2017年12月12日

12月12日は青春歌謡 永遠のプリンス・舟木一夫の誕生日

執筆者:鈴木啓之

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作曲家・遠藤実の下でレッスンを重ね、「高校三年生」で颯爽とデビューした舟木一夫は、詰め襟姿をトレードマークに一躍時代の寵児となる。先にデビューしていた橋幸夫、後に続いた西郷輝彦と共に“御三家”と呼ばれ、青春歌謡ブームを牽引した。ちょうど東京オリンピックが開催される頃にヒットを連ねた歌謡界の若きスターの活躍は、高度経済成長時代、そして歌謡曲の黄金時代に重なる。その後、不遇の時代もあったが1990年代になると人気が再燃し、92年には21年ぶりの紅白歌合戦出場も果たした。多くの主演映画や舞台、テレビ時代劇などでも知られ、現在も定期的にコンサートを開くなど、当時からの根強いファンに支持されて活躍を続けている。本日12月12日の誕生日を迎えて73歳となった舟木一夫はいつまでも若々しい青春歌謡のプリンスである。


丘灯至夫の作詞、遠藤実の作曲によるデビュー曲「高校三年生」が出された63年は、戦後のエポックとなった一大イベント、東京オリンピックを翌年に控えた時代の変わり目。レコードの世界もそれまでのモノラル録音からステレオ録音への移行期であった。老舗メーカーの日本コロムビアでも歌謡曲のシングルおよびLP盤が各社一斉にステレオへと切り替えられて間もなく生まれたヒットが「高校三年生」だったのだ。高校在学中から、恩師・遠藤実の下でレッスンを重ねた舟木一夫は、卒業してまもなくのデビューとなった。ちなみに舟木一夫という芸名は、やはり遠藤実に師事していた橋幸夫がデビューする際に考えられていたもので、結果ビクターからデビューした橋が、もしコロムビアからデビューしていたらこの名前になっていたかもしれないというエピソードがある。


コロムビアではそれ以前から、神戸一郎や北原謙二ら、青春ソングを歌って人気を得ていた歌手は存在していたが、いわゆる“青春歌謡”というジャンルがはっきりと確立したのは舟木の登場からといっていいだろう。自前の詰め襟の制服でジャケット撮影に臨み、テレビの歌番組でも詰め襟姿で歌われた「高校三年生」に続き、「修学旅行」「学園広場」の学園ソング三部作を立て続けにヒットさせて、揺るぎないスターの座を獲得した。その後を追うようにビクターからデビューした三田明のデビュー曲「美しい十代」も「高校三年生」を大いに意識したものであったと、作曲した吉田正自身が後に語っている。マスコミはビクターの橋幸夫、コロムビアの舟木一夫、クラウンの西郷輝彦を「御三家」と呼んだが、三田明を加えて「四天王」と呼ぶこともあったようだ。60年デビューで少し先輩になる橋よりも、デビューが近かった舟木、西郷、三田のトリオの方が収まりがよい気がするし、最近では実際にその3人でのコンサートも催された。もちろんリーダーは年長の舟木であった。


舟木はその後も「仲間たち」「あゝ青春の胸の血は」「君たちがいて僕がいた」などヒットを連ね、同じコロムビアから梶光夫や安達明ら強力な新人が後を追う中で人気を保ち続けた。66年に出された「絶唱」は大ヒットを記録してレコード大賞候補曲にもなったが、結局軍配は最有力候補だった加山雄三「君といつまでも」でも「絶唱」でもなく、橋の「霧氷」に上がる。熱心な舟木ファンはきっと納得出来なかったに違いない。しかしこの前後、舟木の出す曲はヴァラエティに富んでいて実に面白いのだ。「絶唱」の前のシングル「太陽にヤァ!」は落ち着いた感じの曲が多い舟木には珍しい夏全開のリズム歌謡で、それは翌年のサマーソング「夏子の季節」でさらにスパークする。どちらも船村徹の作曲というのが少々意外なところ。66年のシーズンに出された「ジングル・ベル」は、これぞ昭和のクリスマスといった趣の最高のアレンジで、快活な歌声を聴かせてくれる名カヴァーである。洋楽スタンダードのカヴァーでは、68年の「知りたくないの/恋心」でも善戦を見せた。青春歌謡のスターが歌うシャンソンナンバー。ちょっと珍しいシングルではなかろうか。



最後に、明るい舟木ソングの真骨頂として、67年12月に東宝で公開された主演映画『君に幸福を センチメンタル・ボーイ』の主題歌「センチメンタル・ボーイ」を紹介しておきたい。青春の息吹が漲る、突き抜けて明るいメロディ。舟木の歌では「銭形平次」の主題歌が好き、という向きならきっと魅了されるはずだ。映画の公開に先行してシングル発売された後、コンパクト盤『舟木一夫のセンチメンタル・ボーイ』も出された。劇中でケーキ職人に扮した舟木が披露する「お菓子の好きな少女」など、主題歌・挿入歌で構成されたサントラ盤とも言うべきEPの4曲はいずれも山屋清の作曲で、舟木の無邪気な側面を存分に引き出した素晴らしい仕事である。東宝で舟木が主演した映画では、内藤洋子「白馬のルンナ」を生んだ『その人は昔』が有名であろうが、個人的には内藤との共演による2本目『君に幸福を センチメンタル・ボーイ』を推したい。なお公開時の同時上映作品は『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』であった。



※吉田正の「吉」は「土に口」ですが、システムの都合で、「吉」とさせていただきます。

「夏子の季節」「知りたくないの」「センチメンタル・ボーイ」「銭形平次」撮影協力:鈴木啓之


≪著者略歴≫
鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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