2015年09月23日
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2015年09月23日
1996年9月23日、戦後日本の子ども文化に大きな足跡を残した漫画家:藤子・F・不二雄がこの世を去った。今なお、テレビアニメ『ドラえもん』が放送され続け、その他顔なじみのキャラクターたちも様々な広告・商品に採用され続けているのでにわかには信じがたいのだが、来年にはもう没後20年を迎えるのだ。
今でこそ、藤子・F・不二雄といえば『ドラえもん』だが、それ以前に空前の大ブームを巻き起こした先輩キャラクターがいるのを忘れてはならないだろう。1964年に『週刊少年サンデー』(小学館)誌上で連載がスタートした『オバケのQ太郎』である。藤子作品とは言いつつも、実際には、当時「藤子不二雄」として活動していた藤子・F・不二雄、藤子不二雄Ⓐの両氏、さらに石ノ森章太郎、つのだじろう、赤塚不二夫等が所属していた「スタジオ・ゼロ」の面々も作画に参加しているという、史上稀にみる多数の作家による合作マンガであったのが実態だ。
翌1965年にはTBS系日曜19時半の「不二家の時間」枠でテレビアニメ化もされ、主題歌「オバケのQ太郎」(作詞:東京ムービー企画部、作編曲:広瀬健次郎)は、第8回日本レコード大賞童謡賞を受賞するほどの大ヒットとなる。歌手を務めた石川進は、オバQに続くアニメ『パーマン』(1967)、『ウメ星デンカ』(1969)でも主題歌歌手を担当し、「藤子アニメの顔」として親しまれるとともに、1965年放送開始の日本テレビ『おはよう!こどもショー』では司会に抜擢されるなど、一躍子どもたちの人気者となっていく。
さらに、1966年夏のシーズンからの新主題歌となった、「オバQ音頭」(作詞:藤子不二雄、作編曲:広瀬健次郎、歌:石川進・曽我町子)は、シングルレコードで200万枚、ソノシートで400万枚(プレゼント配布等を含む)といわれる空前絶後の大ヒットソングとなる。日本で過去、最も売れたシングル曲は「およげ!たいやきくん」(1975/歌:子門真人)の約450万枚といわれているが、レコードとは販路が違い、実数が把握しにくい「ソノシート」というメディアを含めた売上・配布数の合算がもしも可能であったらなら、「オバQ音頭」のほうが圧勝してしまうのだ。オバQの人気はそれにとどまらず、『新オバケのQ太郎』(1971/日本テレビ系)、『藤子不二雄劇場 オバケのQ太郎』(1985/テレビ朝日系)と、1960年代、70年代、80年代と、3回のテレビアニメ化を重ね、およそ20年間に渡って子どもたちに笑顔を提供し続けてきたのである。
しかし、1988年(昭和63年)に「藤子不二雄」の両氏がコンビを解消するのとほぼ同じタイミングで、オバQのコミックスはほぼ絶版状態になり、アニメのソフト化もされなくなっていった。理由は明らかにはされておらず、怪しげな「大人の事情」の噂だけが独り歩きしていった。以来、Qちゃんは僕らの街から姿を消してしまったのだ……。
1967年に竣工した小学館本社ビルは、初期の『オバケのQ太郎』の大ヒットによる収益で建てられた、という噂から、通称「オバQビル」と呼ばれていた。オバQ人気とはそれほどまでに凄まじい、まさしく「オバケ」だったのである。そして2013年9月、老朽化を理由に、その小学館本社ビルの取り壊しが開始された。その直前には大勢の漫画家が別れを惜しみ、壁面や窓ガラスに落書きをしたというニュースを耳にした方も多いだろう。
そして不思議なことに、オバQビルが「この世」から消え去った2015年、あの懐かしき「てんとう虫コミックス」の名で、新装版『オバケのQ太郎』の刊行が開始されたのである。もしかしてオバQビルは、20数年もの間、僕らとQちゃんとを隔てていた様々なワダカマリや「大人の事情」を、一緒に「あの世」へ連れて行ってくれたのではないか ……そう思えてならないのだが。
さぁ、Qちゃんが僕らの街に帰ってくる!
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