2018年11月21日

42年前の本日、キャンディーズの「哀愁のシンフォニー」がリリース

執筆者:寺田正典

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本日11月21日は、キャンディーズの「哀愁のシンフォニー」(作詞なかにし礼/作曲三木たかし)がシングル・リリースされた日。それは42年前の76年のこと。彼女たちは73年デビューなので活動も半ばを過ぎた頃で、この曲は12枚目のシングルだった。ランをセンターにした「年下の男の子」以来、「ハートのエースが出てこない」「春一番」と元気いいナンバーが続いていたこともあり、後から考えると、後の「キャンディーズ大人化計画」(2016年03月01日付のこのコラム参照)の序章ともなっていたかもしれないしっとり系の名曲である。


そんなしっとりムードをまず醸し出していたのがタイトルに使われた「哀愁」という言葉。時期を考えると76年に日本でだけシングル・カットされて大ヒットしたサンタナの「哀愁のヨーロッパ」(オリジナルタイトルは「Europa」)の余韻を意識してつけられたタイトルではなかったかと思うが、アイドル・ソングとしては、それに以前にも南沙織に「哀愁のページ」(72年)、郷ひろみに「よろしく哀愁」(74年)という先行例がある。これら4曲すべてがCBS・ソニーから送り出された曲だったというのも興味深いが、いずれもウェットな日本的情緒を強く感じさせる言葉の選択が曲のイメージ付けに成功していたように思う。



「哀愁のシンフォニー」の歌い出しで目立つのが、3人による「ダバダ、ダバダ~」というスキャット。シャンソンにも造詣が深い作詞家のなかにし礼ならではのフレーズにも思えるが、実際はあるヒントを手がかりにキャンディーズの方で考えたものだったという(ボックスセット『キャンディーズ・タイムカプセル』付属のブックレット内の松﨑澄夫インタヴューによる)。これがどれだけ大人っぽく聴こえたか?ということを検証するには、70年代当時、同様のスキャットが日本でどう認識されていたか、ということも思い出す必要がある。あの頃知られていた「ダバダ~」スキャットの代表例と言えば、70年代を通して日本中で親しまれていたはずのネスカフェ・ゴールドブレンドのTV-CMソング「目覚め」と、65年にスタートした深夜番組『11PM』のテーマ曲であろう。どちらも、少なくともキャンディーズの現役時代に使われていたのは伊集加代子が歌っていたヴァージョンだったというのもこれまた興味深いが、メインのファン層であっただろう高校生~大学生たちにとって、それらが強烈に「大人」のムードを意識させるキー・フレーズであっただろうことは容易に想像できる。さらにマニアックなことを言えば、タイトルの「哀愁」とこのスキャットは共に、後に発見されたこの曲のプロトタイプ「霧のわかれ」にはない要素であり、「霧のわかれ」から「哀愁のシンフォニー」への改変の際にどのような議論があったかもいろいろ推測してみたくなる。


そんな大人のムードで始まる曲には、振り付けにもうひとつの大きな特徴があった。サビの「こっちを向いて」という部分で3人がそれぞれ右手を差し出すのだが、これがファンが紙テープを投げる際の格好の的になったのだ。それ故、彼女たちのコンサートにおいては、この曲のその部分では、3色の紙テープが最も激しく乱舞することになった。


ところで、ファンがステージのアーティストに向かって紙テープを投げ始めたのは、50年代末の日劇ウェスタンカーニバルだった、という話を以前書いたことがあるが(2016年01月14日付のこのコラム)、そうした紙テープ投げのルーツである船の出港時に使われる「別れの紙テープ」のオリジンについて最近知ることができたので紹介しておきたい。


神戸商船大学教授(当時)杉浦昭典氏の74年の著作によると、時は1915年。サンフランシスコで開催された万国博覧会に日本の会社が商品を縛るための紙テープを出品したがほとんど売れなかった。それに目をつけた現地で近江屋商店というデパートを経営する日本人移民、森野庄吉が安く買い取り、船の出港の際に投げて≪「送る人と、送られる人の、最後まで別れを惜しむ握手」の代わりにということで、宣伝して売り出した≫のが始まりで、この日本人発の習慣が世界に広がったものだったというのだ。〔『【デジタル復刻版】海の慣習と伝説』舵社2016年/原著は1974年の朝日新聞社刊)〕


「哀愁のシンフォニー」がリリースされてから約1年半後の78年4月4日の後楽園球場で、紙テープはまさにキャンディーズの3人との「別れを惜しむ握手」として多くのファンからステージに向けて投げられることになる。

キャンディーズ「哀愁のシンフォニー」南沙織「哀愁のページ」郷ひろみ「よろしく哀愁」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト

ソニーミュージック キャンディーズ公式サイトはこちら>

ソニーミュージックOTONANO『キャンディーズ メモリーズ FOR FREEDOM』スペシャルページはこちら>



≪著者略歴≫

寺田正典(てらだ・まさのり):兼業系音楽ライター。1962年生まれ。『ミュージック・マガジン』編集部、『レコード・コレクターズ』編集部~同編集長を経て、現在は福岡県在住。著書は『ザ・ローリング・ストーンズ・ライナー・ノーツ』(ミュージック・マガジン刊/2014年)。

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