2015年06月28日

フォークゲリラWORD

執筆者:中川五郎

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1969年の6月28日、新宿駅西口地下広場でのフォークゲリラ集会に道路交通法を適用した機動隊が突入した。


地下広場や地下通路、駅前や商店街の路上などでフォークソングを歌うフォークゲリラと呼ばれる人たちが日本のあちこちに現れたのは1969年になってからのことだった。
最もよく知られているのは東京の新宿西口のフォークゲリラで、資料によると彼らが最初に新宿西口の地下広場で集会を開催したのは2月の終わりとされている。もしかすると関西ではそれよりも早く路上や地下通路にみんなで集まってフォークソングを歌う動きが始まっていたかもしれない。


その時フォークゲリラと呼ばれる人たちがよく歌っていたのは、その二年ほど前に始まり、一、二年のうちに大きな広がりを見せるようになった日本のフォークソングの動きの中で歌われていた歌で、その中心にいた高石ともやさんや岡林信康さん、高田渡さんたちが自分で作ったり、アメリカのフォークソングを訳して歌っていた歌を、そのまま歌ったり、替え歌にして歌ったりしていた。同じ頃に高石さんたちと一緒に人前で歌うようになったぼくの歌もフォークゲリラの集会でよく取り上げられて歌われていた。もちろん日本各地のフォークゲリラと呼ばれる人たちが自分たちで作った歌もたくさんあった。


ところが同じ歌を共有しながらも、今振り返って考えてみると、フォークゲリラと呼ばれる人たちと日本で最初に活動を始めたフォークシンガーの人たちとはあまり仲がよかったとは言えない。高石さんや岡林さんがフォークゲリラの集会に参加したことは、ほとんどなかったか、それこそ数えるほどしかなかったのではないだろうか。高田渡さんに到っては、「今はやりの関西フォークはもうそろそろ限界に来たんだとさ/高石や岡林の歌はもう前世紀の遺物だとさ/そんなことを言った後にやつらは歌っていた/関西フォークの大昔のレパートリー」と、フォークゲリラを批判する「東京フォークゲリラの諸君達を語る」という歌まで作って歌っていたし、フォークゲリラと呼ばれる人たちの中からは高石さんや岡林さんを「商業主義に走っている」と痛烈に批判する者たちも出てきた。


日本各地で同時多発的に出現したフォークゲリラの動きの中心となっていた人たちは、1960年代後半、アメリカが推し進めるベトナム侵略戦争、それを後押しする日本政府、そして1970年の日米安保条約自動延長に反対し、抗議する市民の集まり、ベ平連(ベトナムに平和を! 市民連合)で活動している人たちと重なることが多かった。そしてぼくは高校二年生の頃、人前で歌い始めるのと前後してベ平連の活動にも共感して参加し、そこで活動している人たちと知り合いになったり友だちになったりした。二年後に各地でフォークゲリラの動きが広がった時も、そこにはよく知っている人たちがいたので、自然と関わるようになった。すでにフォークシンガーの一人として「商業主義」的な活動もしていたが、ぼくはコンサートに出演もすれば、フォークゲリラの集会にも参加して歌うと、ほかの歌い手たちとはちょっと違う、ある意味どっちつかずの「ずるい」立場に自分を置いていたと言える。


日本のフォークゲリラの動きを象徴する新宿西口の地下広場でのフォークゲリラの集会は、1969年の5月の終わりから7月はじめにかけて、7000人もの人たちが集まるとても大きなものとなったが、7月半ばには機動隊が出動し権力の圧倒的な力で押しつぶされてしまった。日本各地のフォークゲリラの動きも同じような弾圧を受けた。
このフォークゲリラの動きを音楽的なものとして捉える人もいるが、46年後の今振り返ってみて、ぼくはあれはフォークソングをひとつの手段とした民衆の集会、民衆の行動だったと思う。みんなで集まって歌ったり、会話したり、討論したり、抗議したりしたということがいちばん重要なのであって、そこで歌われた歌のことについて、それが誰のものだったかとか、歌のクォリティはどうだったのかなどをうんぬんするのは二の次で、ちょっと的外れではないのかという気がする。


しかしそこにはフォークソングと呼ばれる、それまでにあった音楽とは異なる、そして従来の音楽という枠組みの中ではまったく捉えきれない、社会や自分たちの生き方と強く結びついた、歌であって歌でない新しい表現が芽吹いていたのだ。

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中川五郎

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