2018年04月26日
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2018年04月26日
2018年2月の平昌冬季オリンピック大会では、フィギュアやスピード・スケート、ジャンプ、カーリングなど、様々な競技で忘れられないシーンが繰り広げられた。鮮烈に残された映像と重なるように記憶される音楽がある。もっぱらTV中継で楽しむオリンピックでは、アテネ大会(2004年)での「栄光の架け橋」(ゆず)あたりから顕著になったのが、NHKでひんぱんに耳にする放送テーマソングか。平昌大会での「サザンカ」(SEKAI NO OWARI)も然り。
そして、冬季オリンピック関連曲において72年の札幌大会でのトワ・エ・モワによる「虹と雪のバラード」と並び、確かな記憶となっているのが「白い恋人たち」であろう。フランス・グルノーブルでの第10回大会(68年2月)を題材とした、クロード・ルルーシュ監督の記録映画主題曲である。映画は同年11月9日に日本公開され、シングル盤が前後となる10月から12月にかけて大ヒットを記録した。その名曲をピエール・バルーと共作し映画本編の音楽を担当したのが、1932年4月26日生まれのフランシス・レイである。
出身は南フランスのニース近郊。アコーディオンに親しみダンス・バンドへの参加から作曲も始め、音楽理論と作曲法をニース音楽院とコンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽/舞踏学校)にて学ぶ。シャンソン歌手の伴奏や楽団を編成するなどの活動を継続。やがてイヴ・モンタンやエディット・ピアフとの交流を深め,63年に俳優/歌手ピエール・バルーと組んだことをきっかけに、65年以降映画音楽を手掛け始めている。バルーを介し,64年に出会ったのが監督クロード・ルルーシュであった。
1966年の、ルルーシュとの出世作『男と女』を初めとして、フランシス・レイによる映画音楽には、個々の映像の作品性と密着に結びついた美的感性が宿り、同時に”ポップ・ミュージックにおけるクラシック”と呼びたくなるような独立した完成度と個性が盛り込まれている。
1970年前後から普及したFMラジオの高音質放送に適合するサウンドが、AMラジオ番組で聴ける歌謡曲や洋楽ポップス/ロックではないものを望む聴取層に訴求してイージー・リスニング的なスタイルとも合致し、より幅広いリスナー像を創り出す(蛇足ながら当時のFM局の番組編成は現在の民放多局化以降のものとはまったく異なっていた)。ポール・モーリアやレイモン・ルフェーブル、フランク・プゥルセルといった巨匠の根強い人気ぶりが認識された時期でもある。加えてというか、とりわけフランシス・レイには、映画音楽という当時の洋楽ヒットにおける盤石の強みがあった。『個人教授』(日本公開69年4月)、『雨の訪問者』(同70年4月)、『ある愛の詩』(同71年3月)、『ビリティス』(同77年10月)などなど、枚挙に暇がない。映画自体が大衆的に高い評価と価値を心に刻みつけているのと同様に、それらを彩ったフランシス・レイの音楽が人々の人生の忘れ得ぬ記憶に結びついたはずだ。
2018年公開の『グレイテスト・ショーマン』や『リメンバー・ミー』にいたるまで、当然のことながら映画と音楽とは不可分な存在としてあり続けている。が、フランシス・レイの時代における両者の格別な関係は、また別の次元の輝きを遺しているように思える。
≪著者略歴≫
矢口清治( やぐち・きよはる):ディスク・ジョッキー。1959年群馬生まれ。78年『全米トップ40』への出演をきっかけにラジオ業界入り。これまで『Music Today』、『GOOD MORNING YOKOHAMA』、『MUSIC GUMBO』、『ミュージック・プラザ』、『全米トップ40 THE 80'S』などを担当。またCD『僕たちの洋楽ヒット』の監修などを行なっている。
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