2016年02月09日

[不定期連載]僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第15回 『今はまだ人生を語らず』その3-B面勝手に全曲解説

執筆者:みうらじゅん

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みうらじゅんが勝手によしだたくろうを語る連載「僕の髪が肩まで伸びて たくろう!」。引き続き5枚目のオリジナル・アルバム『今はまだ人生を語らず』。今回はB面を全曲解説します。


7.襟裳岬  作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎
この歌も状況描写中心だけど、3番の詞の「日々の暮らしはいやでもやってくるけど、静かに笑ってしまおう」には当時の拓郎さんの全てのメッセージがこめられていたんじゃないかなぁ。作詞は岡本おさみさんだけど。ここから「今はまだ人生を語らず」にいたるわけです。たぶんですけど、その頃、実生活でいろいろあった森さんに「冷えているならうちで暖まっていきな」って言っているような気がしましたが、ま、勝手な想像だけどね(笑)。演歌については生涯理解できないのだろうな、と思っていましたがこの歌には演歌的な悟りを感じましたね。レコード大賞作曲賞をこの歌で獲るわけですが、吉田拓郎ヒストリーとしては、この曲でいろいろなことがまた起こるわけで。



8.知識   作詞・作曲:吉田 拓郎
「髪の毛を切るのもいいだろう」っていうフレーズ、これはかつてのイメージを押しつけてくる拓郎ファンとの決別なんでしょうか。かつての拓郎ファンと、この頃からの拓郎ファンとの違和感を何故かこの曲からは感じましたね。「人を語れば世を語る 語りつくしてみるがいいさ」はファンに対してで、この後には「俺は何も語らないぜ」とこのアルバムタイトルがつながるのですね。今こうしてこの歌を聴くと、その重要性を感じます(今までは思いもよらなかったけど)。それにしても「知識」ってすごいタイトルですね。昔は全然気づかなかったけど、今はわかる。うるさい、知識人! 勝手に生きさせてくれよ! と。パンクですね。


9.暮らし  作詞・作曲:吉田 拓郎
「男だったんだと 女がいて気づいた」って、当時童貞だった僕はこの意味がよく分かりませんでした(笑)。でもこの曲もさっきの「知識」に続いて吉田拓郎作詞作曲の、このアルバムの中ではとても重要なポジションの曲だったんですね。これも今になって気づきました。熱いスピリッツを感じるこの二曲。「イメージの詩」からずっと続く自分への疑問をここでまた昇華させておられます。B面に入って、「襟裳岬」から続く、「知識」と「暮らし」は本当に沁みますね。短い詞の中にギッシリ、メッセージが入っていますね。拓郎さんはこの時既にいろいろな事を知っていたけど、僕は何も知らなかったのです。


10.戻ってきた恋人 作詞:安井かずみ 作曲:吉田拓郎
安井かずみさん作詞のこの曲は、伽草子的世界でもありますが、これまでの世界とはまた異質で、拓郎さんの懐の深さとポケットの多さ、ジャンルの多さを感じますね。本当に多ジャンルの作曲ができる人なんですね。


11.僕の唄はサヨナラだけ 作詞・作曲:吉田 拓郎
ここでもまた、拓郎さんは「髪の毛を切っても」と歌っている。「おしゃれな街が好きなわけじゃないんだよ」とも言っておられるようで、実はいろいろなこと(当時の拓郎さんのこと)がこの歌には注入されていて、本当、意味深い。でも何も変わっていない拓郎さんがここに居る。すごく自分に正直な歌。この「サヨナラ」も意味深ですね。ディランが「悲しきベイブ」の中で“僕じゃないんだ”と歌うあのカンジ。僕たちもこのアルバムから少しづつ拓郎さんはイメージ通りじゃないんだって気付くのです。


12.贈り物 作詞・作曲:吉田 拓郎
これは「最後の贈り物」なんですね。このハモニカのフレーズ、いいですねえ。新しいことを始める宣言をしておられます。「きみの好きだった“雪”は誰かに歌ってもらえばいいさ」って、そんなこと言わないでくださいよ拓郎さん…って。でも、このアルバム『今はまだ人生を語らず』のエンディングにピッタリな曲だと思います。B面はやたらガンガン来ますね。本当、心に沁みました。



『今はまだ人生を語らず』終わり。

『今はまだ人生を語らず』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト 
よしだたくろう

みうらじゅん

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