2015年07月21日

斉藤哲夫のグッド・タイム・ミュージック

執筆者:小川真一

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<若き哲学者>という名称は言い得て妙であったと思う。その長髪をなびかせた思慮深そうな風貌、そして、「悩み多き者よ」「されど私の人生」「斧をもて石を打つが如く」といった一連の曲の歌詞からも、哲学者ぶりがにじみ出ていた。

70年代のフォークは、岡林信康に継ぐヒーローを求めていた。71年に中津川でおこなわれた全日本フォーク・ジャンボリーにおいて、次世代のフォーク・ヒーローの候補に挙げられたのが、加川良であり、三上寛であり、そしてこの<若き哲学者>斉藤哲夫であったのだ。三人をフィーチャーしたアルバム『’71椛ノ湖全日本フォークジャンボリー実況』(URCレコード)も発売されたのだが、ヒーローの座を射止めたのは、サブ・ステージで絶叫した吉田拓郎であった。

ヒーローになりそこねたことが、斉藤哲夫の音楽をさらに豊かなものにした。73年CBSソニーに移籍してからは、『バイバイグッドバイサラバイ』、『グッド・タイム・ミュージック』、『僕の古い友達』と、ノスタルジックな音楽を背景とした素敵なグッドタイムな音楽を展開していくこととなるのだ。そして本日、7月21日は斎藤哲夫『グッド・タイム・ミュージック』(74年)が発売された記念の日であるのだ。

蛇足ながら、セカンド・シングルの「されど私の人生」には、はちみつぱい〜ムーンライダーズの鈴木慶一がピアノで参加。また、CBSソニー時代には、ムーンライダーズのギタリスト白井良明が相棒役をつとめている。その意味では、斉藤哲夫もムーンライダーズ・ファミリーの一員だといえる。


さらにもう一度、斉藤哲夫の肩に幸運の女神が舞い降りてくる。80年に、ミノルタ・カメラのCMが放映される。若き日の宮崎美子が木陰で恥ずかしそうに水着に着替えるシーンが話題となったのだが、ここで流れたのが斉藤哲夫が歌う「いまのキミはピカピカに光って」であったのだ。作詞は糸井重里、作曲と編曲はムーンライダーズの鈴木慶一。宮崎美子の人気と相まって、この曲は大ヒット。オリコンで10位以内に入り20万枚を超えるセールスを記録した。

斉藤哲夫は現在も元気に歌い続けている。6月には『プラチナム・ベスト 斉藤哲夫 ライフタイム・コレクション』がポニー・キャニオンから発売になった。このアルバムは、URC、CBSソニー、フォーライフ、ナツメグなど、レーベルの枠組みを超えたオールタイム・コレクションで、「さんま焼けたか」「甘いワイン」「君想う」などの名曲が数多く収められている。

「グッド・タイム・ミュージック 」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト

ソニーミュージック 斉藤哲夫公式サイトはこちら>

斉藤哲夫

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