2016年09月23日
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2016年09月23日
不滅の男がステージに戻ってきた。
今年6月、がんによる闘病を公表した遠藤賢司のライヴが9月21日、渋谷クラブクアトロにて行われた。バックをつとめるのはサニーデイ・サービス。あの名盤『満足できるかな』の再現ライヴである。
病魔との闘いが続いているはずの中で行われるライヴとあって、熱烈なファンが多く集まったが、一体エンケンはどんな姿で登場するのだろうか。観客の見守るような空気の中、得意の三本指サインを高々と掲げ、オープニングの「猫が眠っている NYAGO」からいつも以上にパワフルなヴォーカルと演奏で、観客のハートに火をつけた。サイドギターで参加しているのは曽我部恵一。アコギを掻き鳴らし、後半ではギターをパーカッション代わりに叩くエンケンを好サポートしている。続いて曽我部に加えベースの田中貴、ドラムの鈴木正敏が加わり、名曲「夜汽車のブルース」をバンド演奏。その圧倒的なパフォーマンスに会場は早くもヒート・アップする。
「言音一致の純音楽家、遠藤賢司です!」お馴染みの自己紹介に続いて、ここからは『満足できるかな』をアルバムの曲順どおりに演奏していく。間奏で「シーサイド・バウンド」を織り込んだタイトル・チューンに続いては、代表曲にして名曲中の名曲「カレーライス」をアコギ1本で。「待ちすぎた僕はとても疲れてしまった」では、田中がダブル・ベースを持って登場。アルバムの曲順どおりの演奏とあって、サニーデイのメンバーは出たり入ったりを繰り返すのも大変そうだが楽しそうだ。アルバムでは細野晴臣、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどの3人が参加していることはご存知の通りだが、ライヴでのサニーデイ・サービスの起用は再現ライヴにはぴったりの人選といえる。
アルバム6曲目、本ステージの8曲目にあたる「今日はいい日みたい」では、ピアノ弾き語り。イントロでは山下洋輔ばりのアバンギャルドなプレイを披露し、まさしく自由自在に渾身の歌と演奏が現出する。カントリー・タッチの「寝図美よこれが太平洋だ」では軽やかにウクレレを弾き、曽我部のマラカスが好サポート。バンドでの演奏は初めてという「雪見酒」のしっとり具合もたまらない。アコギ1本の弾き語りでは、エンケンの繊細な詩人としての側面が際立ち、バンド・サウンドではギターのディストーションと拮抗するかのようなパワー全開の歌声で聴く者を熱くさせる。力強く、時に優しいその響きはまさしく他に類型を持たない「純音楽家」エンケンの音だ。
アルバムラストの「君はまだ帰ってこない」を最後に本編終了。熱烈な歓声に応えてのアンコール1曲目は「不滅の男」! ギターをエレキに持ち替えたエンケンに、サニーデイ・サービスの3人も激しくアグレッシヴな演奏で応え、これぞエンケンのライヴというパワー炸裂ぶりに会場は熱狂の坩堝と化した。その揺るぎない、音楽への確信に満ちた姿に感動しないものはないだろう。「頑張れなんて言うんじゃないよ」と歌うエンケンが、今日ばかりはノイズを出しながら、エンケンは自分の胸を叩き「みんな『頑張れエンケン!』って言ってくれ」「頑張れは素晴らしい言葉なんだよ!」と絶叫する。それに応える満員の観客は、「頑張れエンケン!」と力の限りの絶叫を繰り返し、シリアスになりそうな空気が一転、ロックな空間に変わってしまった。こんなコール&レスポンスは初めて観た。両手を掲げたままフロアに下りたエンケン、最後は「夢よ叫べ」で締め括る。魂が震える熱いステージに、まるでこちらが励まされたかのようだ。今まで何度倒れても、こうして立ち上がる……不滅の男はきっとまた帰ってくる、その日を心待ちにしたい。
写真:岩本健吾
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