2015年05月31日

本日はゴジラの映画音楽で知られる伊福部昭の誕生日。

執筆者:井上誠

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本日はゴジラの映画音楽で知られる伊福部昭の誕生日。生誕101年となる。


この春、新宿歌舞伎町に出現した実物大のゴジラ・ヘッドをご覧になった方も多いだろう。定時になると地上50メートルの高さにあるゴジラの頭部が光り、凄まじい咆哮と共に隣接する高層ビルを燃え上がらせるといった演出は歌舞伎町のイメージを一新させた。映画も昨年夏に大ヒットしたハリウッド版『ゴジラ』の続編(2018年公開)が決定し、本家東宝の国産ゴジラも来年夏の新作公開に向けて本格的に動き出した。昭和から平成に移行してもなお、ゴジラの人気は巨大化し続けている。
昨年、2014年は映画『ゴジラ』公開から60年、そしてその映画音楽を作曲した伊福部昭の生誕100年ということで、両者にちなんだ特別記念イベントが数多く催された。


まず2月1日にすみだトリフォニーホールで開催された『伊福部昭百年紀コンサート Vol.1』は、伊福部がゴジラなどのSF特撮映画のために作曲したオリジナルの楽譜を総勢100名のオーケストラで演奏したもので、7月に『Vol.2』、11月に『Vol.3』と続いた。ここでは伊福部が映画音楽の録音現場でおこなった先鋭的な音響実験を再現するため、楽譜に指定された鋸ヴァイオリンなどの特殊楽器も編入、さらに『Vol.3』では混声合唱も加えてコンサートホール全体に壮大な怪獣郷のパノラマを展開してみせた。すでに『Vol.1』『Vol.2』はCD化されている。伊福部昭 百年紀コンサート>


7月13日には東京オペラシティ大ホールで、第1作目の『ゴジラ』を上映し、音楽をオーケストラの生演奏で映像にシンクロさせるという画期的なイベントが開催された。映画制作当時は編集の都合上音楽を途中でカットアウトすることがあり、このイベントではそこもオーケストラの演奏を突然止めるなどして忠実に合わせていた。だが映画の終盤、海底下のゴジラが白骨化するまでの長尺シーンでは、途中セリフの入る箇所でも音楽をカットせず、伊福部が当初そのシーン全体を想定して作曲したレクイエムが荘厳に演奏された。その効果が産み出した圧倒的な感動は、『ゴジラ』という映画の奥深さを改めて伝えていた。伊福部昭音楽祭収録盤 >


このイベントの前日7月12日には、アメリカのイリノイ州パークリッジで『IFUKUBE 100 : A LEGACY OF MONSTER MUSIC』というコンサートも開催されている。こちらは初代『ゴジラ』から平成の『ゴジラVSデストロイア』まで、伊福部の手がけた全ゴジラ作品から選曲されたテーマ曲をオーケストラが演奏したもの。ゴジラファンにはお馴染みのテーマ曲が次々とハリウッド風のダイナミックな演奏で会場に響き渡り、興奮した観客達は足を踏みならして喝采を叫んでいた。IFUKUBE 100 : A LEGACY OF MONSTER MUSIC > 


11月には、生前の伊福部を捉えた貴重なドキュメンタリー映像『伊福部昭の自画像』もDVDで発売された。監督は特撮映像と現代音楽シーンの両方に長けた実相寺昭雄。伊福部昭の自画像 >


そもそも伊福部昭とはどのような人物で、どのような音楽的特徴を持っていたのか? という問いに、実にきめ細かく、かつ大胆に挑んだ好著も続々と発売された。木部与巴仁著『伊福部昭の音楽史』(春秋社)、小林淳著『伊福部昭と戦後日本映画』(アルファベータ)、片山杜秀責任編集『伊福部昭 ゴジラの守護神・日本作曲界の巨匠』(河出書房新社)。著者によって異なる視点から掘り込まれた伊福部の肖像は、併読することでより立体的に浮かんでくる。

最後に僭越ながら、筆者が30数年前に作ったレコード『ゴジラ伝説』シリーズもCD4枚組で発売された。ゴジラ伝説 >


 アナログ時代の電子機器で捏造された箇所はともかく、このシリーズにゲスト参加した当時のパンク/ニューウェーヴ系の人々が、伊福部をどれほど強くリスペクトしていたかを知る手がかりとして聴いていただけたら幸いだ。

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