2016年02月23日
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2016年02月23日
2月23日は中島みゆきの誕生日。1975年に「アザミ嬢のララバイ」でデビューして40年を過ぎた今も、彼女は日本の音楽シーンに圧倒的な存在感を放ち続けている。
今年に入ってからでも、昨年11月から始まっていた東京と大阪のみで計15公演というコンサート「一会」の千秋楽が、2月11日に東京国際フォーラムで終わったばかり。それと入れ替わるように、2月20日からは、全国の映画館で『夜会Vol.18 橋の下のアルカディア-劇場版-』上映がスタートするなど、話題は尽きない。
ちなみに、『夜会』とは1989年に中島みゆきがスタートさせた舞台公演。中島みゆきが脚本、作曲、作詞、歌唱、主演を中島みゆき自身が担当するという、彼女の活動のなかでは実験的でマニアックな舞台とも言えのではないかと思う。しかし、毎回、圧倒的な人気で、約一か月のロングラン公演なのだが、チケットをとるのがもっとも困難な催しのひとつと言われている。そんな『夜会』を、より多くの人に体感してもらうための機会として、2014年に上演された『夜会Vol.18 橋の下のアルカディア-劇場版-』が画館で上映されることになったのだ。映画館ででもいいから『夜会』を見たいという人がこれほど多いこと自体が、中島みゆきの魅力の奥深さを物語っているのだと思う。
しかし、どうして中島みゆきの世界は、これほど僕たちを惹きつけるのだろう。
たとえば、最近は結婚式ソングとしてすっかり定着している「糸」という曲。もともとは1992年のアルバム『EAST ASIA』の最後に収められていた曲だ。後にシングル「命の別名」(98年)のカップリング曲となってはいたが、この時期の「浅い眠り」(92年)や「空と君のあいだに」(94年)などのヒット曲と比べて、けっしてクローズアップされた曲ではない。それがいつか、Bank Bandをはじめ多くのシンガーによってカバーされるようになり、この曲を耳にした人たちが自然に自分たちでも歌うようになっていった。まさに、曲そのものの力によって、じわじわと浸透していったのだ。そんな曲の広がり方そのものが、宣伝と大量露出による今どきのヒット曲づくりのギミックへの批評となっているような気もする。
中島みゆきは、変わっていく時代を静かに見つめながら、時の流れからこぼれ落ちていこうとする人の心の機微をていねいに拾って、そっと寄り添って優しく包み込んでいくように歌を紡いでいく。そんな彼女の歌の力に、聴き手は心の深い部分で感応していくのだ。
中島みゆきは、大人の男をも遠慮なく泣かせる。「地上の星」「ヘッドライト・テールライト」だけではない。ちょっと気恥ずかしくて声高には言えないが、アルバム『真夜中の動物園』(2010年)に収録されている「鷹の歌」や、吉田拓郎に贈った「永遠の嘘をついてくれ」を聴くたびに瞼が熱くなるし、TOKIOが歌う「宙船(そらふね)」も琴線に響くものがある。これらの歌には、僕自身を無防備にしてしまう魔力があるようなのだ。
中島みゆきがこれまで発表してきた多くのアルバムの中にも、まだまだいつか多くの人々に“発見”されることを待っている多くの名曲が潜んでいるに違いない。それは、古い曲であるか新しい曲であるかは関係ない。そして、聴き手が男だろうと、女だろうと、そして若かろうと年老いているかにも。本気で中島みゆきの世界と向きあってみれば、自分にとっての名曲、これぞ自分のためにあると感じられる曲が、きっとどこかでみつかるだろう。
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