2015年09月14日
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2015年09月14日
本日、9月14日は矢沢永吉の誕生日である。
矢沢の1stアルバム『I LOVE YOU,OK』がリリースされたのは今からちょうど40年前、1975年9月21日のことだった。ステージセットが炎に包まれるドラマティックな幕切れとなったキャロルの日比谷野外音楽堂でのラストライブが行われたのが1975年4月13日。その約5か月後にソロアルバム発表という急展開は解散の余韻に浸ったり、虚脱感に陥ったりすることなく、新たな道を突き進んでいこうとする矢沢の強い意志があったからこそ、可能になった。
矢沢はキャロル解散前からデモテープの制作に着手し、ソロアルバムの準備を進めていた。解散直後の5月に渡米し、ロサンゼルスのA&Mスタジオでアルバムのレコーディング作業をスタートしている。プロデュースを担当したのは『ゴッドファーザー』の映画音楽などで知られるトム・マック。随所にストリングスやホーンを配置した壮大な広がりを備えたサウンドはシンプルなロックンロールを軸としたキャロルとは一線を画すものとなった。「夏のフォトグラフ」「安物の時計」「アイ・ラヴ・ユー,OK」など、バラードが目立つのも特徴のひとつ。ベースギターを弾かず、シンガーに徹していることからは矢沢のソロシンガーとしての覚悟が伝わってくる。
つい先日、9月5日の東京ドーム公演でこの1stアルバムから「安物の時計」と「恋の列車はリバプール発」が演奏されていることからもわかるように、『I LOVE YOU,OK』には今も色褪せていない名曲が並んでいる。作曲は全曲矢沢が手がけていて、メロディーメーカーとしての才能は初期の頃から突出していた。アルバムタイトル曲でもある「アイ・ラヴ・ユー,OK」は矢沢がキャロルを結成する前、18才のころに作った曲だ。当時は英詩が付けられていたのだが、ソロ作品制作にあたって、矢沢の盟友でもある相沢行夫によって新たに日本語の歌詞が付けられた。相沢以外にこのアルバムで作詞を担当したのは西岡恭蔵と松本隆。キャロルとは対極の存在だったザ・ディラン、はっぴいえんどといったURC~ベルウッド系出身者を起用するところにも矢沢の先進性が表れている。自分とは異質なものに触れたい、未知の世界を知りたいという好奇心が矢沢の活動の根底にあるようだ。
現在は初期の名盤という評価が確立しているが、当時、この1stアルバムはキャロルのファンから「軟弱になった」「矢沢は死んだ」など、非難の声が噴出する問題作となった。だが過去の楽曲をなぞっていくような予定調和的な作品を良しとしない姿勢は軟弱の正反対だろう。当時の矢沢の選択が正しかったのかどうかはその後の歴史が証明している。矢沢は2nd、3rdで足場を固め、78年発表の4thアルバム『ゴールドラッシュ』で頂点に立っていく。
ちなみに『I LOVE YOU,OK』のジャケットが撮影されたのは渋谷センター街のゲームセンター前。野望に燃え、ギラギラしたまなざしの25才の矢沢は魅力的だが、穏やかさの奥に強靱さを秘めた66才の現在の矢沢はさらに魅力だ。自著伝『成りあがり』のタイトルにある“あがり”は現在の矢沢には存在しない。「サブウェイ特急」で“ヤミに向かって突っ走るさ どこまでも”と歌われたフレーズは40年たった今も有効だ。
写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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