2018年11月22日
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2018年11月22日
国民的アニメとして知られる「サザエさん」の主役、フグ田サザエの誕生日をご存知だろうか? それは11月22日。つまり今日がサザエさんの生まれた日ということになる。原作の漫画が1946年スタートと古いため、1922年生まれという資料から単純計算すると96歳になってしまうが、そこはお約束で永遠の20代。アニメでは24歳、原作では27歳となっている。アニメの設定によると、波平54歳、フネ52歳、マスオ28歳、カツオ11歳、ワカメ9歳と、大人のキャラクターは我々が描いているイメージよりだいぶ若い気がする。すっかりオジサン然としたアナゴさんは同僚のマスオから“アナゴくん”と呼ばれているから、まだ20代!? などという疑問はベストセラーとなった『磯野家の謎』などでさんざん取り上げられてきたことであるけれども。ちなみにアニメ版で一貫してサザエ役を務めている加藤みどりの誕生日は11月15日と、わずか一週間しか違わない。
原作者・長谷川町子の故郷である福岡の地方新聞、『夕刊フクニチ』で四コマ漫画「サザエさん」の連載がスタートしたのは1946年4月22日のことであった。その後、長谷川が一家で東京へ引越すことになり、サザエの結婚をもって一度連載が打ち切られる。1948年、漫画も東京へ舞台を移しての再開後は『新夕刊』『夕刊朝日』を経て、1951年4月16日からの『朝日新聞』の連載は1974年2月21日まで、実に23年間に及んだ。初期から人気を得ていたのは、1948年9月に早くも最初の映画化が成されていることからも推察される。東屋トン子の主演でマキノ映画で作られた『サザエさん 七転八起の巻』は最も古い映像作品。同年には続編の『サザエさん 踊る探偵の巻』、さらに1950年には『サザエさんのど自慢歌合戦』も封切られた。同じ年には、ビクターレコードから、長谷川の師匠である「のらくろ」の作者・田河水泡が作詞したイメージソング「サザエさん」も発売されている。歌は作曲家・服部良一の妹、服部富子。1950年代前半のSP盤では、キングレコードで照菊と若原一郎が歌った「サザエさん音頭」もある。この辺りまでは黎明期。1955年にはニッポン放送のラジオドラマとKRテレビ(現・TBS)のテレビドラマがスタートしていよいよ人気が爆発する。
1956年12月12日に東宝で封切られた『サザエさん』は主演の江利チエミの当たり役となり、1961年公開の『福の神 サザエさん一家』まで、5年間で全10作が製作される人気シリーズとなった。マスオ役に小泉博、波平が藤原釜足でフネが清川虹子、ワカメが当時子役として人気絶頂だった松島トモ子という絶妙なキャスティング。今見ると、ノリ助役が仲代達矢というのが笑える。主題歌は江利チエミとダークダックスが歌ったが音盤化はされず、やはり江利チエミの主演で1965年11月からTBSで始まったドラマ版の主題歌「サザエさん」が、我々が最初に馴染んだ「サザエさん」の歌ということになるだろう。神津善行の作・編曲による軽快なリズム&メロディを江利が朗らかに歌い、シングル盤こそ出されなかったが、江利のアルバムに収録された。キャストはサザエとフネが映画と同じで、波平は森川信、マスオは川崎敬三、ワカメは上原ゆかりが演じて、映画版に勝るとも劣らぬサザエさん一家が再現された。演出陣には鴨下信一氏の名が見える。そしてドラマが終了した1967年9月から2年後の1969年10月、遂にアニメ版『サザエさん』がフジテレビでスタートしたのである。日曜18時半の放送枠は現在に至るまで不動。
アニメの製作は『鉄人28号』『エイトマン』『スーパージェッター』などを手がけてきたエイケン。主題歌のレコードはスポンサー、東芝の子会社であった東芝音楽工業から発売された。学芸部のディレクターだった千野喜資氏と木山昭氏の述懐によれば、当初は由紀さおりに依頼する予定であったというが、「夜明けのスキャット」での再デビューと重なったことで、シャンソン歌手の宇野ゆう子に白羽の矢が立てられ、「サザエさん」が吹き込まれた。声優オールスターによるエンディングテーマ「サザエさん一家」は賑やかな寸劇の中、最初の3ヶ月間カツオ役を務めた大山のぶ代の声も聴ける。同じく筒美京平が作曲した2枚目のシングル「レッツゴー・サザエさん」はサザエ役の加藤みどりが自ら歌う大傑作。予告編音楽のインスト版でお馴染みだろう。カップリングの「カツオくん(星を見上げて)」は、二代目・カツオ役の高橋和枝が歌い、現在でもカツオがフィーチャーされる回にBGMとして使用されることが多い。さらに1975年からは火曜19時からの再放送枠『まんが名作劇場 サザエさん』もスタートし、そのために新たな主題歌が制作される。堀江美都子による「サザエさんのうた」と「あかるいサザエさん」はある世代にはお馴染みなはず。
再放送枠では以降も「ウンミィの歌/天気予報」、「愛しすぎてるサザエさん/サザエさん出発進行」、「ハッピーディ・サザエさん/ひまわりみたいなサザエさん」とレコードが作られた。これらの歌や越部信義による番組の劇伴をまとめたCDアルバム化は、番組のファンやサントラファンの悲願であったが、現行番組でもあることからなかなか叶わないでいたところ、開始時からずっと効果を担当していた柏原満氏の尽力によって、遂に実現することとなった。10年以上前から企画書を提出していたひとりである筆者もその作品集に携わることが出来たのは誠に幸福であった。原作者の意向に沿わなかったという一部の楽曲を除き、主題歌の数々、そしてなにより越部信義と河野士洋による、すっかり耳に馴染んだBGMを出来る限り詰め込んだCDは、既にユニバーサルとなっていたものの、かつての東芝EMIからリリースされて好評を博した。柏原氏が作ったタマの声やタラちゃんの足音も収録されている。主題歌のTVサイズや漏れてしまったBGMやカラオケを補追するための第2弾を期待する声も上がったのは嬉しい限りだが、現状ではここまでとご理解いただければ幸いである。
なお、テレビドラマ版は1980年代以降、いずれも単発のシリーズものとして、星野知子、浅野温子、観月ありさが演じており、星野版では主題歌の「DOMO DOMOコンチェルト/びっくりマークの日々」がシングル発売され、アニメ版と同じ東芝レコード原盤であったことから『サザエさん音楽大全』にも出来れば収録したかったが、諸事情により叶わなかった。初期のイメージソングや映画版の主題歌などと共にいつかはCD化されるべき音源である。その他、舞台でも1994年に榊原郁恵主演、95年に熊谷真実と東ちづるのダブルキャストで上演された、三谷幸喜脚本による音楽劇があり、前者はアルバムが出されていた。何よりテレビアニメの放映が続いている現在、サザエさんの音楽にはまだまだ未来がある。いつの日か真の“音楽大全”が纏められる日が訪れるかもしれない。2019年、アニメ『サザエさん』は放映開始50周年を迎える。
「サザエさん(ニッポン放送連続ラジオドラマ)」宇野ゆう子「サザエさん」加藤みどり「レッツ・ゴー・サザエさん」堀江美都子「サザエさんのうた」「ウンミィの歌」水森亜土・こおろぎ'73「愛しすぎてるサザエさん」松尾香「ハッピーディ・サザエさん」『サザエさん音楽大全』星野知子「サザエさん」「磯野家大いに唄う」ジャケット撮影協力:鈴木啓之
≪著者略歴≫
鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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