2015年08月30日
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2015年08月30日
2003年の今日8月30日は、米国の俳優、チャールズ・ブロンソンの命日(享年81歳)。音楽のことだけを掘り下げるこのコラムでは、ブロンソンといえばこれ一択、「マンダム〜男の世界」である。
西部劇を中心に野性味溢れる俳優として独特の個性を発揮しまくっていたブロンソンの日本での知名度を一気に高めたのは、1970年(昭和45年)に放映開始された化粧品メーカー・丹頂の男性化粧品ブランド「マンダム」のCMへの出演であった。事件とも言える海外の映画スターのCM出演、そしてキメのセリフ「うーん、マンダム。」のインパクトはあまりにも大きく、マンダムのブランド名はたちまち一般に浸透、丹頂も翌年から正式に「マンダム」へと社名変更してしまった程だ。
そして、同様に大ヒットとなったのが、このCMの付随音楽として使われた「マンダム〜男の世界」。70年7月25日に東芝リバティ・レーベルより発売され、洋楽としては異例のオリコン1位にランク、73万枚(オリコン調べ)という売り上げ枚数は、洋楽シングル としては歴代3位の大記録となっている。当時はCMソングのレコード発売という概念そのものが一般的ではなく、この大ヒットが以後のレコード業界に切り開いた道はあまりにも広い。
歌っているジェリー・ウォレス(Jerry Wallace)は、1958年デビュー、主にカントリー界で数多くのヒットを放っていた米国人シンガー。70年当時は米国のリバティに所属していたが、全くヒットが飛ばせない状態に陥っており、「ビートルズを日本に呼んだ男」の異名を持つキョードー東京社長・永島達司氏の肝入りにより、起死回生の起用と相成った。この大ヒットが起爆剤と成ったのか、本国では移籍先のデッカ・レーベルで再びヒット連発街道に突入している。
GSとサイケブームが落ち着いた69〜70年の日本のポップス界では、「次に来るのはポップ・カントリーだ」という声がどこからともなくささやかれ始め、ビクターが和製ポップ・カントリー専門レーベル、グリーン・シティを新設したり、大阪万博開催に乗じてカントリー歌手が次々と来日したりという動きが見られたものの、結局一般的に大きな盛り上がりを見せることはなかった。恐らく、ジェリーの起用はその流れに乗じたものと思われる。ブロンソンの持つ男臭さ、西部劇のイメージも、カントリー的なものに直結しそうであるが、楽曲そのものは意外にも洗練された仕上がりとなっている。作詞作曲を担当したMax & Howard Cainというコンビに関しては未だに謎が解明されておらず、その辺りが明らかになれば、より興味深い分析が行えそうな気がするのだが。
実はこの曲にはリアルタイムで日本語カヴァー・ヴァージョンが存在しており、寺本圭一とカントリー・ジェントルメンなどに在籍、日本にカントリーを啓蒙するべく地道に活動を続けていた斉藤任弘が歌い、同じ東芝リバティから後を追ってリリースされた(筆者監修協力によるコンピ「CMソング・グレイテスト・ヒッツ」に収録されている)。明らかにカントリー・ブームを盛り上げようという思惑が伺える人選だったが、残念ながら空振りに終わっている。
ちなみにベンチャーズの日本でのリリース元として長らく親しまれたリバティは、本国アメリカでは映画会社のユナイテッド・アーティスツに買収され、70年には死に体同然となっていたが、ベンチャーズの恩恵か、邦楽レーベルとしての使用が69年になって許可されている。既にフォークを中心に急進的レーベルとして確立されていたエキスプレスに対し、様々な洋楽テイストを取り入れたポップス歌謡を標榜するレーベルという立ち位置だったようだ(最初のリリースは、ハワイアン風味のムードコーラス、三浦正弘とハニー・ブラザーズの「イライラ東京」)。やがてアルファミュージック原盤制作によるレコードがこのレーベルの中核を成すようになり、赤い鳥が大ブレイク。あの荒井由実のデビュー曲「返事はいらない」もここからのリリースだった。
そして1995年には、ブロンソンをリスペクトするみうらじゅん・田口トモロヲ両氏が結成したユニット、ザ・ブロンソンズによるカヴァー・ヴァージョンが、25周年を祝うかの如くリリースされている。何と、ブロンソンの吹き替え声優といえばこの人=大塚周夫までフィーチャーされ、彼ら自身による新しい訳詞も男気溢れる痛快な仕上がり。うーん、マンダム!
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