・ヴァージョンのほうが広く知られていたからだ。確かに、82年に出たボーイズ・タウン・ギャングのカヴァー盤は、当時ディスコやラジオでよくかかっていた日本独自の洋楽ヒットであり、つい最近も携帯電話のコマーシャルに使用されるなど、80年代を代表する洋楽曲のひとつとして認知されている。
そのせいか、彼らのレコードがオリジナルだと思っていた人も少なくないようで、筆者自身も、数年前にラジオのアナウンサーが“この曲はボーイズ・タウン・ギャングの曲だと思っていましたが、このフランキー・ヴァリがオリジナルのようですね”と言って「君の瞳に恋してる」をオンエアしていたのを、偶然耳にしたことがある。ちなみに、ボーイズ・タウン・ギャングはサンフランシスコのバンドだが、本国アメリカよりもイギリスや日本のダンス・フロアのウケがよかったようだ。
そんな状況がようやく改善されたのが、2014年に公開された映画『ジャージー・ボーイズ』。このなかでヴァリが「君の瞳に恋してる」を歌う場面があり、日本の洋楽ファンの間にも、彼こそがオリジナル・ヒット歌手である事実が再認識されたのだ。フォー・シーズンズ・ファンのひとりとして、長年のモヤモヤが晴れたような気分だった。やはり映画の影響力は大きい。
この映画でも描かれているように、ニュージャージー州ニューアークに生まれたイタリア系アメリカ人であるフランキー・ヴァリは、十代なかば頃から地元のクラブで歌いはじめ、16歳だった1951年にはニッキーとトミーのデヴィート兄弟、ニック・マッシからなるヴァラエティ・トリオ(The Variety Trio)に加入して、本格的な音楽活動をスタートさせた。その後、ヴァリとトミー・デヴィートは54年にヴァリアトーンズ(The Variatones)を結成。このグループで受けたRCAビクターのオーディションに合格したことで、グループ名をフォー・ラヴァーズ(The Four Lovers)に変更して56年にメジャー・デビューを果たす。そして、このフォー・ラヴァーズこそが、のちのフォー・シーズンズの前身グループとなった。
フォー・ラヴァーズはデビュー・シングルの「ユアー・ジ・アップル・オブ・マイ・アイ」を全米62位に送り込むなど、そこそこの成功を収め、唯一のアルバム『ジョイライド』も発表しているが、それらの作品で聴くことができるヴァリの個性豊かなヴォーカル・スタイルは、すでに完成の域に達しており、のちのフォー・シーズンズ作品の萌芽を十分に感じ取ることができて興味深い。当時としては革新的だったロックンロールのリズムに乗り、まるで黒人グループのようなヴォーカル&ハーモニーを披露したフォー・ラヴァーズの諸作は、56年の白人グループとしては極めて斬新なもので、ホワイト・ドゥーワップ/ブルー・アイド・ソウルの先がけ的なグループとしても評価に値するといえるだろう。
彼らはその後、プロデューサーのボブ・クルーやチャーリー・カレロ、ボブ・ゴーディオらとの出会いもあり、フォー・シーズンズとして飛躍する60年代へと突入してゆくことになるわけだが、常にその中心にいたのは、スター歌手になることを運命づけられていたフランキー・ヴァリだった。
5月3日はそんな彼の誕生日。1934年生まれで、今年83歳になる大ベテランながら、昨年暮れには新作のクリスマス・アルバム『Tis The Seasons』を発表するなど、いまだバリバリの現役であり、その円熟した歌声でフォー・シーズンズ時代からのファンを魅了し続けている。
≪著者略歴≫
木村ユタカ(きむら・ゆたか):音楽ライター。レコード店のバイヤーを経てフリーに。オールディーズ・ポップスを中心に、音楽誌やCDのライナーに寄稿。著書に『ジャパニーズ・シティ・ポップ』『ナイアガラに愛をこめて』『俺たちの1000枚』など。ブログ「木村ユタカのOldies日和」もマイペース更新中。
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