2019年07月17日

2006年7月17日、サンタナ『ロータスの伝説 サンタナ・ライブ・イン・ジャパン』がギネスブックに認定

執筆者:磯田秀人

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これからも絶対破られないであろう金字塔が正式に認定された日。


13年前の今日、2006年7月17日付けギネスブックにサンタナ世界初のライブ・アルバム『ロータスの伝説 サンタナ・ライブ・イン・ジャパン』が世界最大のジャケットを持つLPとして認定された。


1974年5月21日に3枚組のLP『ロータスの伝説』が発売されてから11,745日目の快挙だった。


ニュー・サンタナ・バンドの初来日は1973年6月25日。ターボプロップ機ロッキード・エレクトラをチャーターして福岡板付空港に着陸した。


『ロータスの伝説』が発売された1974年とはどんな年だったのか。


沢田研二のポスターの前で「ジュリー〜」と身悶えする悠木千帆(故・樹木希林)が話題となったテレビドラマ『寺内貫太郎一家』が高視聴率をとり、井上陽水の『氷の世界』がアルバム年間第1位となった。


世相を表すキーワードは終末論。1999年7月に地球は壊滅すると解説された『ノストラダムスの大予言』やSF作家小松左京の『日本沈没』がベストセラーとなり、テレビの超能力番組が話題を呼んでオカルトブームに沸いていた。


そんな最中にサンタナは初来日公演を行った。


69年の夏に、4日間で40万人を動員したウッドストック・フェスティバルで華々しくデビューしたサンタナはラテン・ロックと呼ばれていたが、朋友ジョン・マクラフリンの影響でインドのグル(導師)シュリ・チンモイに傾倒。


来日前に発売された『キャラバンサライ』はジャズ的要素も加わり、スペーシーなサウンドに変身していた。


前年レコーディング初体験で『シカゴ・ライブ・イン・ジャパン』を制作した勢いにのってサンタナ世界初のライブ・アルバムを日本で制作したいとアメリカCBSに申請した。許諾がもらえたのは来日の2ヶ月前。


『キャラバンサライ』である程度予想はしていたものの、6月27日九電体育館の初日公演、2時間半ノンストップの演奏には心底感動した。


シカゴの時はプロデューサーのジェイムス・ガルシオが録音をやってくれたけれど、今回は自分でやらなければならない。ほんとに出来るのかよお前は!と我ながら呆然としていた。


ぼく同様新人ではあるけれど、録音エンジニアの鈴木智雄さんの力量を信じて委ねるしかない。


当初からサンタナのライブ盤のアートワークは横尾忠則さんにお願いするつもりだった。以前はヤクザ映画や小劇団のポスターなどで土着性をにおわせていた横尾さんのデザインの中に、UFOやキリストやオカルトや宇宙的要素が現れ始めたことにぼくは注目していた。カルロスと横尾さんは同じ方向にシフトしている。


大阪のホテルのカルロスの部屋で、発売されたばかりの『終末から』の創刊号に掲載されていた横尾さんの蛇腹式カラーグラビア「豪華絢爛長尺絵巻 千年王国」を広げると、カルロスはゆっくりと合掌した。


レコーディングは7月3日、4日の2日間。その後約1年かけて選曲、OKテイク選び、トラックダウン、曲つなぎ、アートワーク等の許諾を得るためサンタナ側と膨大な量のテレックスのやり取りが行われた。


トラックダウンはすべて手作業。エンジニアの鈴木さんの手が足りなくなりぼくがパンポットで音を動かした。


デザイナーの田島照久さんと横尾さんとのアートワークの打ち合わせはまるで文化祭の展示物を考える学生気分で盛り上がった。その結果が前代未聞の22面ジャケットだ。 


ギネスブックのこの記録はいまだに破られていないし今後も破られることはないだろう。


『ロータスの伝説』や『シカゴ・ライブ・イン・ジャパン』のみならず、70年代の洋楽に興味のある方はぜひ電子書籍『きっかけ屋アナーキー伝』をお読み頂きたい。ロックが激しく共振した時代のレコード会社の勢いを感じて頂けると思います。


電子書籍『きっかけ屋アナーキー伝』>

≪著者略歴≫

磯田秀人(いそだ・ひでと):1970年CBSソニー・レコード入社。シカゴ、サンタナ、ジャニス・ジョプリンなど洋楽のロックを担当。後にセンチメンタル・シティ・ロマンス、四人囃子など国内制作を手がけ、その後書籍のプロデュース、作家マネージメントなどを行う。自称きっかけ屋。

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