2016年02月10日
スポンサーリンク
2016年02月10日
今回は八神純子の名曲「パープルタウン~You Oughta Know By Now~」を取り上げる。ちなみに歌の描く情景が夜明けのニュ-ヨ-クなので、それに倣ってこの原稿も夜明けに書いている。まだ東の空は漆黒…。やがて歌のように、“紫にけむる”空へと変わるだろう。作詞は三浦徳子である。そういえば「みずいろの雨」なども三浦の作詞で本人の作曲だ。このコンビは当時、ヤマハの主導により実現したものだそうだが、相性は良かったのだろう。でもこの2曲で気づくのは、どちらも色彩に例えていること。三浦は八神の曲に宿るそれらを言葉に変換することに長けていた、ということか。
さっそく「パープルタウン~You Oughta Know By Now~」を聴いてみることにしよう。いきなり風雲急を告げるかのようなストリングスが立ち上がり、間髪入れず、ギタ-が縦のリズムで被さり景色を変える。イントロからして実にダイナミックかつ急展開。アレンジは惜しくも若くして亡くなった大村雅朗(松田聖子の多くのヒット曲でも知られる彼には、もっと長く活躍して欲しかった)。でもそのアレンジの妙もハイレゾで聴くことで、より魅力が伝わりやすいし新たな発見もある。町内の映画館で観た作品を、タ-ミナル駅近くの映画館のワイドスクリ-ンで見直した時のような感動と言えばいいだろうか(まったくもって“昭和”な例え方ですみません)。
ただ、そんなイントロに続く八神の歌がスケ-ルの小さなものだと、看板倒れというか表札倒れというか、そんなことにもなり兼ねない。心配ない。彼女の書くメロディというのは、彼女のボ-カリストとしての広い音域という武器を、存分に発揮できるような備えとなっている。作曲家・八神純子は幸せだった。ボ-カリスト・八神純子が、すぐ側にいて…。いやこれ逆の立場のことでも言えるかも。
そういえば、当時ラジオなどで八神の歌を聴いていて、ハッキリ感じられたことがあった。それは曲の印象がクッキリしていること。さらに洋楽センスというか、時にはフォ-ク~ニュ-・ミュ-ジックの文脈とはまるで違うヨ-ロピアンな感覚すらも伝わってきたのが彼女の曲作りだった。一般的な日本人より身振り手振りが大きく表現力豊かなメロディ、というか。そのル-ツはどこにあるのだろうか。
少し前の『週刊文春』に彼女のインタビュ-が載っており、ル-ツを辿るヒントが語られていた。お母さんが洋楽好きで、小さい頃からシャ-リ-・バッシ-やカ-ペンタ-ズなどを歌っていたという。ちなみに実家のお住まいは大豪邸で、練習場所は広いリビング。そのレンガの壁に向かって、日々、歌っていたのだという。木と紙の音を吸い込む日本家屋ではない環境。レンガがもたらす声の反響も、もしかしたら彼女のその後の音楽性に寄与したのかもしれない。
歌も中盤あたりまでくると、主人公が“傷ついた心”のまま、束の間、この街を訪ねたことが判ってくる。日本には想いを寄せる人がいる。なぜ彼女がこのタイミングで旅を選んだのかまでハッキリ描かれてないが、あなたのもとへ“すぐ戻る”とあるので、遠く離れても想いは通じている。
想像されるのは、これがニュ-ヨ-ク滞在の初日だということ。飛行機が、朝焼けの空に飾られる早朝の到着であっても不思議ではない。ポイントは“hu hu hu”のハミングのところ。この感覚は英語圏なのであって、現地に到着した主人公の束の間の解放感をここが伝える。でもここまで起伏あるメロディだったのが、“New York愛する気持ちを…”からは連綿たるなだらかさを感じさせるメロディへ。ここのところの展開が、とても心地良い。最初の“New York”のあとの、繰り返しの“New York”で音が下がるところなんかは特に。
最後に彼女の声。よくクリスタル・ボイスと形容されてきたが、かつて朝日新聞で『サウンド解剖学』という画期的なコラムを連載されていた宮川泰氏は、八神純子を取り上げた回で彼女の声をこう書いている。「天使の清潔さと幼妻風の色気の甘い声色(こわいろではない)の両者と相まって、聴き手の胸のロマンに矢を放ってくる」。サスガ宮川先生である。だって単に“クリスタル・ボイス”なだけなら冷たい感じもするし。
すっかり原稿を書くことに集中し、ふと窓の外を見る。すると東の空は、みるみる紫に…。
今人気のハイレゾ音源配信にPOPCON発のヒット曲が登場!
あの懐かしい名曲をオリジナルマスターを上回るスペックでマスタリング処理し、通常の配信音源より高音質なハイレゾ化した音源です。
【ダウンロードサイトはこちら】
◆ mora>
70S中頃の日本のロック・シーンでは「春一番」、「夕焼け祭り」、「ワン・ステップ・フェスティヴァル」などのロック・フェスが各地で盛んに行なわれたものだが、今ひとつ忘れてならないのがアマチュア・ロ...
世良公則&ツイストの「宿無し」がリリースされたのは37年前、1978年のこと。世良の持つ、破裂音破擦音的なものと通鼻音的なものの組み合わせによる個性的なボーカルスタイル。それが実にリズミカルにこ...
岡村孝子と加藤晴子のデュオ、あみんがデビュ-したのは1982年の7月。遡ること2か月前の「第二十三回 ポプコンつま恋本選会」で、見事グランプリを獲得したのがキッカケだった。曲は「待つわ」。タイト...
NSPの中野サンプラザ2DAYSが行われたのは1977年の11月24、26日の二日間。2000人以上収容できる中野サンプラザで二日間行うということは大きな意味があった。それは、応援してくれていた...
1975年の今日、11月16日、中島みゆきの「時代」が第6回世界歌謡祭でグランプリを獲得。同年12月21日、「時代」はセカンドシングルとしてリリースされた。デビューシングル「アザミ嬢のララバイ」...
81年10月21日にリリ-スされ、オリコン・チャート1位となった中島みゆき「悪女」。独特のエコ-を伴ったサウンドといきなり聞こえてくる“マリコの部屋へ…”という、インパクトのある言葉。その二つの...
一言で夏の歌と言っても様々である。ただ大きく分けて、「夏の始まりの歌」と「夏が終わっていく歌」に分かれる。前者に登場するのは期待に胸を膨らませた主人公。歌詞に関しては、他の季節より感覚的な言葉が...