2015年12月11日

[不定期連載]僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第11回 『伽草子』その2 みうらじゅんによる勝手に全曲解説―前半

執筆者:みうらじゅん

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みうらじゅんが勝手によしだたくろうを語る不定期連載「ぼくの髪が肩まで伸びて よしだたくろう!」

前回に引き続き4枚目のオリジナル・アルバム『伽草子』。いよいよ今回から全曲解説です。高1の夏に聴いたこのアルバムの一曲一曲に当時が蘇ります。まずはその前半から。



1.  からっ風のブルース(作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎)

僕の夏は今でもこのアルバム。『伽草子』のイメージ。だんだん、頭の中に薄くかかったモヤが消え始めてきた17歳。とうとう僕の夏がやって来たんです。親元を離れ、友達と旅に初めて出た時、大きなラジカセから『伽草子』を流して。1曲目の「からっ風のブルース」、カッコイイ! 高音での拓郎さんのシャウト。マネて僕も似たような歌を何曲も作りました。テーマは当然“風”。風は時に優しく、激しく心の中に吹くものなのです。“どんな気がする?”って、問われてるみたいにね。


2.  伽草子(作詞:白石ありす 作曲:吉田拓郎)

この曲は日本歌謡史の中でもベスト3に入ると思いますね。いやぁ、素晴らしい曲です。この時の拓郎さんの声も抜群にいい。低音を美声で聞かせてくれますから。「旅の宿」で、もう飲みすぎちまって・・・て苦い経験しているのに、この曲でもまた飲んでますね(笑)。大丈夫?って心配したもんです。宿自体は前の旅館(旅の宿)より少し高級になったんじゃないですかね? 相手の女性もお嬢さんっぽい人に代わっていますね、きっと。


曲のアレンジが最高で、この曲をラジカセで聞きながら(まだウォークマン無いから)、僕はジーパンに下駄はいて(本当はこの世界観、間違ってたんだけど)「俺たちの旅」よろしくユースホステル回りの旅をしていました。「拓郎・雅俊合体論」というものがあったから、当時。実際はたくろうさんはジーパンに下駄なんて絶対に穿かないと思うけど(笑)。「俺たちの旅」のプロデューサーってきっと吉田拓郎のイメージで作ったんじゃないの?


3.  蒼い夏(作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎)

肝はやはりこのアルバムのキーボードですね。アル・クーパー張りの。スリーフィンガーのギターの音も「でたっ!」っていうくらい拓郎さん。もちろんハンマリングのテクニックも抜群です。さわやかな曲想なんだけど、描写しているのは真夏の海辺。カンカン照りの歌。前回の『元気です。』のアルバムと大きく異なるのはメランコリックな側面がたくさん描かれているところ。「伽草子」から「蒼い夏」へのリレーもまた絶妙ですよね。


4.  風邪(作詞作曲:吉田拓郎)

歌声もね、鼻詰まってません? 気だるさが伝わってきます。この曲はひょっとしたら、風邪薬メーカーとタイアップしてるのではないかと思っちゃいました(笑)。この曲も「なんか変」でやはりそれがジワジワかっこよく感じたのものです。拓郎さんは「不思議な世界観を作る先輩」でした。


5.  長い雨の後に(作詞作曲:吉田拓郎)

拓郎さん初のモノローグ。語りって、歌と違ってドキドキしますよね。かつて朝日ソノラマから出た拓郎さんのソノシートにも『自由は』という語り曲がありましたね、聴いていてムズムズしますね。ピアノの演奏がいつまでも耳に残って、いつもと違う拓郎さんを感じました。この曲から「君」が「妻」に代わるんですね。やはり作詞も吉田拓郎さん自身のせいでしょう。拓郎さんはまた「その時の自分」を曲に残してくれました。「愛に惑わされたすぎた君は、もう何も言わなくていいよ」という意味が昔は難しくてよく分からなかった。2番の歌詞は三角関係なのか? じっくり歌詞を分析してみようと思います。そして、この語りは心の叫びなのでしょう。


6.  春の風が吹いていたら(作詞・作曲:伊庭啓子)

これはまさに、ジョン&ヨーコですね。長い雨の後は春の風が吹いてくるんです。「イマジン」の後は「オー・ヨーコ」という流れでしょうか。四角桂子さんの声が爽やかすぎて頭から離れない。奥さんとのデュエットって流石拓郎さんやるなぁって今聴くと思うんです。拓郎さんはこの時の自分の生きざまをこのアルバムに全て反映させていたんですね。この歳になって初めて分かりました。マネ出来る人なんてほんの一握りでしょ。出来るかな、僕もいつか。


(この項つづく)

『御伽草子』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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