2016年11月04日

1977年の上田正樹 ローリング・ココナツ・レビュー・ジャパン、そして「ハーダー・ゼイ・カム」

執筆者:川村恭子

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「1977年11月4日の上田正樹武道館ライブを見ていませんか?」と編集部から尋ねられた時に、どきり、とした。資料として残っているソロツアーの日程に入っているのだ、という。おもしろいな、と思う。というのも、確かに77年の11月、上田正樹の初のソロ全国ツアーは予定されていた。初日は12日のはずだったが、このツアーは全部キャンセルになった幻のものなのだ。もしかすると先んじて4日に何かイベントに参加したのかもしれない。覚えていないだけか。そう思って、上田正樹本人と当時の関係者の多くに聞いてみたのだが、残念ながら誰も覚えていなかった。


77年というと、記憶に残っているのは4月10日、晴海の国際貿易センターでのローリング・ココナツ・レビュー・ジャパンのステージだ。この晴海のコンサートは4月8日から3日間にわたって行われ、ジャクソン・ブラウン、ジョン・セバスチャン、カントリー・ジョー・マクドナルド、ウォーレン・ジヴォン、J・Dサウザー、STUFFといった錚々たる海外アーティストと、細野晴臣、久保田麻琴と夕焼け楽団、憂歌団、CHAR、泉谷しげる、小坂忠といった日本人ミュージシャンとが一同に会した先駆的であり画期的なものであった。

「晴海のコンサートはミュージシャンにとっては純粋に音楽的で、音楽の交流ができて、とてもいいコンサートやった」と上田正樹も言う。


まだPUSH&PULLではなく、流動的なメンバーとともに行われていたいくつかの彼のステージの1つで、記憶がさだかではないのだが、バンド名は上田正樹とニューグループ。ギターに故・塩次伸二がいたような気がする。サウス時代から続いている熱狂と、本来の上田正樹が持っていた静謐さとの絶妙なバランス(そのクワイエット・ヒップとも言えるような感触はPUSH&PULLへと昇華されていくのだが)が、新しい上田正樹を予感させたものだった。


「STUFFのゴードン・エドワーズとホテルの部屋で飲むことになって。その時に『こんな曲作った』って聴かされたのが『Love of mind』やった。歌ってくれた」(上田・談)


実にこれをきっかけに上田正樹は77年にSTUFFのバッキングで「ハーダー・ゼイ・カム」の日本語バージョンと、佐藤博の楽曲「鉄格子より愛をこめて」を目黒のポリドールスタジオでレコーディングすることとなる。編曲は星勝、スタジオでのミュージシャンコンダクトは佐藤博。クリストファー・パーカーと4月には来日しなかったスティーブ・ガッドとのツインドラムとなっている。


この2曲は紆余曲折があり、80年にようやく陽の目を見る。上田正樹のウィキペディアを見るとアルバムの項に「THE SESSION」と表記されているが、これがその盤で、実際はアルバムではなくKitty Recordの45回転の30cmシングルシリーズの1枚(他に高中正義、H2O、cariocaなどがあった)のA面として収録されている。B面はツトム・ヤマシタ(流ユウ名義での編曲)とのセッションであった。


現在、ゴールデンベストにこのB面2曲と「鉄格子より愛をこめて」は収録されているが、STUFF版の「ハーダー・ゼイ・カム」は聴くことができない。「鉄格子から愛をこめて」に片鱗がうかがえるが、好セッションなだけにとても残念である。


(敬称略、執筆にあたり榊法郎さん、安室克也さん、宗像和夫さん、藤井淳さんにご協力いただきました。ありがとうございました)

special thanks for:Norio Sakaki,Katuya Yasumuro,Kazuo Munakata,Jun Fujii

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