2017年11月19日
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2017年11月19日
アイドルという枠を飛び出し、60〜70年代の和製フォーク〜ニューミュージック黎明期に於いて奮闘した女性シンガーの軌跡をまとめた『FOLKY & ELEGANCE』。過去、フォークに焦点を置いたコンピは様々に発売されていましたが、女性歌手のみに的を絞ったものとなると、ヤマハ/ポプコン関係の数枚を除くと全く前例がなく、そんな状況を打破するため、気合を入れて編纂に取り組ませていただきました。
[曲目メモ]
白い色は恋人の色/ ベッツイ&クリス
もはや説明不要、ハワイ出身の17歳の二人が、刹那の嵐が吹き荒れる69年のフォーク界にもたらしたさわやかな風。フォークルの北山修・加藤和彦が提供したこの曲は、「クレヨンしんちゃん」映画への使用なども経て、時代を超えて愛されるスタンダードとなった。
若い天国/ 田中マサコ
サイケでハレンチな空気に包まれた68年の昭和元禄ムードを、アンニュイな歌声でジャジーなポップスに仕上げた異色作。コロムビアのフォーク戦略「カレッジアン・ポップス」に於ける紅一点的役割を担ったが、レコードはこのシングル1枚が残されたのみ。
私もあなたと泣いていい? / 兼田みえ子
超長寿ラジオ番組「走れ! 歌謡曲」の最初期からパーソナリティを務め、徹夜族のアイドルとなった「ミコタン」の歌手デビュー曲で、オリコン45位に達するヒット。ここに収録したのは、2番以降の歌詞を朗読で綴ったアルバム用の再録音ヴァージョン。
海と女の子/ トライポッド
ジャックス時代には公式録音盤が残されなかった早川義夫のレアソングで、ポニーズの前身GS、ザ・バインズによるラジオ放送用録音もあるが、メジャーリリースしたのはこの女子大生3人組が初めてである。清々しいハーモニーが曲の魅力を引き立てている。
恋って不思議/ トライポッド
「海と女の子」のB面で、恐らくメンバーか周辺人物によるオリジナルレパートリー。メジャーデビュー組としては、前年東芝から登場したジ・アイビー・トワインズに続く女性フォークトリオ第2号。のちにシモンズ、ピンク・ピクルスらにより花開くガールフォーク路線の源流。
赤い星のボレロ/ 沢村和子とピーターパン
既に斜陽期を迎えていたGS界に送り込まれた、女性シンガー・プレイヤーをフロントに立てた貴重なバンド。「涙の太陽」の作曲者を兄に持つ和子の意地が、特に間奏のオルガンとフルート演奏に炸裂したデビュー曲。この後出演した映画「野良猫ロック マシン・アニマル」での演奏シーンは圧巻だ。
プラハの春/ 芦川美樹
東欧の共産主義革命にモチーフを求めた、「フランシーヌの場合」の路線を踏襲したデノンの社会派フォーク第2弾。革命以前の穏やかな日々を懐かしむ内容は、過激なプロテスト色と無縁ながら、当時ならではの空気をはらんでいる。
魔性の女/ 由比新子
フォークへの対抗勢力として台頭し始めた、洗練された大人のポップス「ラブ・サウンズ」の一翼を担う一曲。モデル出身のファッショナブル女子が、サイケなオーケストレーションを得てマジカルな世界に聴き手を誘う、これぞエレガンスな一曲。
白いテラスで/ 美保幸代
こちらも大人の魅力が漂う、力強い歌唱で綴られるバラード。初期のポプコンでは、こういった「上手い歌手」がアマチュアの作品を歌い、王座を競うのが基本であった。ゆえに、フォークのコンピにこの手の曲を入れることで、その雰囲気を伝えようと画策した次第。
恋のおはなし/ 島田順子
本職がウィンドウ・デコレーターという、ある意味アパレル系ミュージシャンの走り。このデビュー曲では、女の子らしい恥じらう恋心を阿久悠がビビッドに描き、メラニー直系の軽めのフォークポップスに仕上げている。
しあわせの足音/ 島田順子
より王道フォークスタイルに接近した2枚目のシングル。5ヶ月後リリースされたやまがたすみこのデビューアルバムの中でも取り上げられている。コロムビアのフレッシュフォーク路線を語るとき、決して外せない一人故、シングルA面曲は一つに絞れなかった。
風に吹かれて行こう/ やまがたすみこ
コロムビア・フォーク史における最重要歌手の一人。ほとばしる若さと澄み渡る歌声で、フォーク界のアイドル路線を確立した初期から、大人のポップス路線で近年評価が高い末期まで、決して軽視できない名作が目白押し。ここでは当然、さわやかそのもののデビュー曲に代表登板していただいた。
