2017年06月10日
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2017年06月10日
『EARLY YEARS』でアイドル黄金期が本格的に始まるまでの前兆を振り返り『FIRST GENERATION』で「スター誕生!」開始から80年代前夜までに至る第一次黄金期を凝縮した『コロムビア・ガールズ伝説』も、いよいよ『SECOND GENERATION』で第二次黄金期に突入。百花繚乱としか言いようがない80年代の雑種な息吹をこの2枚のCDから感じることができる。
忘れないうちに時代検証を行っておきたいが、80年を節目とする根拠は、同年に大幅なアイドル世代交代が行われたことが明白だからである。トップアイドルの座を揺るぎないものとしていた山口百恵は、同年11月19日に三浦友和と結婚、そして芸能界を引退。78年のキャンディーズ解散、81年のピンク・レディー解散と共に、一つの章の終わりとして語り継がれる出来事となった。その空白を埋めるように80年4月、松田聖子がデビュー。続いて6月には河合奈保子がデビューを飾った。虚しさを埋めるかの如く、聖子の快進撃が瞬時始まり、81年からは奈保子もベスト10の常連となる。コロムビアはついに時代の申し子たる最強のアイドルを手に入れたのである。そして82年には、中森明菜・小泉今日子を筆頭に空前の大アイドルブームが始まる。そんな中コロムビアは、手堅く親しみやすい路線を貫き、原真祐美、河上幸恵など通好みのアイドルを次々と送り出している。
そんな「百花繚乱」時代の終わりは一体いつだったのだろうか。アイドル誕生の方法論を大胆に改革してしまった「おニャン子クラブ」が登場した1985年には、浅香唯、中山美穂、南野陽子など80年代後期を象徴するアイドル達の登場もあり、まだまだ黄金時代は続いていた。翌年起こる一つの大きな悲劇と、おニャン子を生み出した「夕やけニャンニャン」の放映終了に加え、ゴクミという新人類アイドルの誕生を機に企画された「全日本国民的美少女コンテスト」もスタート、河合奈保子がセルフプロデュースできるアーティストへと脱皮を遂げた87年を経て、88年にはアナログレコードに変わってすっかり市民権を得たコンパクトディスクがシングル盤の世界に進出。ピンナップ代わりともなる17センチ四方のジャケットが醸し出す美学が終焉へと向かう。コロムビアに於いては、その年デビューした国実百合が最初の「CDシングル盤でデビューしたアイドル」となった。厳密に言えば翌年デビューした山中すみかや増田未亜もアナログシングル盤を残しているが、一部他社が89年には完全にアナログでの新譜発売から撤退したことを考えると、88年を節目とする方がむしろ相応しいと言える。
サウンド面に関しても、明らかな境目が感じとれる。旧然とした歌謡曲のスタイルから脱却し、フュージョン系スタジオミュージシャンを中心とする小気味良い演奏と歯切れの良いバックコーラスが、女の子の素直な歌声を堅実にバックアップした80年代前半、対してデジタル機器の大胆な導入により、きめ細やかでカラフルなサウンドが次の時代の到来(即ちCDへの転換)を予期させた後半。それはそのまま、このコンピのDisc 1とDisc 2の境目でもある。
そんな80年代の華やかな空気を2枚のCDに凝縮するため、『SECOND GENERATION』に於いては特に重要と思われる歌手を例外とし、一人につき一曲という選曲方針を保たせていただいた。王道からカルトまで幅広く、現在のアイドルシーンの構造を予感させる曲も幾つか。今回はここで打ち止めとなるが、89年以降のアイドルの足跡をまとめたコンピもいつか実現できるよう努力したい。皆様の熱い声をお待ちしております!
[曲目メモ]
大きな森の小さなお家(1980年6月1日/AK-659)
作詩:三浦徳子 作曲・編曲:馬飼野康二 歌:河合奈保子
松田聖子が先導した80年代アイドル最初の波に見事に乗り、一躍コロムビア史を代表するアイドルの一人に躍り出た河合奈保子の記念すべきデビュー曲。思わせぶりな歌詞が青少年の心をくすぐり、オリコン最高36位を記録。
誘われてスキャンダル(1980年7月1日/AK-673)
作詩・作曲:伊藤 薫 編曲:川上 了 歌:ベティ&ペティ
末期"GAL"に在籍した中世古明代が津田京子と組んだデュオのデビュー曲。ピンク・レディーの亜流さえ最早アナクロなものと化し始めていた頃、敢えて直球で勝負したサマー・ポップス。
ファースト ラブ セレモニー(1981年4月1日/AH-44)
作詩:落合武司 作曲:梅谷忠洋 編曲:奥村 貢 歌:ベティ&ペティ
2枚目のシングルで早くも70年代歌謡ルネッサンス路線へ転向。のちにキャンティと改名してキングに移籍し、ザ・ピーナッツのメドレー曲「ピーナツ・ピーナツ」を皮切りにさらなる4枚のシングルを残す。
帰っておいでよ(1980年11月1日/AK-745)
作詩:竜 真知子 作曲・編曲:丹羽応樹 歌:中村久美
存在感の強い演技でドラマ・映画で活躍した中村久美の唯一のシングル。才女・丹羽応樹の手によるフェミニンなシティポップス。近年はAKB48「桜の木になろう」のPVに出演するなど、現在のアイドルファンとも縁がある。
明日に向かって走れ(1981年6月1日/CK-615)
作詩:竜 真知子 作曲:川口 真 編曲:川村栄二 歌:坂上味和
