2019年01月04日
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2019年01月04日
毎年訪れる1月4日。普通にイチガツヨッカと発音してしまえば三が日の次の日となるだろうが「イッテンヨン」と読めば俄然プロレスの匂いが立ち込めてくる。毎年来る「イッテンヨン」は新日本プロレス東京ドーム大会の愛称。我が家では長らく「イッテンヨン」のことを、初詣ならぬ“初マット “と呼んでいる。柏手3回打ってカウント3みたいな。今では「新日本プロレスワールド」という動画配信サイト普及のおかげもあって、日本だけでなく世界中のプロレスファンが注目する一大イベントにもなっている。
新日本プロレスが東京ドーム大会を初めて開催したのは1989年のこと。最初はお正月ではなく4月の開催で、メインイベントはアントニオ猪木vsソ連の柔道王ショータ・チョチョシビリだった。1・4東京ドーム大会が始まったのは1992年。団体創立20周年記念の企画として考えられた。世紀が移り、やがてプロレス冬の時代が訪れるが、新日本プロレスは1・4ドーム大会を中止することはなかった。2007年からは大会名が「レッスルキングダムin東京ドーム」に変わり、2019年は「レッスルキングダム13」の開催となる。ここ数年のプロレス人気大復活の煽りを受けて、恐らく大規模な動員を記録することだろう。
会場が大きければ大きいほど欠かせないのが音響効果。いつも以上に登場時の演出も派手にしてテーマ曲が盛大に流れ、興奮度アップというのがドーム大会の華でもある。レスラーの名刺代わりになるのがテーマ曲。古くは70年代中盤、ミル・マスカラス登場時に流れたジグソーの「スカイ・ハイ」。ファンク兄弟にプレゼントされたクリエイションの「スピニング・トーホールド」(ギタリスト竹田和夫は大のプロレスファンだった)。そうした企画が好評を博し、プロレスとロック音楽の深い付き合いが始まっていく。
日本のロックとプロレステーマ曲の関係は他にも。天龍源一郎のテーマ曲「サンダーストーム」は高中正義の81年アルバム『虹伝説』からの選曲。15年11月の天龍引退興行で高中は両国国技館のリング上で演奏もしている。お馴染み長州力「パワーホール」は元P―モデル平沢進が作曲。ハードロック風ギターのリフを中心にしたプロレステーマ曲が多い中で、テクノのサウンドは斬新だった。鈴木みのるテーマ曲は中村あゆみ「風になれ」だが、サビを待って入場に時間がかかるのがちと困る。
レスラーとテーマ曲の関係で何かいい話を探してみると……例えば85年ブルーザー・ブロディ全日本~新日本プロレスへの移籍時の件はどうか。全日本プロレスにおいてブロディのテーマ曲は長らくレッド・ツェッペリン「移民の歌」で、これもいいセンス。しかし団体が変わりテレビ局が変わると同じ曲は使えない。当時の新日本宣伝プランナーは腕を組み考えた。「猪木のリングにブロディが上がるのは運命なのだ……」 選ばれたのはベートーベン。「運命」のジャジャジャジャ~ン!が会場に流れ、ブロディは本当に新日本にやってきた。こういうノリの良さがプロレス産業の一番の楽しさでもある。
音楽ファンのレスラーというのも多数いるけれども、中でも特筆したいのはDDT所属のトップレスラー竹下幸之助。95年生まれ、18年に日本体育大学を卒業したばかりという若き逸材だが、何と吉田拓郎の大ファンなのだ。何でも子どもの頃から父親に聴かされていたそうで、取材時に拓郎話で盛り上がってしまった。拓郎さんのナンバーで登場したレスラーは過去にいないはず。もしも「あゝ青春」でリングインしたらリング上は毎晩つま恋である。朝まで試合だ。或いは渋めのナンバーを選ぶなら「英雄」(79年アルバム『ローリング30』収録)なんてどうか。スピード感のあるロックな拓郎ナンバーで入場する竹下を一度観てみたい。
ジグソー「スカイハイ」クリエイション「スピニング・トー・ホールド」ジャケット撮影協力:中村俊夫&鈴木啓之
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