2016年02月25日

名前を変えて大ヒット。<出世魚楽曲>の典型「亜麻色の髪の乙女」誕生秘話。

執筆者:中村俊夫

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今から48年前1968年の今日2月25日は、ヴィレッジ・シンガーズの通算5枚目のシングル「亜麻色の髪の乙女」がリリースされた日である。元々フォーク・ロック・バンドとして誕生し、66年に「暗い砂浜」でレコード・デビューを果たすもヒットに恵まれず、シングル2枚を出して活動を休止。67年夏にメンバーを一新して「バラ色の雲」で再デビュー後は、折からのGSブームの追い風もあって順調にヒットを飛ばしていった彼らにとって、「亜麻色の髪の乙女」は初の(そして唯一の)オリコンTOP10内ランクイン(7位)作品で、最大のヒット曲である。


現在もGS名曲のひとつとして多くの人に親しまれ、ヴィレッジ・シンガーズの代表曲として認知されている「亜麻色の髪の乙女」だが、実はヴィレッジ・シンガーズ以前にこの曲をレコーディングしたアーティストがいた。60年代に活躍した女性シンガー、青山ミチである。


1949年2月7日、在日米軍人の父(その後、妻と娘を捨て帰国してしまう)と横浜で実母の経営するバーで働いていた母との間に生まれた青山ミチは、13歳の時に横浜のジャズ喫茶『テネシー』主催のコンテストに参加。弘田三枝子のデビュー曲として知られるヘレン・シャピロの「子供ぢゃないの」を歌って入賞したことがきっかけとなり、ポリドールより62年10月「ひとりぼっちで想うこと」でデビューした。


パンチの利いたパワフルな歌いっぷりとグラマーな肢体で脚光を浴びた彼女は「ミッチー」の愛称で親しまれ、後に遠藤賢司もカヴァーした「ミッチー音頭」(63年)、エミー・ジャクソン盤と競作となった「涙の太陽」(65年)などのヒットでスターダムにのし上がっていった。


1966年夏、彼女の通算25枚目のシングルとなる新曲の制作が開始される。フジテレビのディレクター時代から作曲活動を始め「涙のギター」(スプートニクス)のヒットを放っていたすぎやまこういちと、「青い瞳」「青い渚」など一連のブルー・コメッツ楽曲に歌詞を提供していた橋本淳のコンビによる書き下ろし作品で、タイトルは「風吹く丘で」。


後年の橋本淳の証言によると、青山ミチの新曲という依頼を受けた時点で、少しブロンドがかった長い髪を風になびかせながら丘を駆け下りてくる青山ミチの姿を思い浮かべたという。「亜麻色の長い髪を風がやさしく包む」「乙女は風のように丘を下る」といったフレーズはそんなインスピレーションから生まれたのである。


サウンド面でも当時流行のフォーク・ミュージックを取り入れ、それまでのパワフルな唱法から一転、しっとりとしたバラードを歌いこなす青山ミチの新機軸を打ち出した新曲だったが、66年11月の発売日直前に彼女が覚せい剤所持容疑で逮捕される(移籍トラブルという説もある)という アクシデントが発生し急遽発売中止。店頭から回収するも通達が間に合わず、すでに販売されてしまった店も数店あったという。 


 
その後、青山はクラウンに移籍。72年までに13枚のシングルをリリースして「叱らないで」(68年)等のヒットを放ったが、失踪・万引き事件・覚せい剤所持などのスキャンダルで世間を騒がせ、結局芸能界から追放されてしまう。99年には三度目の覚せい剤所持容疑で逮捕。実刑判決を受け、以後表舞台から姿を消している。 


一方、「風吹く丘で」は1年8カ月後にヴィレッジ・シンガーズが「亜麻色の髪の乙女」のタイトルでリメイクしてヒット。2002年には島谷ひとみによるカヴァー盤がオリコン4位まで上るヒットとなったことで、ヴィレッジ・シンガーズ盤にも再びスポットが当てられ、NHK『思い出のメロディー』で久々にメンバー5人が集結して同曲を演奏。これを機に再結成ヴィレッジ・シンガーズがライヴ活動を始め、翌2003年には「亜麻色の髪の乙女」と「バラ色の雲」を再レコーディングしたCDシングルもリリースしている。


「ひとりの悲しみ」(ズー・ニー・ヴー)→「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)、「手編みの靴下」(ザ・ピーナッツ)→「逢いたくて逢いたくて」(園まり)のように、最初は不発に終わっても、その後タイトルを変えて別のアーティストがリメイクして大ヒットというパターンの作品。筆者はそれを「出世魚楽曲」と名付けているのだが、「亜麻色の髪の乙女」もまた見事な出世ぶりを見せた楽曲の典型例なのである。

GOLDEN☆BEST/ヴィレッジ・シンガーズ 亜麻色の髪の乙女 ヴィレッジ・シンガーズ

ゴールデン☆ベスト 青山ミチ

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