2018年02月14日

1991年(平成3年)2月14日、Mi-Keのデビュー曲「想い出の九十九里浜」がリリース~“カタログ・ソング”と言われる所以とは?

執筆者:丸芽志悟

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1991年(平成3年)の本日2月14日は、Mi-Keのデビュー曲「想い出の九十九里浜」の発売日。


超長寿アニメ「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマとして使われ、突然変異的大ヒットを記録、1990年度日本レコード大賞を受賞した「おどるポンポコリン」を提げ、大衆音楽界を席巻したB.B.クイーンズ。フロントを務める近藤房之助、坪倉唯子ら、従来は玄人受けする音楽活動を地道に行っていたメンバー達に花を添えていたのが、宇徳敬子、村上遥、渡辺真美という、モデル業を中心に芸能活動を行っていた三人娘だ。


この3人による単独ユニットとして始動したのがMi-Keである。企画当初の正式なアーティスト・クレジットは "B.B.クイーンズ・シスターズよ! Mi-Ke” とされていた。命名そのものは、こちらも前年異色バンドとして音楽界に衝撃を与えた "たま" をもじったものとなっており、スタッフの遊び心は曲作りにも多大に反映されていた(なお、後にはさらなるパロディとして “ポチ” も登場したりしている)。GSのパブリック・イメージを反映させたエレキサウンド(奇しくも『カルトGSコレクション』の発売でGSの「別世界」が見直されるのは、この曲がヒットした翌年のことだ)、哀愁のメロディもさることながら、歌詞の中に13曲にも及ぶGSの楽曲のタイトルが散りばめられているのだ。それらのノスタルジアを、湘南と好対照な九十九里浜という地名に落としてしまうところが、いかにもさくらももこ直系なアイロニーの為せる技である。

「ポンポコリン」大ヒットの余波に乗り、オリコン5位に達する快調なヒットを記録し、その年の紅白歌合戦でも歌われた。また、ものまね女性デュオ、しじみとさざえ(“さざえ” はあのしのづかまゆみ)によるカヴァー盤が3ヶ月後に出るなど、ネタ楽曲としての影響力も計り知れず。何と言っても同じ1991年、ZARDをデビューさせたことで音楽界での爆進を大きく加速したビーイングの発火地点として、避けて通れない一曲だ。


Mi-Keの話はこのくらいにして、今回のコラムの隠しテーマは「カタログ・ソング」。歌詞の中に、他の音楽作品や映画のタイトル、車や煙草などの銘柄や地名・駅名が羅列されている曲を、筆者はこうカテゴライズすることにしている。年始早々書いたわらべのコラムで、歌詞に映画のタイトルが大量に登場する倉沢淳美のセカンドシングル「ある愛の詩」に触れたが、今回は「想い出の九十九里浜」を筆頭とする、曲名をカタログ化した歌に焦点を絞ってみたい。


そもそも、世界ポップス史を紐解いてみると、60年代初期周辺にこの手の作品がいくつか生まれているのが興味深い。最も印象的なのは、ニール・セダカ「恋の片道切符」(59年)だろう。日本ではA面曲「おお! キャロル」を遥かに凌ぐヒット曲となったこの曲の歌詞には、エヴァリー・ブラザーズ「バイ・バイ・ラヴ」、エルヴィス「ハートブレイク・ホテル」など、当時のロック〜ポップスのヒット曲のタイトルがずらりと登場する。ラヴァーン・ベイカー「アイ・クライド・ア・ティアー」なんて渋いところも。メロディ的にも、「九十九里浜」と違和感なく繋がる感もあり、長戸大幸氏は確実にこの曲を意識していたはず。


68年にはこの曲のアップデート版とでも言うべき、「ソング・ソング」なる曲を1910フルーツガム・カンパニーが発表している。ポップス・ファンには楽しめること間違い無しの一曲だ。

この手の曲の究極といえば、74年にビルボード最高第8位を記録したリユニオン「ロックは恋人」。先の1910フルーツガムにも関わったジョーイ・レヴィンを中心とするスタジオユニットで、聴いてびっくり、3分弱の演奏時間の間に、20年に渡る当時までのロック史を彩った曲名、アーティスト名、各種会社名などが機関銃のように歌い放たれる。続いて、この曲のソウル&ディスコ編と言うべき「ディスコ天国」、懐かしのテレビドラマのタイトルを散りばめた "They Don't Make 'Em Like That Anymore" をリリースしたが、柳の下にドジョウは3匹いなかった。

もう一つ、同系統の曲で外せないのが、同じようにセッション・シンガーとして数々のヒットを持つトニー・バロウズが組んだスタジオユニット、ファースト・クラスが77年に発表した "Too Many Golden Oldies" で、フェイドアウト部分で数々のヒット曲のタイトルが、フラッシュバックのように登場する。


一組のアーティストの曲名にコミットしたもので有名なのは、英国のプログレバンド、バークレイ・ジェームズ・ハーヴェストが75年にリリースした「ビートルズよ永遠に」。原題はそのものズバリ "Titles" で、数々のビートルズ・ナンバーのタイトルが引用されたメランコリックな曲だ。しかし、極め付けと言えばその3年前、72年にリリースされた、大瀧詠一のファースト・ソロ・アルバムの最終曲「いかすぜ! この恋」だろう。歌詞の全ての言葉が、エルヴィス・プレスリーの曲名、しかもその邦題という凝りようである。エルヴィスが亡くなった翌年には、追悼の意を込めリメイク・ヴァージョン「烏賊酢是! 此乃鯉」が発表されている。


そして、「想い出の九十九里浜」の大ヒットで味をしめたMi-Keは、その後のシングルでも様々な「古き良き音楽」のエッセンスを取り入れた「カタログ・ソング」に取り組むことになる。特に筆者の涙腺を緩ませたのが5枚目のシングル「白い2白いサンゴ礁」(91年)だ。歌詞の全てが67年〜80年に残されたフォーク〜ニューミュージックの曲名から採られているのだ。えっ、「白いサンゴ礁」(ズー・ニー・ヴー)はGSでしょって? でも九十九里浜に佇んでちゃさまにならない。むしろ、「なごり雪」と並んでいる方が逆説的に面白いのだ。今時はすっかり忘れられてしまった感もある、音楽で遊ぶことの喜びを教えてくれた貴重なユニット、それがMi-Keだったのである。




「想い出の九十九里浜」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

≪著者略歴≫

丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月3タイトルが発売された初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。

Mi-Ke Golden Hits~20th Anniversary~(DVD付) CD+DVD Mi-Ke

BEST OF BEST 1000 Mi-Ke Mi-Ke

BEST OF BEST 1000 B.B.クィーンズ B.B.QUEENS

想い出のG.S九十九里浜 Mi-Ke

白い2白いサンゴ礁 Mi-Ke

恋の片道切符 [EPレコード 7inch] ニール・セダカ

Too Many Golden Oldies First Class

烏賊酢是!此乃鯉 Each Ohtaki

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