2015年11月11日

「青春のひと粒」~グリコ チョコレートCMソンググラフティ 本日11月11日は「ポッキー&プリッツの日」

執筆者:不破了三

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ここ数年で急速に認知が広がった「記念日」の代表ともいえるのが、「11月11日はポッキーの日」ではないだろうか。菓子メーカー:江崎グリコのキャンペーンとして、平成11年(1999年)11月11日に「ポッキー&プリッツの日」が設定されたものだが、ここ数年のCM展開と、Twitter等のSNSでの盛り上がりでかなり多くの人に広がったように思える。そこで今回は、ポッキーをはじめとする「グリコのチョコレート」のCMソングのお話。


チョコレートのCMソングの代表格といえば、明治「チョコレートは明治」(いずみたく作曲)、ロッテ「小さな瞳」(浜口庫之助作曲)という、ライバル会社2社の作品がまず思い浮かぶはず。1960~70年代に作られ、今なお使用され続けている、CMソング界の大スタンダーナンバーである。翻ってみると、この2曲のように、長年にわたってチョコレートブランド全体を支えてきたようなCMソングが、グリコには「不在」であることに気づかされる。キャラメル菓子「グリコ」の誕生は1922年(大正11年)。ビスケット菓子「ビスコ」は1933年(昭和8年)の登場と、グリコ躍進の礎は確かにチョコレート菓子ではない。しかし、グリコのチョコレートの主力商品、「アーモンドチョコレート」の発売開始は1958年、「ポッキー」は1966年と、テレビ時代において決して「後発」というわけでもない。1963年に放映が開始されたテレビアニメ『鉄人28号』では、)オープニング・テーマのアタマとオシリに「グリコ、グリコ、グーリーコー!」と高らかにブランド名が歌い込まれていたのをご記憶の方も多いはず。テレビCM戦略で遅れを取っていたわけでもないのだ。


では、グリコのチョコレートが取ったCM戦略とはなんだったのか……? そのテーマは「青春」。主に「アーモンドチョコレート」「セシルチョコレート」を舞台に語られていった。きっかけは森田健作。1973年発売のシングル『青春のバラード~ひと粒の涙』(作詞:吉田旺、作曲:中村泰士)が、グリコアーモンドチョコレートのCMソングに起用される。1974年には岡田奈々を相手役に迎え、チェリッシュ『青春の坂道Part.I』『青春の坂道Part.II』(作詞:林春生、作曲:馬飼野俊一)が流れる新CMが登場。ここで「タイアップ曲」と「カップルを演じる男女タレント」という、グリコのチョコレートCMの「青春路線」が確定する。


1977年には、三浦友和&山口百恵という伝説的カップルの出演を得て、松崎しげる『愛のメモリー』(作詞:たかたかし、作曲:馬飼野康二)、続く1978年には、松山千春『季節の中で』(作詞曲:松山千春)という2連続の大ヒットにつながる。 8月28日の「大人のMusic Calendar」でもお話した、1970年代後半から盛んになってくる、歌謡曲/ニューミュージックとの同時ヒットを狙った、いわゆる「タイアップ型」のCMソング。この方法をいち早く採用していたのが、他ならぬグリコのチョコレートCMだったのである。


さらに1980年には、次世代の象徴、田原俊彦&松田聖子が登場。田原の第2弾シングル『ハッとして!Good』(作詞曲:宮下智)による爆発的ブレイクに一役買うことになる。そして1982年には、渡辺徹&小泉今日子が出演。渡辺のシングル『約束』(作詞:大津あきら、作曲:鈴木キサブロー)、『愛の中へ』(作詞:大津あきら 作曲:木森敏之)、『AGAIN』(作詞:康珍化、作曲:鈴木キサブロー)の3作は、立て続けにグリコチョコレートとのタイアップでヒットに結びついていく。「青春のひと粒」「今、君は青春」「カリッと青春」「僕らの青春は今始まったばかりだ」……などの名コピーとともに記憶に残るこれらの曲は、常にグリコのチョコのイメージと一体化している。明治、ロッテのように、ブランドイメージ全体を歌うのではなく、歌謡曲/ニューミュージックや人気タレントとのタイアップによって、日常から「チョコを食べるシチュエーション」をカッコよく切り出し、映像化してみせるという独自の方向性を打ち出した…… それがグリコのチョコレートCMの強さだった。その後もこの路線は、ALFEE『恋人たちのペイヴメント』、チェッカーズ『Heart of Rainbow』、南野陽子『秋からも、そばにいて』などへと引き継がれていく。


さて話題をポッキーに戻すと、「11月11日はポッキーの日」の認知に大きな役割を果たしたのが、やはり2010年のキャンペーン「エビバデポッキー宣言」のCMに登場したYMO(坂本龍一・細野晴臣・高橋幸宏)ではないだろうか。『テクノポリス』冒頭の「TOKIO」をもじって「ポッキーを」と連呼しつつも、音楽は『ライディーン』が流れ、映像自体はメンバーが無限に増えていく『増殖』のイメージ……? と若干チグハグな感じもしたのだが。2007年にキリンラガービールのCMに登場して以来にCM出演が、まさか「ポッキー」とは…… という驚きとともに、「大人のMusic Calendar」世代に「ポッキーの日」を刷り込んだのは、紛れもなくこのCMだったと思うのだが。

写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト

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