2017年03月31日

本日3月31日は「ロマンポルノ界の聖子ちゃん」寺島まゆみの誕生日

執筆者:森直美

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スタジオ・オーディションで、モニターから聴こえてきた、凛としたその声を聴いた瞬間、「やるっきゃないでしょう!」と思いました。

それが、「ロマンポルノの聖子ちゃん」と、注目を浴びていた寺島まゆみ(20歳)との出会いです。1981年の事でした。そして本日3月31日は彼女の誕生日となります。


暗く寡黙で、目力の強さだけが印象に残る、小柄な少女の何処からこんな艶っぽく伸びやかで、かつ情念を隠し持った声が出るのか、しかも歌い手ではない女優が!と、新鮮な驚きを感じたものです。後日、本人の弁によれば、当日歌った「いい日旅立ち」に、あーだのこーだのと細かく注文を付けられたとのこと。


基本的にオーディションで注文を付けたりしない私が、その様な注文をしたとすれば、かなり入れ込んでいたという証拠でしょう。そのオーディションの結果、その年の10月に、アルバム・シングル同時発売で、デビューが決定。


彼女の声の魅力ををより引き立たせるために、アレンジを瀬尾一三(瀬尾ちゃん)に頼みました。注文したことは、「女の子用の編曲はしないで」ということだけ。瀬尾ちゃんのハードなオケに、彼女がどれだけ食い下がれるか、そのバトルから引き出される彼女の歌心を期待していたのです。


歌とオケのイメージを掴む為に、オケどりには強制的に毎回参加してもらいました。当然、楽曲は覚えてきてもらいます。


その時の件で、まゆみちゃんに、こんな事を言われました。

「ある時、私が、<イエスマン>という曲を覚えてこなかったら、森さんにすごい剣幕で、と怒られました!すぐに覚えてきなさい!!って」

そんなことあったっけ…?と訝る私に、

「だから私、頑張って10分で覚えました!」とまゆみちゃん。そうなのです、これが彼女の真骨頂なのです。どんな難題にも、食らいついて押さえ込む、それが寺島まゆみなのです。


音楽活動中、アルバムを4枚出しましたが、殆どの作家(林哲司、杉本真人、中崎英也等々)の方々が、楽しんで曲を提供してくれました。只一人を除いて。

その女性作詞家(名前を書けないのが悔しい)は、「え~ポルノ女優、私には相応しくないわね!!」と一言。当時はまだまだあったんです、偏見が。


他方、彼女の声、世界観全てを含め、生かしてくれそうな作曲家、宇崎竜童さんに書いてもらうことは二人の悲願(大げさじゃなく)でした。

宇崎さんのカバー曲(「身も心も」、「寝た子を起こす子守歌」)は歌っていましたが、書き下ろしではありませんでした。どーしても、宇崎さんの曲が歌いたい!歌わせたい!!


しかし当時は、大多忙な宇崎さん、事務所に依頼するも、事態は動かず。業を煮やした私は、一計を彼女に提案。「これから先、取材を受ける度に、宇崎さん、私に曲を書いて下さい!と、ラブコールしましょう。」

そのアイデアは功を奏し、程なく「寺島まゆみ、宇崎竜童が欲しい!!」という見出しが、あるスポーツ新聞の一面にデカデカと掲載され、間髪入れず、宇崎さん、彼女のライブ会場に来てくれました。

そして書き下ろしてくれた曲が「frozen」という名曲です。この曲は宇崎さんのセルフカバーアルバムで、宇崎さん自身も歌ってくれています。


寺島まゆみという歌い手と4枚のアルバムで仕事をしましたが、今以てその歌声の魅力は私の記憶から離れません。

最後に、オケ録り時の暗く寡黙な姿は、退屈だったからじゃないかと聞いたら。「え~!毎回楽しみで、ルンルン、スタジオに行ってましたぁ~!」と返ってきました。


そんなまゆみちゃん、今日で幾つになったのか、数える気はありません。何故なら、私にとって彼女は、今以てレコーディング時の寺島まゆみだからです。


≪著者略歴≫

森直美(もり・なおみ):元キングレコード洋楽部で、バークレーレーベルを担当。その後、キング、テイチクで邦楽ディレクターを経て、現在占い師。

寺島まゆみ ゴールデン☆ベスト 寺島まゆみ

恋愛硬派[EPレコード 7inch] 寺島まゆみ

寝た子を起こす子守唄[EPレコード 7inch] 寺島まゆみ

Frozen[EPレコード 7inch] 寺島まゆみ

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