2016年01月11日
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2016年01月11日
元祖三人娘の美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみの中で、ステージでもスクリーンでもいつも明るく元気な笑顔を振り撒いていたムードメーカーが江利チエミであった。いずれも同い年の昭和12年生まれの同い年で、ひばりは学年ではひとつ下になる5月生まれ、いづみは早生まれの3月生まれ、そしてチエミは僅かながら一番早い1月11日が誕生日。存命であれば79歳の誕生日を迎えるが、45歳の若さで突然世を去ってしまってから既に今年で34年もの月日が流れた。
“チーちゃん”などの愛称で親しまれた彼女、三人娘の間など極めて親しい人間から“ノニ”と呼ばれていたのは、いつも語尾に“~のに。”と付けて話すのが口癖だったことから。父親の久保益雄がミュージシャンだった関係で、幼い頃から進駐軍キャンプで歌っていたのは、当初は歌手への憧れというよりも生活を支えるためであったという。天性のフィーリングでポピュラーソングを歌いこなす少女・久保智惠美はキャンプのアイドルとなって“エリー”と呼ばれ、それが芸名“江利チエミ”の由来となる。進駐軍の兵士からプレゼントされた「テネシー・ワルツ」のレコードを自分のデビュー曲にという想いが通じ、キングレコードから昭和27年1月に念願のデビューを果たした。本国でもパティ・ペイジ盤がミリオンセラーとなり、後にテネシー州の州歌までなった「テネシー・ワルツ」は、焼け跡のジャズを代表する一曲として、日本人にとっても忘れることの出来ない名曲。それも、英語と日本語のチャンポンが特徴の江利チエミの歌唱で圧倒的に印象深いはずだ。
チエミがデビューした翌年には雪村いづみが「想い出のワルツ」でデビューし、人気を得たことで、既に活躍していた同年代の美空ひばりを加え、マスコミは“三人娘”として採り上げる様になる。歌謡曲を歌っていたひばりがポピュラーソングにもチャレンジしたのは、明らかに江利チエミらの影響といっていいだろう。ひばりの素晴らしいフィーリングを目の当たりにして、ポピュラー・シンガーとしてのチエミの競争心も大いにかき立てられたに違いない。親友にして佳きライバルの三人が切磋琢磨することで、良質な作品が次々に生みだされていった。それぞれ専属のレコード会社や事務所が異なっていたため、共演は雑誌などに限られたが、三人はやがて映画で奇跡的な共演を果たす。それが東宝で昭和30年に公開された『ジャンケン娘』で、チエミは「ウスクダラ」「裏町のおてんば娘」といったナンバーを披露して抜群の魅力を発揮する。歌はもちろんのこと、ハツラツな演技も高く評価された。映画を観れば解かる通り、彼女が登場すると画面がパッと華やかになるのだ。ひばりの絶大なるスター性、いづみの可憐な美少女ぶりとの絶妙なコントラストに圧倒される。
チエミの演技力は、続けて制作された三人娘の共演作『ロマンス娘』(31年)、『大当り三色娘』(32年)でも顕著だが、それ以前にも映画デビューとなった大映の『猛獣使いの少女』(27年)や新東宝の『青春ジャズ娘』(28年)などの主演作があり、早くから女優としての才能を開花させていた。31年には当たり役となった東宝の『サザエさん』に主演。好評を得て5年間にシリーズが10本も制作され、40年にスタートしたテレビドラマ版でも主演したほか、舞台でも何度も演じて、女優・江利チエミの代表作となる。他にもやはり東宝の『初恋チャッチャ娘』『大暴れチャッチャ娘』(共に31年)など、ミュージカル仕立ての作品が多く、38年には日本におけるブロードウェイ・ミュージカル初演となった『マイ・フェア・レディ』でテアトロン賞やゴールデン・アロー賞の栄誉に輝いている。30年代に日劇で恒例となったワンマンショー『チエミ大いに歌う』と同じタイトルの冠番組が40年にTBSで放映され、さらに『チエミとともに』へと発展、ドラマ『咲子さんちょっと』や『NHK紅白歌合戦』の司会など、テレビ時代が到来してからも、お茶の間の人気者として大活躍した。
ジャズ、ポピュラーだけでなく、歌謡曲から民謡に至るまで幅広いジャンルを歌った彼女にとって、最後の大きなヒットとなった49年の「酒場にて」は、山上路夫が詞を、鈴木邦彦が曲を手がけた傑作。飲酒が早逝の原因となってしまったことを考えるとちょっとつらい内容ではあるが、今後も多くの人に聴かれ、歌い継がれてゆくべき一曲である。大衆に愛された大スターは、天国で親友・美空ひばりや、かつてのパートナー・高倉健たちと、今宵も楽しく酒を酌み交わしているに違いない。永遠のジャズ娘に乾杯!
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