2018年01月26日
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2018年01月26日
山下久美子がデビュー35周年記念として2016年にリリースしたベスト・アルバム『Din-Don-Dan』には、ライヴ・テイクや忌野清志郎などとの共演曲も加え、彼女の代表曲がほとんど収録されている。さらにデビュー曲「バスルームから愛を込めて」を作曲した亀井登志夫が書き下ろした「仲直りにくれた手紙」、「こっちをお向よソフィア」など何曲も提供してきた盟友・大澤誉志幸による「Din-Don-Dan ホラ胸が鳴る」の新曲2曲も、彼女の足跡を確かめながら背中を押している。
シングルを中心にリリース順に収録されているから、1曲目はデビュー・シングル「バスルームから愛を込めて」(作詞・康珍化 作曲・亀井登志夫)だ。この曲でデビューしたのは1980年6月25日。大分県別府市に生まれ、大阪でしばらく歌修行をしたのちに上京し、山下久美子はシンガーとなった。デビュー当時から4人組バンド”パパ”を率いてのアクティヴなライヴで、まだ椅子席のあったライヴハウスで観客が総立ちになることから「総立ちの久美子」と言われたものだ。その頃の拠点だった新宿ルイードでは、佐野元春や白井貴子、ラッツ&スター(当時はシャネルズ)などが同じように観客を総立ちにさせて、新しい音楽シーンの扉を開いていた。当時を思い出して、ここでは久美子と彼女を呼ぶことにしよう。
久美子が軽快なポップスやハードなロックも歌うスタイルは今も変わらないが、「バスルーム~」をはじめグッとくるバラードを多くレパートリーにしているのも、彼女の重要な一面である。「抱きしめてオンリー・ユー」(作詞・康珍化 作曲・亀井登志夫)や「時代遅れの恋心」(作詞・下田逸郎 作曲・大沢誉志幸)は、その延長にあり、今もステージで大切に歌う曲たちだ。「胸キュンの久美子」というキャッチ・コピーの所以である。
そうしたイメージを持つ曲の一つが、同じマネジメント(当時はノン・ストップ)の先輩であるアン・ルイスが『PINK PUSSY CAT』(1979年 山下達郎がプロデュース)で歌った「シャンプー」(作詞・康珍化 作曲・山下達郎)のカヴァーだ。のちに山下達郎自身も『POCKET MUSIC』(1986年)でカヴァーする曲だが、久美子は3作目『雨の日は家にいて』(1981年)で歌っている。だが、その時にカヴァーすることをアン・ルイスに伝えないままレコーディングしたのではないかと、昨年の彼女の誕生会で話題になった。この数年、久美子の誕生日である1月26日に、デビュー当時からのスタッフなどが集まってバースディ・パーティをやるのが常になっているのだ(デビュー時から取材をしてきた私もその中に混ぜてもらっている)。不義理をしたのではと焦っていたスタッフたちだったが、その後アンは「昔も今もshe has my blessings」と言っていると伝えられ、一同安堵の胸をなでおろすという一幕があった。
「胸キュン」で「総立ち」から最大のヒット曲「赤道小町、ドキッ」を得て、アーティストとして確かなスタンスを築いていく。プライベートでは結婚そして離婚を経験、辛い思いもしたが歌い続けてきた。双子たちが大きくなったこともあり最近はライヴにも積極的で、デビュー当時からの盟友である大澤誉志幸とは、デュエット・アルバムも2作リリースしていることもあり、ステージで共演することもしばしば。デビュー当時から変わらないキュートなヴォーカルで、久美子は変わらず「胸キュン」させてくれている。
さて今年の誕生日には、どんなエピソードが飛び出すだろう。
≪著者略歴≫
今井智子(いまい・ともこ):『宝島』編集部で、音楽記事担当者として同誌の編集・執筆に携わる。1978年フリーとして執筆活動を開始。以後、「朝日新聞」レコード評およびライヴ評、「ミュージック・マガジン」などを始め、一般誌・音楽誌を中心に洋邦を問わずロックを得意とする音楽評論家/音楽ライターとして執筆中。著書「Dreams to Remember 清志郎が教えてくれたこと」(飛鳥新社)など。
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