木之内みどりを大ブレイクさせた「刑事犬カール」の第2シリーズで主役を演じた坂上味和が唯一残したレコードは、同番組の主題歌。映画「探偵物語」など癖の強い脇役女優としての印象が強い。
ありがとうパパ(1981年8月1日/AH-95)
作詩・作曲:同志 洋 編曲:小六禮次郎歌:高橋英樹・仙道敦子
84年にアイドル歌手界に進出、90年代にトレンディ女優として大飛躍を果たした仙道敦子が11歳の時に残した激レアな歌唱曲。現実でも娘・真麻の誕生を寸前にした高橋英樹とひたむきに渡り合う早熟女優魂が眩しい。
哀愁プロフィール(1982年4月21日/AH-202)
作詩:荒木とよひさ 作曲:三木たかし 編曲:矢野立美 歌:伊藤かずえ
「不良少女と呼ばれて」の主演などで「ヤンキー系女優」とのイメージを抱かれつつ、多彩な面を持つ伊藤かずえの正式歌手デビュー曲。幾つかのCMでも見せた純情娘的一面が感じられる。
訳詩:松井五郎 作詩・作曲:J. Bon Jovi, George Karak 編曲:戸塚 修 歌:伊藤かずえ
8枚目のシングルでは、当時世界的大ブレイク寸前のボン・ジョヴィのデビュー曲をカバー。乙女ロック魂は本来の彼女のイメージに近いのか? 後にフォーライフに移籍、小室哲哉作曲「星屑のイノセンス」で待望の初ヒットを記録。
キラリ・涙(1982年5月21日/AH-212)
作詩:伊藤アキラ 作曲:三木たかし 編曲:矢野立美 歌:水谷絵津子
激戦区となった1982年の新人パレードにコロムビアが送り込んだ「スター誕生!」出身の水谷絵津子。青のカラーレコードで勝負しつつも強烈な印象を残しきれなかった純なデビュー曲。
芽ばえ(1982年9月21日/AH-260)
作詩:千家和也 作曲:筒美京平 編曲:若草 恵 歌:水谷絵津子
2枚目のシングルで、麻丘めぐみのデビュー曲を忠実にカバー。小泉今日子も2作目で「素敵なラブリーボーイ」をカバーするなど、当時のアイドル界にはちょっとした70年代ルネッサンスが巻き起こっていた。
キューピッドLOVE(1982 年12 月1 日/ AH-279)
作詩:花井愛子 作曲:尾関裕司 編曲:志熊研三 歌:花井その子
円谷プロダクションがアイドルマネージメント界に乗り出し、2枚目のシングルでウルトラ怪獣をサポートメンバーとして従えたことでマニアを震撼させた花井その子のくすぐったいデビュー曲。
決心(1983 年3 月21 日/ AH-315)
作詩:友井久美子 作曲・編曲:都倉俊一 歌:原真祐美
「妹みたいじゃだめですか?」というキャッチコピーの割に、女子大生っぽい落ち着いたキャラが印象に残る原真祐美のデビュー曲。前年に比べて派手さに欠けた83年新人界を象徴した曲のひとつ。
花の色(1984 年1 月1 日/ AH-407)
作詩:三浦徳子 作曲:財津和夫 編曲:大谷和夫 歌:渡辺典子
薬師丸ひろ子・原田知世と共に、角川三人娘として一世を風靡した渡辺典子の歌手デビュー曲。ドラマ版「探偵物語」の主題歌で、財津和夫による哀愁のメロディーを憂いのある声で歌いこなす。両A面「少年ケニヤ」も人気を呼び、オリコン9位を記録。
DO-KI♥DO-KI(1984 年7 月21 日/ AH-491)(音源提供:ホリプロ)
作詩:岩里祐穂 作曲:岩里未央 編曲:戸田誠司 歌:河上幸恵+HP25
「スター誕生!」から最後のコロムビア・デビューとなった河上幸恵。ホリプロ25周年から命名された卵型ロボット「HP25」をパートナーとして迎え、大胆なテクノ歌謡に挑んだ3枚目のシングル。
心の中のルビー(1985 年5 月21 日/ AH-591)(音源提供:ホリプロ)
作詩:三浦徳子 作曲:玉置浩二 編曲:瀬尾一三 歌:河上幸恵
5枚目で最後のシングル。正にブレイク最中だった安全地帯の玉置浩二が手がけたアイドルバラード屈指の傑作。実力に恵まれつつ、82年デビュー組の派手な活躍に隠れ沈んだ83年組の哀愁を集約したような一曲。
さびしんぼう(1985 年2 月21 日/ AH-550)
作詩:売野雅男 作曲:Frédéric Chopin 補作曲・編曲:瀬尾一三 歌:富田靖子
映画「アイコ十六歳」で鮮烈に登場、従来の芸能界の王道とは異質の無垢さが新鮮な印象を与えた富田靖子の3枚目のシングルで、「尾道三部作」完結編となった同名映画の主題歌。ショパンのメロディに冴える初々しいイノセンス。
唇に涙(1985 年4 月21 日/ AH-584)
作詩:秋元 康 作曲・編曲:見岳 章 歌:堀江しのぶ
元祖グラビアアイドルの一人として強烈なビジュアル展開を行いつつ、23歳にして非業の死に直面した堀江しのぶの通算3枚目のシングルのB面。涙を誘わずにいられない哀愁のバラード。
けんかをやめて(1982 年9 月1 日/ AH-255)
作詩・作曲:竹内まりや 編曲:清水信之 歌:河合奈保子
10枚目のシングル。作詞作曲に竹内まりやを起用し、乙女の揺れる心を歌った力作。オリコン5位を記録し、その後もアイドル界屈指のスタンダードとして随所で歌い継がれている。
≪著者略歴≫
丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月24日、初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』(3タイトル)が発売された 。
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