2018年02月16日

2月16日は高倉健の誕生日~歌手としてのヒット曲も多い昭和の大スター

執筆者:鈴木啓之

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1955年にニューフェイス第2期生として東映へ入社した高倉健は、『日本侠客伝』シリーズ』や『網走番外地』シリーズ、『昭和残侠伝シリーズ』などの任侠映画を中心に東映の看板スターとして活躍し、フリーに転向した76年以降は『八甲田山』や『幸福の黄色いハンカチ』、80年代以降は『駅 STATION』をはじめとする東宝の大作に主演するなどして各種映画賞を受賞した。99年に『鉄道員(ぽっぽや)』で日本アカデミー賞とブルーリボンの主演男優賞をダブル受賞したのは記憶に新しいところ。不器用で寡黙なイメージながら歌手としても多くの作品を遺しており、「網走番外地」や「唐獅子牡丹」のヒットもある。2月16日は高倉健の誕生日。もし存命であれば87歳になる。1931年生まれの氏は2014年に83歳で惜しまれつつ世を去ったのだが、何故かまだ実感が湧かないのは、もともと住む世界が違うスターの中でも特別な大スター、あまりに現実とかけ離れた存在だったからであろうか。



往年のスターにありがちなエピソードとして、もともとは役者志望ではなく、美空ひばりが所属していた新芸プロのマネージャーになるために面接を受けたところ、たまたま居合わせた当時の東映東京撮影所所長・マキノ光雄にスカウトされ、東映ニューフェイス第2期生としての入社が決まったという。カメラマン志望なのに俳優として採用されてしまった東宝の三船敏郎のエピソードに似ている。時代劇が主流だった東映で、アクションものや文芸作品、喜劇などの様々なジャンルの現代劇に出演した後、ターニングポイントとなったのは63年に出演した『人生劇場 飛車角』であった。鶴田浩二の主演で沢島忠がメガホンをとった同作は後の任侠路線の先駆けとなった作品で、高倉は準主役の宮川健役を好演して脚光を浴びる。主題歌は映画にも出演した村田英雄の「人生劇場」だった。そして翌64年の『日本侠客伝』では主役に抜擢されてシリーズ化され、さらに65年から始まる『網走番外地』シリーズ、『昭和残侠伝』シリーズなどで押しも押されもせぬ看板スターとなっていったのだが、実は歌手デビューは意外と早かったのである。


高倉健の歌手としての最初のレコードは58年、キングレコードから出された「その灯を消すな」。キングの専属作家だった横井弘の作詞、飯田三郎の作曲によるもので、SP盤で発売されている。ちなみに勝新太郎の歌手デビューは55年、三船敏郎の歌手デビュー(にして唯一の盤となった)は56年と、この辺はかなり近い。58年といえば、映画の観客動員数がピークに達した年であるから、新たな歌う俳優の誕生には最適のタイミングだったといえるかもしれない。さらに翌59年にも「野暮は言うなよ」「愛のブルース」を出しており、「愛のブルース」はこの年結婚した江利チエミが作詞・作曲を手がけた。結婚記念日は高倉の28歳の誕生日にあたる2月16日である。しかし江利の親族にまつわるトラブルが原因で71年に離婚することとなり、82年には江利が若くして世を去ってしまうが、その後高倉は毎年の命日に欠かさず墓参して花を手向けていたという。不幸な事情で別れた後も、高倉の江利への想いはずっと変わらなかった。ずっと後の主演作『鉄道員(ぽっぽや)』で江利の代表作「テネシー・ワルツ」が印象的な使われ方をしたのは心温まるエピソードである。


久しぶりのレコーディングとなった65年の「網走番外地」は、戦前の31年に田谷力三らが歌った映画主題歌「レヴューの踊子」が原曲であり、ヴァイオリニストでもあった作曲家・橋本國彦が足利龍之助のペンネームで書いたもの。結局は遺族からの申し出がなかったため、「網走番外地」は作曲者不詳のままで現在に至っている。その後、網走の受刑者の間で歌い継がれて浸透していった歌は歌詞に香具師の隠語が使われていたことで放送禁止の憂き目に遭ってしまうが、同名映画の主題歌として高倉が歌い、テイチクから発売されたレコードは大ヒットした。歌は封印していた高倉であったが、石井輝男監督の説得に応じて録音が実現したのだという。主題歌のおかげで映画も絶大な支持を得ることとなった。このヒットにより歌のオファーが相次ぎ、キングから「男の裏町」「男の誓い」などが出されてヒット。『昭和残侠伝』の主題歌として出された「唐獅子牡丹」がまた大きなヒットを記録した。「網走番外地」はキングでもレコーディングされている。その後もポリドール(現・ユニバーサル)から出された「男ごころ」や、コロムビアからの「望郷子守唄」などリリースは潤沢で、あまり歌わなかった80年代では唯一83年に出された映画『居酒屋兆治』の主題歌「時代おくれの酒場」が印象深い。加藤登紀子の作による静かなバラードは、年齢を重ねて渋みを増した高倉によく合っており、本人も気に入ってのレコーディングだったようだ。意外なところでは、94年に裕木奈江と歌った「あの人に似ている」という曲がある。JRAのCMで共演した流れで企画されたとおぼしき異色のデュエット。中島みゆきとさだまさしの共作という贅沢な作品であった。



「網走番外地」「唐獅子牡丹」「望郷子守唄」ジャケット撮影協力:鈴木啓之


≪著者略歴≫

鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。


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