2015年10月14日
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2015年10月14日
この秋、人気アニメ『ルパン三世』の30年ぶりとなる新シリーズのテレビ放映が話題となっているが、「大人のMusic Walker/Music Calendar」世代の諸兄にとって忘れがたいルパンといえば、1971年放映のアニメ初代『ルパン三世』ではないだろうか。通称「旧ルパン」「青ジャケルパン」などと呼ばれる最初のアニメ化作品である。前半は、モンキー・パンチの原作コミックのテイストが色濃く残ったハードボイルドな味わいだったものが、後半は、後にスタジオジブリを起こす宮崎駿、高畑勲両氏の参加によりエンターテインメント路線に修正されるなど紆余曲折を経て、結果的には全23話で打ち切り終了となっている。しかし、後の新シリーズやテレビスペシャル版とはひと味違った「大人のルパン」として、また、後の作り手たちの多くが憧れ、オマージュを捧げる「ルパンの原点」として、今なお絶大な人気を誇っている作品でもある。そして、そのエンディング・テーマ「ルパン三世主題歌II」で、峰不二子が走らせるバイクのシルエットを背景に浮かぶ「歌:チャーリー・コーセイ」の文字……。当時のアニメ主題歌の常識を超越した大人のニオイのする歌声が、このナゾの名前とともに心に焼きついている方も少なくないはずだ。今日、10月14日は、歌手・ギタリストのチャーリー・コーセイの誕生日である。
チャーリー・コーセイは1950年、神戸生まれ。アメリカ人の父親と中国人の母親を持つが、既に日本に帰化した日本人である。インターナショナル・スクールの中学時代からバンド活動を始め、高校卒業後の1968年にはブルース・ロック・バンド「ザ・ヘルプフル・ソウル」のベーシスト兼ボーカリストとしてデビューしている。ビクターから1969年に発売された唯一のオリジナルアルバム『The Helpful Soul First Album~ソウルの追求』は、ニューロック期の名盤として、海外を含め、今でも評価が高い。同じく1969年には手塚治虫率いる虫プロ製作による劇場用アニメ『千夜一夜物語』に参加。冨田勲による楽曲と、ヘルプフル・ソウルのサイケデリックな演奏とのミクスチャーという、当時のアニメ映画としてはあまりにも型破りなサウンドトラックを創造したのは、同映画の音響監督を務めた田代敦巳の眼力であった。そして1971年、新作テレビアニメの音楽に必要なクールな歌声の持ち主として、田代がチャーリーに再び声をかけた…… それが『ルパン三世』である。
主題歌・BGMを含む『ルパン三世』の音楽は、6月26日のカレンダーでもお話した作曲家:山下毅雄の手によるもの。初見の譜面で次々と演奏が進められていくプロのスタジオ・ミュージシャンの録音現場は、セッションを重ねてサウンドを磨き上げる、真逆のスタイルで演奏経験を積んできたチャーリーにとって苦心の連続であったという。また、いくつかの劇中曲で聴かれる、歌詞ともセリフとも付かない断片的な英語は、スタッフからは「なにか英語で言って下さい」と言われた程度で、言葉の選択からタイミングまで、ほとんど彼のアドリブだというから驚きだ。このハプニング性を味方に付けたスリリングな音楽の作り方こそ、山下毅雄ならではマジックである。
チャーリーは『ルパン三世』の後も、テレビアニメ『荒野の少年イサム』(1973)、特撮ドラマ『電撃!!ストラダ5』(1974)、時代劇『幡随院長兵衛お待ちなせぇ』(1974)などの主題歌をチャーリー・チェイ、チェイ光星などの名義で歌っている。また、ギターの名手としても知られ、同じく神戸出身のギタリスト:大村憲司と組んだ双頭ギターバンド「チャーリー&大村憲司グループ」の凄まじい演奏などは、関西ロック界における伝説の一つとして語り継がれている。
その後一時期は、ルパンのイメージだけで見られたくないと「ルパン三世主題歌II」を歌うことはなかったチャーリー。しかし現在では、この歌がいかに多くのルパンファンの心に深く根付いているかを知り、大事に歌っていくべき歌として、積極的に披露するようになったという。チャーリー・コーセイは、自身の店「Uncle Charlie」(神戸市中央区)を拠点に、今夜もギターを弾き、あの「大人のニオイ」のルパンを歌い続けている。
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