2015年11月16日

40年前の本日、中島みゆき「時代」が第6回世界歌謡祭でグランプリを受賞

執筆者:前田祥丈

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11月16日、1975年のこの日、中島みゆきの「時代」が第6回世界歌謡祭でグランプリを獲得した。


同年の12月21日、「時代」はセカンドシングルとしてリリースされた。デビューシングル「アザミ嬢のララバイ」はすでに9月25日に発表されていたが、中島みゆきが初めて認知されたのはやはり「時代」であり、今でもこの曲を中島みゆきのデビュー作だと思っている人は少なくないだろう。


僕自身はこの曲をリアルタイムで聴いていた。しかし、まだ感覚の中に激動の時代だった70年の余韻が残っていた僕に、この曲は挫折した志をシニカルに歌っているように聴こえた。だから、しばらくは彼女の世界に深入りする気にはなれなかった。


それが変わったのは1980年代に入ってからだ。81年にリリースされたアルバム『臨月』を偶然に聴いた時に、深い抒情性をサラリと浮き上がらせるポップなサウンドメイキングに惹きつけられた。そして、その印象を決定的にしたのが同年10月のシングル「悪女」だった。「悪女」は、それまでの暗くて情念的な中島みゆきイメージから抜け出したリアリティとポップさとが融合した時代の音楽だと思った。そう思ったのは僕だけではないらしく、「悪女」はチャート1位を獲得するスマッシュヒットとなった。

「悪女」を聴いた後、僕は改めて70年代の中島みゆきの楽曲を聴き直した。そして、久しぶりに聴いた「時代」は、以前とはまったく違うメッセージを伝えてきた。あれ、この曲はこんなにポジティブだっけ。


その時、すぐに気付いたわけではないけれど、以前よりも真面目に中島みゆきの曲を聴くようになって思い当たることがあった。「悪女」は、けっして中島みゆきがその路線を変えた作品ではない。中島みゆきの本質は、たぶんデビューの頃から変わってはいない。変わったのは、時代に想いを届ける手法だ。時代にリアリティを伝えられる音は常に変化している。いわゆる流行とは違う“時代の音”というのは確かにあるのだ。中島みゆきが、その後も大胆なサウンドアプローチを行い、それぞれの時代に大ヒット曲を生み出していった背景には、彼女の変わらないメッセージをどの時代にもリアルに伝えていこうとする努力があったのだろう。そんなアプローチがあるからこそ、中島みゆきの曲はナツメロにならずに、それぞれの時代にリアルな問いかけを続けているのだと思う。


ちょっとマジメに言えば、中島みゆきの曲を聴くということは、そんな彼女のリアルな問いかけをどう受け止め、自分がどう応えられるのかを確認することなのかもしれない。

「時代」のメッセージがまったく違うものに聴こえた僕の体験も、その時々の僕自身の心情が反映されていたということなのだろう。

中島みゆき

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