2015年12月24日

ひばり・チエミ・いづみの三人娘から始まるジャパニーズ・クリスマス・ソングの歴史

執筆者:志賀邦洋

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大正時代や戦前にも日本人によるクリスマス関連のレコードは出ているが、所謂流行歌手によるクリスマス・レコードの動きが活発になってきたのは、1950年代に入ってから。それがよく表れているのが三人娘(ひばり・チエミ・いづみ)の動きだ。


'52年に江利チエミが「サイレント・ナイト/ジングル・ベル」を出し、美空ひばりは両面オリジナルのクリスマス・ソング「びっこの七面鳥/ひとりぽっちのクリスマス」を出す(この「びっこの七面鳥」は、自主規制のために未CD化のままという残念な状況が続いている)。'53年には、ひばりが「ジングル・ベル」を出し(B面はやはりオリジナルの「クリスマス・ワルツ」)、チエミは「ジングル・ベル/ホワイト・クリスマス」(A面は再録音)を、そして雪村いづみも「ジングル・ベル」(B面はナンシー梅木「ホーリー・ナイト」)を、更にいづみは'55年に、マンボアレンジでの「ジングル・ベル・マンボ」(B面はフランク永井「グッド・ナイト・スイート・ハート」)を出す、といった具合で、三人娘が数年の間にそれぞれ2枚以上のクリスマス・シングルを出し、オリジナルのクリスマス・ソングや流行のリズムアレンジでのカヴァーなどの試みも行われている。


1950年代中頃には、日本の一般家庭でもクリスマスを祝うことが定着したと言われているが、確かにその説を裏付けるかのように、'55年以降になると、小坂一也、山下敬二郎、平尾昌章、丸山明宏、浜村美智子、ダーク・ダックス、フランク永井、マヒナ・スターズらのクリスマス・レコードが続く。60年代には、水原弘、森山加代子、坂本九、弘田三枝子、田代みどり、梅木マリ、後藤久美子、飯田久彦、藤木孝、ザ・ピーナッツ、中尾ミエ、伊東ゆかりなどのカヴァーポップス勢、そして舟木一夫、西郷輝彦、橋幸夫(企業用の販促フォノシートでの録音が残っている)、美樹克彦、由美かおる、布施明、奥村チヨ、小畑ミキ、山本リンダ、エミー・ジャクソンなどの歌謡/ポップス勢、石原裕次郎、吉永小百合、加山雄三といった俳優勢、ウルトラマンやオバQなどのTV・アニメ系、60年代半ばからのエレキ・インスト~GS系と、もう名前を挙げきれないが、まさに百花繚乱。


60年代におけるオリジナル・クリスマス・ソングとしては、まず'61年に江利チエミが、デルタ・リズム・ボーイズのカール・ジョーンズが書き下ろした「聖なる神の子」(訳詞音羽たかし)をクリスマス・アルバムに収録。'66年に加山雄三が出したシングル「ジングル・ベル」のB面は、チップマンクスばりのテープギミックを取り入れた自作曲「ぼくのクリスマス」で、同年に出た4曲入りEPには、もう1つの自作曲「クリスマス・イヴ」(もちろん山下達郎のとは違う)が収録された。GS関連では、ジャッキー吉川とブルー・コメッツが'67年に出した、全曲オリジナルの5曲入りEP『バラのクリスマス』と、'69年にザ・タイガースのファンクラブ向けに頒布された、フォノシート『あなたとタイガースのクリスマス』収録の「あわて者のサンタ」がよく知られている。


こうした50~60年代の人気歌手・グループによるクリスマス・レコードは、シングル盤やEPこそ結構な数が出ているが、ことアルバムとなるとあまり多くない。単独アーティストだと、インストもの以外では'58年と'62年のダーク・ダックス、'58年の和田弘とマヒナ・スターズ、'61年の江利チエミ、'66年の石原裕次郎ぐらい。オムニバス盤では、'63年のナベプロ総動員盤、『たのしい たのしいクリスマス』の人気が高く、他にも'62年に東芝から出た『若さでクリスマス』や'60年の水原弘+森山加代子『おミズと加代ちゃんのクリスマス・イヴ』、裕次郎を含めた日活スターたちによる'62年の『歌う日活スター・クリスマス・パーティー』などが有名だ。


70年代に入ると、クリスマス・レコードの世界は、アイドル、プロレスラー、タカラジェンヌ、フォーク、ニューミュージックなど、だんだん混沌としていくのだが、もう字数が尽きてしまった。この辺はまたの機会に。

Merry Christmas!


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