2015年08月27日
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2015年08月27日
今日、8月27日は「男はつらいよの日」である。「そんな日があったの?」って思ったけど、1969年のこの日、山田洋次監督、渥美清主演のシリーズ第1作が公開されたということで、それにちなんでのものらしい。
そして寅さんといえば、思い浮かぶのは旅…。ともかくこの人、柴又を出て行っては舞い戻り、再び出て行くことを繰り返し、そこに人情味溢れる様々なドラマが生まれたわけだ。でも…、寅さんの旅の目的はなんだったのだろう。“私 生まれも育ちも…”の口上で始まる、あのお馴染みの『男はつらいよ』の主題歌の4番に、こんなフレ-ズがある。“あても無いのに あるよな素振り”。 ここでふと考える。そして旅には、二種類あることに気がつく。目指す場所がある旅と、当て所もない旅だ。そして旅の歌にも同様に、この二種類があるわけだ。秋の本格的な旅行シ-ズンを前に、今回はそのあたりについて書いてみることにする。
まずは目的地のある方から。僕が子供の頃に好きになった作品に、「京都から博多まで」という、藤圭子のヒット曲がある。1972年1月のリリ-スだ。なぜこの歌が好きなのかというと、まさに歌のタイトルそのままの、“京都から博多まで”という距離感を、とても印象深く疑似体験出来たからである。関東の人間である僕にとって、こちらから出掛けていく魅力的な街である京都が、“起点”となっていたのも興味深かった。「あんな素敵なところに居るのに、なぜ博多にまで出掛けていくんだろう?」。子供ながらにそう思ったのだ。
いや理由もなにも歌の主人公は切迫した状況だったのだ。恋しい人のことを想うと、居ても立っても居られない。会いたい。だから“あなたを追って”(歌詞より)、列車に乗ったのである。その際、“♪きょおとかぁぁらぁぁ~ はぁかたまぁぁでぇぇ~”と、藤圭子はこの部分を伸ばしぎみに歌っていた。まさに伝わるのは距離感だ。まだ新幹線のない、在来線でえっちら行かないといけない時代だったし、果たして博多まで、何時間掛かったのだろうか。
作詞は阿久悠。作曲は猪俣公章。その後、「北の宿から」とか「津軽海峡・冬景色」などの大スタンダ-ドを残す阿久にとって、実はこれが初の演歌作品だった。その際、従来の演歌の書き方は自分には出来ないし、もし自分らしく書くとしたらと考える。そこで、A地点からB地点へと移動する物語を思いついたという(参考文献 阿久悠著『歌謡曲の時代 歌もよう人もよう』新潮社)。
この歌のあと、藤圭子は「私は京都へ帰ります」という歌も出している。74年7月のリリ-スなので、主人公は2年半、博多で暮したことになる。ただ、この旅は決してハッピ-・エンドではなかった。既に「京都から博多まで」の段階で、出掛けていったけど愛しい人とはなかなか再会できない事実が描かれている。その後、もしかして博多でよりを戻せたのかもしれないけど、結局はこの恋が“死んで”しまった故に「私は京都へ帰ります」という決心をしたわけだ。
ディスティネ-ションのある旅の次は、当て所もない旅の歌を。こうしたテ-マは演歌よりフォ-クのほうが得意なようだ。これらの歌にはヒッピ-・ム-ブメントからの影響があり、物質文明的な社会からのドロップアウトを果たそうとする思想があるからだろう。その代表的なものとして、まず思い浮かんだのが岡林信康の「俺らいちぬけた」。まずはワン・コ-ラス目。田舎の狭い人間関係に辟易とした主人公が、“いちぬけた”と町を目指すエピソ-ドが綴られている。そしてツ-・コ-ラス目。町へやってきた主人公。しかしコンクリ-トに囲まれた都会の暮らしに馴染めず、ここも出て行く。
ポイントとなるのはスリ-・コ-ラス目である。田舎を離れ、今度は町を離れようという主人公に、果たして行き場はあるのだろうか。でも彼は、“花や鳥のなかに 俺をみたんだ”と、そう悟のだ(このフレ-ズからは、ワ-ズワ-スあたりを彷彿させる)。結局、主人公が目指したのは田舎でも町でもなく自然に還る旅だった。かつてルソ-が唱えた、あの有名な言葉のように…。
「俺らいちぬけた」と似た傾向のもの(?)に、かまやつひろしの「どうにかなるさ」がある。詞は山上路夫であり曲はかまやつ本人だ。カントリ-・ミュ-ジックに根ざした彼の艶やかな歌声が、旅情をかきたてる名曲である。歌の主人公は“あり金”をはたいて切符を買い、夜汽車に乗って何処か目指す。無計画な旅プランだが慌てる様子はない。なぜなら彼には、“どうにかなるさ”という、根拠はないけど確かな自信があるからだ。自分も一度でいいからこんな旅に出掛けてみたいものである。
『京都から博多まで』『私は京都へ帰ります』 写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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