2018年06月11日

1958年6月11日、歴史に残る名曲 エディ・コクラン「サマータイム・ブルース」が全米でリリース

執筆者:矢口清治

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エルヴィス・プレスリー以降、カール・パーキンス、ジョニー・キャッシュ、ロイ・オービソン、ジェリー・リー・ルイスらサン・レコード輩出の人気者を筆頭とする面々により、50年代の終りまで続いたロカビリー・ブームにおいてエディ・コクランもまた、活きが良くて押しの強いギターを土台としたサウンド・スタイルと、パーティーや学校などの題材に未成熟な反逆精神を織り込みながら10代の日常を謳歌する若い世代の気持ちを瑞々しく描き出した。彼の、そして20世紀のポピュラー・ミュージック史に刻まれた重要なジャンル=ロックン・ロールそのものを代表する曲のひとつとして挙げられるのが、「サマータイム・ブルース」であろう。


1938年10月3日ミネソタに生まれたエドワード・レイ・コクランは、51年に移り住んだカリフォルニアで学校のオーケストラに加わると友人のコニー・スミスに触発され、ギターに夢中になった。アマチュア・トリオや社交クラブのバンドとの関わりから知り合ったのが、偶然にも同姓で3歳年上のハンク・コクラン。ふたりはコクラン・ブラザーズを名乗り55年にレコード・デビューを果たす。この年の秋に楽器店で紹介されたジェリー・ケイプハートは、ローズマリー・クルーニーに曲を提供するなどソングライターやアドバイザーとして仕事をしており、エディのマネージメントを手掛けることになる。ハンクとのコンビを解消すると(彼はその後もカントリー・ミュージックへの真摯な気持ちを抱き続けソングライターとして名を成し殿堂入りを果たす)、本格的にソロになったエディは、56年にジェーン・マンスフィールド/エドモント・オブライエン主演の映画『女はそれを我慢できない』に出演し「トゥエンティー・フライト・ロック」(またもう1本『UNTAMED YOUTH』にて「Cotton Picker」)を歌う。これをきっかけにリバティ・レコードとの契約を得て、57年に「バルコニーに座って」が発売され全米第18位を記録した。所属音楽出版社が費用を捻出するなどの条件が折り合ったことでリバティの制約をある程度離れ、自身のプロデュースが許されて独創的なレコード創りに向かったエディは、シングルのB面曲としてブルースを基調とし流行の言葉をしのばせた作品をケイプハートと自宅でビールを飲みながら思案すると、1時間ほどで書き上げる。58年6月11日にアメリカで発売されたのが「ラブ・アゲイン」、そしてそのB面が「サマータイム・ブルース」だった。ラジオでの反応から「サマータイム・ブルース」の方がチャートを昇ると、9月29日付けで最高第8位に到達し、彼にとって唯一の全米トップ10入りを果たした(この週の第1位はトミー・エドワーズの「恋のゲーム」)。


「サマータイム・ブルース」はエディのオリジナルもさることながら、いくつものカヴァーによって永くその価値を留める楽曲になる。メタル・バンドの先駆けと位置づけられるブルー・チアーが68年に全米第14位にし、そして今日までもっとも知られるヴァージョンとしてザ・フーによるライヴ・シングルが70年に同第27位となっている。リッチー・ヴァレンスの生涯を描いた87年の映画『ラ・バンバ』ではエディを演じたブライアン・セッツァーが十八番のロカビリーだけあって見事な歌と演奏を聴かせ、その他、数多のテイクを経て94年にはカントリー・スター=アラン・ジャクソンがこの傑作に新たな息吹を与えている。



世代を超越して歌い継がれる「サマータイム・ブルース」が愛されるのは、その歌詞にある悲哀や愛嬌、ヒネリに秘密があるのかもしれない。多くのヒット曲がその楽しさや明るさといった肯定的な側面で夏をテーマにしているのに反して、この曲はそうとは言えない。タイトルにあるブルースはそのままの意味で憂鬱であり、思うに任せないいらだち、やってられない気分を描いている。その程度は、平均的な若者を主役にしているからかお気楽でグズグズであり、手拍子を伴う軽快な仕様ともあいまって、ときにコミカルに、そしてちゃんとリアルに心象を表出している。夏という季節に”やってらんねえよ”という気分を味わったこと自体が若さの真っ只中にいた”すべての自分”の鮮やかな記憶に刻まれ、やがて振り返られる。それはあらゆる世代に貫かれるものなのかもしれない。この絶妙な加減が、後年文学的にも深く吟味されるチャック・ベリー作品あたりとは異なる薄い軽さをにじませ、万人に浸透する魅力に結びついているように思えてならない。


言葉を超えて波及する破壊力という点では、スタイルとしてシンプルなのに独自の力強さを発散するロックン・ロールの雛形的なところはまったく飽きられないすごさとすばらしさに溢れており、日本でもアラジンの「完全無欠のロックンローラー」他、多くの例に顕著なように、その広い意味での絶対的なかっこよさは継承され続けた。

ザ・フー「サマータイム・ブルース」ジャケット撮影協力:中村俊夫

≪著者略歴≫

矢口清治( やぐち・きよはる):ディスク・ジョッキー。1959年群馬生まれ。78年『全米トップ40』への出演をきっかけにラジオ業界入り。これまで『Music Today』、『GOOD MORNING YOKOHAMA』、『MUSIC GUMBO』、『ミュージック・プラザ』、『全米トップ40 THE 80'S』などを担当。またCD『僕たちの洋楽ヒット』の監修などを行なっている。

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