2015年12月10日

37年前にリリースされた世良公則&ツイストの「宿無し」…ハイレゾで蘇る鮮やかな色彩

執筆者:小貫信昭

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想い出の曲にハイレゾで接すると、セピア色に変わりつつあった記憶がもとの鮮やかさに戻るかのような幸せな気分になれるばかりか、当時は気づかなかったその曲の新たな魅力を掘り起こすことにも繋がる気がする。スタイルこそバラエティに富んでいるが、どれも音楽的にはしっかりしたものを持つポプコン出身の楽曲達なら、尚更その確率は高いだろう。でも何より、ハイレゾというキッカケを得て、再び「聴いてみよう」という気分が高まる事こそが大きいのかも…。実はかく言うワタシもそのひとりなのだけど。

さて、今回取り上げるのは世良公則&ツイストの数あるヒット曲の中から「宿無し」だが、その前に、彼らが登場してきた時の衝撃を書きたい。世良のボ-カルは、そもそも歌の“規格”自体が他とは違うように思えた。そう、デビュ-曲の「あんたのバラ-ド」。タメにタメた、これから大事が起こりそうなイントロから少しのブレイクを挟み、歌い出される。タメにタメてるので聞こえてくる歌声がショボけりゃ冒頭でズッコける。でも彼は、このお膳立てに見合う、実にスケ-ルの大きな歌唱を披露したのだった。その際の、カンフ-風のダイナミックなステ-ジ・アクションも、実に話題になった。


そんな彼らのセカンド・シングルが「宿無し」である。前作は主人公である“あたい”が“あんた”に歌いかけるという、女ごころが主題の作品。一方こちらは、“オイラ”が“オマエ”の心を掴み損ねている状況が描かれているのだから、女唄・男唄という観点からは真反対である。しかしそう感じさせないのは世良の個性が強烈だからだ。ひとつ特徴的なのは、破裂音破擦音的なものと通鼻音的なものの組み合わせの良さに天性のものを感じる点だろう。それが実にリズミカルにこの歌を弾ませる。


歌詞の細かい部分で着目すべきは歌のタイトルとも重なる“オイラは宿無し”という部分だろうか。この場合の“宿無し”とは、どういう意味なのだろう。ひとつは相手の女性が自分にとって精神的な意味で“ねぐら”のような存在であって、でも今はそれも無い、という解釈だ。もうひとつは、この主人公が放浪癖のある男であって、“オマエ”に対する甲斐性もない、といった意味での、まさに言葉通りの“宿無し”。でもこの場合は、その両方に掛かっているようにも思える。


世良の歌や詞曲のことを書いたけど、改めてハイレゾで聴いて思わず唸ったのは、アイデア豊富なバンドの演奏なのだった。確かツイストというのは、デビュ-の前後にメンバ-・チェンジがあり、しかし最終的には腕利きな人間が結集し、我々の前に現れた時には、新人とは思えぬ演奏力を誇ることとなる。それは「宿無し」一曲を聴いても、存分に伝わってくるのだ。


まずやはり鮫島秀樹である。チョッパ-・ベ-スの要素もありつつ一辺倒ではなく、変化に富んだフレ-ズを駆使する彼の演奏は実に素晴らしい。エレキ・ベ-スの魅力がこれほどクッキリと伝わって、しかも同時に、お茶の間で愛されたヒット曲でもある、という両立は奇蹟に近い。そしてニュ-オリンズ的香りも加える神本宗幸のピアノもいいアクセントになっている。さらに太刀川紳一のギタ-も特筆すべきだろう。前半はチャック・ベリ-的な伝統的なロックンロ-ル奏法を意識した指さばきで曲を落ち着かせつつ、後半では早弾きの多彩なフレ-ズでロック・ギタ-のカッコ良さを伝えてくれている。


唯一、異色の存在だったのがふとがね金太だろうか。実は彼はもともとドラマ-ではなく、バンドに加入すると同時に研鑽を積み始めるのだった。世良はそのことも折り込み済みだった。この事実から伝わることはなんだろうか。それはバンドにとって不可欠なのは良い音であり、そして友情でもある、ということだろう。ジャパニ-ズ・ロックの歴史を編纂する方には、ぜひツイストのことを、もっとフィ-チャ-してもらいたいものだ。ロックをお茶の間に浸透させる、という、彼らが架けた大きな“橋”があったからこそ、後の人達はそこを渡れたのだから…。


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