2016年12月10日

[recommend] 書籍『東京レコード散歩』から生まれたコンピレーションCD3タイトルが同時リリース!

執筆者:鈴木啓之

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昭和40年代初頭、歌謡曲のひとつのジャンルとしての“ご当地ソング”という概念が定着したのは、美川憲一「柳ヶ瀬ブルース」のヒットがきっかけになったと言われる。もちろんそれよりずっと以前、それこそ戦前から、様々な地名が織り込まれた流行歌は存在していたわけだが、ムード歌謡や演歌の隆盛が追い風となって、全国各地の盛り場や港町などを舞台にした歌謡曲が飛躍的に増えていった首都東京もまた例外ではなく、都内のたいていの街にまつわる歌が存在している。正確な数は知れずとも、最も多く題材になっているのは間違いなく銀座と新宿だろう。


日本の映画主題歌第1号といわれる『東京行進曲』(佐藤千夜子)をはじめ、戦後の高度経済成長期を迎えた昭和30年代には、都会派ムード歌謡の代表作「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)や、銀幕から生まれたデュエットナンバーの大定番「銀座の恋の物語」(石原裕次郎&牧村旬子)など主流はやはり銀座。若者の街・新宿の歌が一気に増えるのは、昭和40年代に入ってからで、1969年に“演歌の星”のキャッチフレーズで売り出された藤圭子が、デビュー曲「新宿の女」をいきなりヒットさせて一世を風靡したことでそのイメージは決定的なものとなった。浅草など下町方面は演歌系の比率が高くなり、青山などのアップタウンではシティポップという様に、地域によって音楽の傾向が変化を見せるのも興味深い。


東京で生まれ育った人間にとってはそれらこそが故郷の歌であり、長い間愛おしく思い続けてきた作品たちである。地名や名所がタイトルや歌詞に登場する歌だけでなく、ジャケットに街の景色が写し出されているレコードも含めるとかなりの数に上る。実際に東京の街を訪ねながら、それらの歌を紹介すると共に、懐かしい風景やかつて存在したレコード店のことなどを綴ったのが既刊『東京レコード散歩』(東京ニュース通信社・刊)だが、書籍ではどうしても伝えられなかった音が、今回発売されたコンピレーションCDによって、本と併せて楽しんでいただけることとなった。第1弾は、コロムビア、ソニー、ポニーキャニオンからの3枚。各レコード会社が保有する東京の歌をメーカー毎に集めたシリーズは、今後も出来る限りたくさんのメーカーを跨いで展開出来ることを願ってやまない。


2020年、2度目となる東京オリンピックを間近に控え、日々めまぐるしく変貌し続けている東京の街を眺めながらこれらの歌を聴いていると、今はもう失われてしまった建物や街並の記憶が甦ってくる。東京生まれの方はもちろん、昭和の歌謡曲を聴いて育った方々、歌謡曲を愛するすべての方々にお聴きいただきたい曲たちである。ターンテーブルの上を滑らかに駆けゆくレコード針の如く、優雅で抒情豊かな音楽の散歩をお愉しみください。


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≪著者略歴≫
鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
東京レコード散歩: 昭和歌謡の風景をたずねて (TOKYO NEWS BOOKS) 鈴木 啓之

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