夕焼け小焼け/ 広美和子
「ステージ101」出身。米国のシンガーソングライターの作風に通じるどころか、スワンプロック的要素さえも感じさせる異色作。のちに組んだ3人組ベルベッツでは、筒美京平による超ファンキー歌謡も残している、ソウルフルな歌唱が魅力。
まちぼうけ ~佐渡を恋うる唄~/ 日暮し
近年めきめきと再評価が高まり、今年ついに未発表作品集までリリースされた男女3人組。ボーカル・榊原尚美は日本音楽界屈指の美声の持ち主。赤い鳥のトラディショナル探求精神を受け継ぎ、よりポップに美しく昇華したデビュー曲。
自由な私/ 乙女座
青春歌謡歌手としてスタートした水沢有美が、ポプコン予選会で巡り逢ったピアノ娘・杏ふるやと意気投合して結成。フォークへの傾倒からさらに先鋭的なポップ路線へと進み、傑作アルバム『ふたり』をリリースする前年、コロムビアに1枚だけ残した貴重な作品。瑞々しいコーラスアレンジが見事。
雨の日は/ 河野洋子
自作曲でデビューという幸運を授かりつつ、このシングル1枚のみがコロムビアに残された純情娘。B面でカバーされたジョン・デンヴァーへの憧れが、歌謡曲の王道的アレンジに隠れてしまったのが惜しい。ここまでの数曲でフィーチャーされたリコーダーは、いかにも当時らしい無垢さを響かせる。
カラカラ砂漠/ つげあき子
72年にビクターから吉田拓郎の提供曲も含むアルバムでデビューした柘植章子が、グッドタイミーなポップをこなすシンガーとして再登場。アルバムから抜擢したこの曲は、電子変調したボーカルがアシッドなムードを増幅する実験的な大作。成毛滋が弾くクラヴィネットが聴きものだ。
ジョーの肖像/ 庄野真代
78年「飛んでイスタンブール」の大ヒットでNMお茶の間対応現象を後押しした庄野真代の記念すべきデビュー曲。都会派ポップにちょっぴり毒が効いた歌詞がユニーク。ユーミン作品に挑むファッショナブルさに加え、スポーティ感覚もフォーク歌手としては異色の持ち味。
七曲り/ 中川よしの
ポプコン第12回で「流れ星」を歌い注目された、無垢フォーク少女最後の世代。都会派ニューミュージックにまみれた78年に於いて、押しが強くなかったことが命取りとなったが、今聴くと驚くほど新鮮である。澄んだ歌声が魅力的。
時には母のない子のように/ 中川由乃
正式デビューに先駆け、6枚組アンソロジー『フォーク大百科』(レアナイアガラアイテムの一つ!)のために録音した「コロムビアカバー」。もちろんオリジナルはカルメン・マキ69年の大ヒット。70年代らしい瑞々しさが、この曲に新たな魅力を与えている。
フランシーヌの場合/ 新谷のり子
最後を飾るのは、タイミング的にも前曲と並べるのが妥当な69年の大ヒット曲。毎年、3月30日が来るとこの曲を思い出す。特に震災以降、この曲の持つメッセージはより深刻に響き始めるのだ。音楽が持つポジティヴな力が途絶えることないように、永遠に願いたい。
『コロムビア・ガールズ伝説』 END OF THE CENTURY(COCP-40159)、FOLKY & ELEGANCE(COCP-40160)特典情報はこちら>
≪著者略歴≫
丸芽志悟 (まるめ・しご) : 丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月3タイトルが発売された初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。
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山口百恵、ピンク・レディーの70年代から聖子・明菜の80年代へ、さらに百花繚乱状態が加速する時代にデビューしたアイドルの重要曲・カルト曲をセレクト。text by 丸芽志悟
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「スター誕生!」から送り込まれた大量のアイドルにより第一次ポップス革命が 花開いた72~79年にデビューした女性歌手の重要曲たち。text by 丸芽志悟
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