2016年02月16日
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2016年02月16日
友川カズキは1950年2月16日に秋田県山本郡八竜村(現在の八竜町)に生まれた。本名は及位典司(のぞきてんじ)、その本名の方が更に濃濁なる物語を孕んでいるように思えてならない。端正な顔立ちでマイクの前に立ち、歌い出した瞬間に世界そのものを瓦解させる。そんな凶暴な存在感を持った歌手だ。
これほどまで時代そのものに突き刺さってくる歌はあるだろうか。魂を揺さぶり続ける友川の歌の前で観客は、漫然と聞くという安楽な位置を保持することは出来はしない。心の奥底から共感しその叫びを共有するか、もしくは席を立つことの選択を余儀なくされる。危険極まりない存在であり、その危険さが故に何度も聞きたくなってしまう。ラジオやテレビで聞くことのできない音楽であり、お茶の間には決して持ち込んではいけないしろものだ。だからこそ、たった独りで彼の歌に浸りたくなる。
71年に全日本フォーク・ジャンボリー(中津川フォーク・ジャンボリー)のアマチュア・ステージに参加、その後、東芝エキスプレスよりシングル「上京の状況」でデビュー。このような過程から彼はフォーク・シンガーと呼ばれるのだが、それは単なる成り行きでしかない。真価は、75年に体当たりのようにして作られたアルバム『やっと一枚目』で発揮される。自身の青春をどう制御しようか苦悩する歌声は私小説のそれに一番近く、血をもってしか表現できない。小石をぶつけるような饒舌な言葉と、ギターという楽器に憎しみを持っているかのような壮絶なストローク。音圧が壁のようにそそり立っている。
『肉声』『千羽鶴を口に咬えた日々』、そして中原中也の言葉に自身の旋律をのせた『俺の裡で鳴り止まない詩』と、立て続けに出された初期の傑作は友川カズキのドキュメントであり、日本語のロックとしても絶大なる完成度を持ち得ている。さらに彼のことを知りたいのなら、93年の『花々の過失』から連なる15枚のアルバム群を耳にするべきであろう。歪で鋭利で即興性に富み、豪雨のような叙情性が彼の歌声の中から染み出てくる。
その集大成ともいえるのが、2014年の『復讐バーボン』だ。それは全て友川の磁場によるものだと思うのだが、ギャスパー・クラウスと坂本弘道のダブル・チェロを始めとして、金井太郎、永畑雅人、吉田悠樹、それに頭脳警察の石塚俊明といった奇っ怪な面々が集結している。この中で彼は77年の『千羽鶴を口に咬えた日々』に収められていた「家出青年」を再演し、「貧困が暴力なら無知も暴力である、悔しき暴力である」と絶唱する。この絶望に満ちあふれた7分31秒を、今の日本はどのように受け止めるべきであろうか。時代に噛みつくことのできる歌があるとすれば、それは友川カズキによってであろう。そんな風に深く確信している。
『上京の状況』写真提供:芽瑠璃堂
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