2018年02月08日

本日2月8日は『キューティーハニー』の主人公・如月ハニーの誕生日

執筆者:丸芽志悟

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本日はいつもと趣向を変えて、2月8日に誕生したと設定されている超有名キャラクターにまつわる話題を取り上げてみたい。「変わるわよ!」そう、『キューティーハニー』の主人公・如月ハニーである。


昨年(2017年)、漫画制作活動を開始して50周年という記念すべきイヤーを迎えた巨匠・永井豪。代表作『デビルマン』のニュージェネレーションリメイクというべき『DEVILMAN crybaby』が本年早々ネット配信で公開されるなど、盛り上がりはさらに続きそうだが、筆者は永井豪と言われるとまず真っ先に『キューティーハニー』を想起してしまうのだ。もちろん、『デビルマン』にせよ『マジンガーZ』にせよ『ドロロンえん魔くん』にせよ、OPテーマ、EDテーマ其々の音楽的インパクトだけでも人々の記憶に残ることが可能な名作であるのは否定しないが、『ハニー』の場合強烈さの度合いが桁違いなのである。


アニメ作品『キューティーハニー』の放映がNET系列で開始されたのは、1973年(昭和48年)10月13日のこと。関東地区では毎週土曜日の夜20時30分放映開始になり、あのモンスター番組『8時だョ! 全員集合』の真裏にぶつけたことになる。筆者は当時滋賀県在住だった故、『全員集合』の時間帯にこれが放映されていた記憶がないのだが、少なくともあの主題歌が流れてきた途端、親によってチャンネルを変えられたことだけは覚えている。だって、小学生男子に対してあの画はねぇ。親としてはまず見せたくないものじゃないですか。

従来の『魔法使いサリー』『ひみつのアッコちゃん』といった、幼いお子さんに夢を与える魔女っ子アニメ路線と比較すると、さすが『ハレンチ学園』を手がけた永井豪の面目躍如というか、当時の「アクショングラマー歌謡」にも通じるセクシー路線をあからさまに取り入れて、未来のスーパーヒロイン像を作り上げた『ハニー』は、あまりの刺激的さ(あくまでも当時の基準で、ですが)故に夜19時台の放送さえ回避されたという逸話を持つ。ただ、ハニーや峰不二子といったキャラクターが、子供心に大人の女性にしか持ち得ない魔力のかけらを植え付けていったのは確実。それを思うと、この二人を演じた声優の増山江威子は、実に「魔女」そのものだったのだ。


それよりも、音楽の話。OPテーマ「キューティーハニー」があまりにも好きすぎて、当時朝日ソノラマから出ていた4曲入りのテレビまんが主題歌コンピ「パピイシリーズ」の1枚を買ってもらって、繰り返し聴いたことだけは鮮烈に覚えている。残念ながら現物は紛失してしまったが、他の収録曲は「ミラクル少女リミットちゃん」「山ねずみロッキーチャック」「ひみつのアッコちゃん」の3曲で、よく小学生男子が手を出せたなと思う。確かに4曲とも愛着ある曲だが、3番まで空で歌えるほど聴いたのは「ハニー」だけである。


この曲はその後何度か『ハニー』のリメイク/スピンオフ作品が制作された際も、その印象度の高さのおかげで常に新ヴァージョンが作られ、OPテーマに起用されている。最近では、というかもう14年も前になるのだが、OVA(オリジナルビデオアニメ)の為に『エヴァ』の庵野秀明を総監督に迎えて制作された『Re: キューティーハニー』に使用された、倖田來未のヴァージョンが印象に残る。これがきっかけとなり、元祖『ハニー』世代が大量に倖田ワールドに引き寄せられ、ファン層が大きく広がった。

しかし、やはり誰も彼女を超えられない。その彼女とは、元祖「ハニー」を歌った前川陽子である。


63年(12歳の時)、人形劇の名作『ひょっこりひょうたん島』のテーマ曲を歌い、鮮烈にデビュー。その後も『リボンの騎士』のOPテーマや、『魔法使いサリー』のEDテーマ「魔法のマンボ」などアニソンの仕事をこなしつつ、ビクターから歌謡ポップス路線のシングルを2枚(中でも「暗い夕陽」はグルーヴィな歌唱力が発揮される超名曲で、『60sキューティ・ポップ・コレクション FIRST DATE EDIT』に選曲された)発売するなど、着実に歌手としての成長を続けていたが、この「キューティーハニー」でついに「切り札」に出会った。メインキャラクターの魅力すべてを歌だけで表現しきった名唱そのものだ。当時番組を最後まで見ることが許された者だけが聴けたEDテーマ「夜霧のハニー」がまた負けず劣らずの名曲なのである。ムーディに誘惑してみせる夜のアンドロイド。

作曲家・渡辺岳夫と前川陽子のコンビは、翌74年放映開始された『魔女っ子メグちゃん』で再び実現することになる。こちらも絶品。シャランラ! 近年ではこの2曲以上に、72年放映開始されたファンタジーもの『おんぶおばけ』のグルーヴィなテーマ曲の人気が高まっており、7インチシングル盤には最早万単位のプレミアが付けられている。これも昔筆者のターンテーブルに乗りまくってたのに、最早持っていない…(涙)。もちろん、当時学校の給食の時間に必ず流されていた「石鹸で手を洗おう」の歌い手までが「ハニー」を歌ったのと同じ人だったなんて、当時気づくはずもない。そう、基本的に器用な人なのだ、前川陽子は。もちろん現在もバリバリ現役で活動中である。


『ハニー』が現在も進化を続ける萌えカルチャーに及ぼした影響の大きさは計り知れないが、語り始めるとキリがない。そんな中でも、このテーマ曲が放つ永遠の輝きは、最早誰も侵せない聖域に達している。「変わるわよ!」と言われても、メインの顔はずっと変わらないでいてほしい。


≪著者略歴≫

丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月3タイトルが発売された初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。

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