2015年06月07日
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2015年06月07日
梅雨の季節である。となると出番は「雨」を題材にした歌だろう。試しに歌詞検索サイトをみてみると、そういう歌は五万とあることが分る。なんでこんなにあるのだろう。でも考えてみたら、日本語って雨を表わす語彙が豊富だし、それもあるのかもしれない。
もちろん名曲は数多い。1969年にリリ-スされた和田アキ子のセカンド・シングルにして出世作の「どしゃぶりの雨のなかで」は、R&B調の演奏と和田のスケ-ルの大きな歌唱がマッチして、胸に迫る感動を呼ぶ。でもそもそもこの歌、タイトルからして歌の主人公はのっぴきならない状況に陥っていることが分る。失恋の痛手を負いどしゃぶりの雨のなか、立ち尽くす。泣く。そして叫ぶ。この場合、雨は涙を隠してくれるという意味では主人公の友達でもある。ここまでダイナミックじゃないが、森高千里の90年のヒット曲「雨」も、涙を隠してくれる、ということでは共通する。ただ森高の場合は極度の土砂降りでは困る。涙を隠す雨量は求められる。でも歌詞はこうだ。“雨は冷たいけど ぬれていたいの”。この場合、心の整理の一助としての雨を欲している。風邪を引いてしまうほどのものは無用なのだ。
あくまで僕の感覚だが、和田アキ子よりさらに雨量が多いと思われるのが、八神純子の「みずいろの雨」である。78年の秋のヒット曲。もちろん雨は水分で出来てるんだから、いつでも“みずいろ”といえば“みずいろ”だけど、細かい雨は白く見えたり、暗い空から降るなら、雨もそんな色に見えたりもする。では、この歌のように雨が“みずいろ”の時というのはどういう時だろうか? これはかなり大粒の雨が周囲の光線をレンズのように内包しつつ多量に落ちてくる状況なのではなかろうか。改めて歌を聴いてみると、そのことがよく分かる。作詞の三浦徳子さんのこの常套句を越えた表現、でも使っている言葉自体は平易という、そのあたりがすばらしい。「どしゃぶりの雨のなかで」の雨はそれより槍っぽいというか、激しく刺さるように落ちてくるイメ-ジがある。
さらに次は雨粒を小さくして、霧雨に関する歌を。ユ-ミンの「霧雨で見えない」はどうだろうか。でもこの歌は、正確に言うと霧雨で見えないわけではなくて、“♪霧雨の水銀灯”によって“見えない”のだ。ふとその場所に降り立った主人公。探していたのは過去の自分…。水銀灯の仄かな灯りに霧雨が降り注ぐ。雨は、水銀灯に照らされ紗幕のように過去と今とを遮っている。そして、それは人生を映すスクリ-ンのようでもある。自分を追い越す後続のヘッドライトは、サ-チライトのよう。でももはやそこには、ヒロインもヒ-ロ-も居ない。
しばらくここで歌の余韻を味わいたい気分。そしてシメに、とてつもなくスケ-ルが大きな雨の登場する歌を。それは中島みゆきの「昔から雨が降ってくる」。2007年にリリ-スされた「一期一会」というシングルのカップリングだが、そもそもは『世界ウルルン滞在記`ルネサンス`』のエンディング・テ-マとして書かれた作品だ。なのでさきほどのスケ-ルの大きさというのは、番組に合わせたからでもあるんだろうが、この歌はつまり、地球には水があったからこそ命が誕生した、という歌なのだ。太古の昔へと想いを馳せている。この歌の横に相合い傘でほっこりしてる男女の雨の歌とかを並べると、“なんかちっちぇな~、みゆき様の「昔から雨が降ってくる」と較べると…”、なんてことにもなるかも。
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